227話 墜ちる幻光
「すまない。早く“死魂獄霊城”で休んでもらいたいが、扉が閉められているからな」
「ということは、誰かが開けるのを待つのですか?」
「あぁ、そのことか。それはな───」
私の質問に答えようとしたリル様を、隣に立っているモーズグズが遮った。
「リル様の代理として、この地を守護しているヤツが門を開けに来るのだ」
「奴とは誰なのか?」という疑問が生まれた瞬間。
鉄の檻のような見た目をした門の向こう側から、漆黒の狼が歩いてきた。
『遅くなり、申し訳ございません』
リル様が狼に戻ったときの大きさよりも2回り小さいくらいの黒狼。
口が開閉するたびに僅かな炎が吹き出ている。
「その声、ウリディンムなのですか!?」
『誰だ───って、ガーゴイルじゃないか! ハハハ、久しぶりだねぇ!』
「えぇ、ところでウリディンムはここで何を?」
私の質問を受けて、ウリディンムはチラリとリル様を視線を交わす。
そしてリル様が無言で頷いたことを確認して、喋ってもいいと判断したようで。
『あたしはリル様が“神帝城塞”に住まわれてから、番犬に代わり“死魂獄霊城”の守護をしている』
「そうだったのですか。あ、すいません……早く門を開けてもらっていいですか?」
『あ……そうだった!』とでも言うように口を開けた。
瞬間、重厚感のある檻のような柵のような門がギィッと音をたててゆっくりと開く。
門から“死魂獄霊城”までは一本道となっていて、道の両端には賽の目状に街が広がっている。
『ではリル様、どうぞ』
ウリディンムは通路の端へと移動し、周囲は滑走路のように障害物となり得るものが存在していなかった。
先程まではなかった妙な気配を感じて振り向くと、そこには黒狼の姿となったリル様がいた。
『私の背に乗れ、ガーゴイル』
「えっ!? いやいやいや、流石にそんなことは!」
そんな私を横目にモーズグズはリル様の背に乗る。
私をに向かって『早く乗れ』と視線で訴えかけてきている。
けれど私は畏怖の念から、リル様の背に乗るという決断ができない。
『自分で飛んでいけるほどの集中力も、スキルを多用したことによる疲労も溜まっているのだろう?』
このまま言い合いをしても埒が明かない、と理解してしまった。
だから私は、リル様に渋々従うことにした。
「わかりました」
リル様の背に乗り、モーズグズに抱きつく。
自身が振り落されないように、そしてモーズグズが振り落されないように。
『乗ったな。では、征くぞ』
刹那───音が消え去り、景色が過ぎ去っていく。
周囲の景色が動いていると錯覚してしまうほどに揺れを感じない。
そう思った瞬間、僅かな衝撃とともに身体がふわっと宙に浮く。
「ここに来たとき、不思議そうに周囲の景色を見ていただろう。“死魂獄霊城”を包み込んでいる光景の正体を知りたかったのではないか?』
リル様は“死魂獄霊城”の屋根に四肢を乗せ、私達を背に乗せたまま呟いた。
「……!」
満月が姿を見せる夜空に眺めながら、リル様は続ける。
『“獄神山”という名の死火山。その地下に存在する“冥獄巌窟”内部に“死魂獄霊城”は建造された。それにより外敵から受ける被害は皆無となった───が、“冥獄界”の現状を確認することが困難となった。故に“冥獄界”の現状を“冥獄巌窟”内部に投影することにした。それこそが、この地に空が存在している理由だ』
「ですが、あの薄紫色の雲は実態が……」
『あれは一種の檻だ。フラーウスに忠誠を誓う悪霊が外敵を逃がすまいとして構築した“獄霊魂雲”。そこから、悪霊が外敵だと認識した存在を貫く“瘴槍”と呼ばれる雨が降り注ぐ』
ここに来てからの疑問が全て解消された瞬間。
先程通ってきた道からウリディンムが慌てながら走ってくる。
『リル様! アーテル様から、“界隔虹煌神壁”の封鎖を行なったとの連絡が───』
刹那、ウリディンムの発言は神秘的な輝きによって遮られる。
純白の輝きを放つ光の柱が“死魂獄霊城”の周囲に建てられている街に墜ちた。
冥界を照らす純白の幻光───
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