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【五章連載】ディオス・ウトピア 〜神々の王は平穏を望む〜  作者: 神威皇華
第五章 神威城塞編
224/240

224話 渡界権


 『貴様が愛している存在に対して、接吻(キス)だけで終わるとは。珍しいこともあるものだな』


 「あらぁ? 乙女の秘密を知るなんて……これは『秘密の共有』が必要ですね?」


 私は揶揄いながら笑う。

 すると、薄暗い室内の床から青年が出てきた。


 「さては、俺がいることを知っていたな? だからこそ、俺が問い掛けることすらも予測して、罠に嵌めたわけか……」


 「貴方が、本当のロキ様でないことは知っています。それでも、正体を明かしてくださらさないのですか?」


 私が問い掛けると、「はっ」と鼻で笑われた。

 

 「俺は、何があっても“神滅禍竜(アジ・ダハーカ)”が顕現するまでは正体を明かすつもりはない。だからテオスには、絶対に話すな。現状の整理もつかず、真に心を許せる存在がいない今、その『事実』を突きつけてしまえば───心が完全に壊れてしまう」


 「そうですね。ただでさえ、私達が『何者』であるかに気づいていないと言うのに……」


 私が呟くと、ロキは「あ」と声を漏らす。

 ロキの反応に疑問を抱き、私は首を傾げる。

 すると、問い掛ける前にロキが口を開いた。


 「そのことだが……気づいていないのではないぞ。忘れて、いや───記憶を消去されているんだ。この世界に来たときに、な」 


 「───は?」


 ロキがしれっと爆弾を落としてきた。

 衝撃の事実という爆弾を。


 「まっ、待ってください! どういうことですか!? 詳しく! 詳しく説明してください!!」


 私は慌てながらも、事実の詳細を尋ねた。

 けれど、ロキは訊く耳を持たずにくるっと体を回して、私に背を向けた。

 

 「お前の驚く顔が見れたことだ。そろそろ帰るとしよう」


 ひらひらと手を振って歩いていく。

 一歩、また一歩と───私とロキの距離が離れていく。

 そしてロキが(ドア)の前まで辿り着いた瞬間。


 「お願いします! テオス様を愛しているんです!! テオス様の負担にならないように戦闘経験を積ませてあげたいのです!! その為ならなんでもしますから、場所の提供を……どうかっ!」


 私は感情のままに、声を発した。

 願望を、後先考えずに吐き出した。

 するとロキはピタリと動きを止めて振り返った。

 そして、私の考えを見透かすかのように片目で凝視してきて。

 

 「まったく……俺以外のヤツに『なんでもする』なんて言うな。それが了承できるのであれば、場所の提案とその場所の近くまで転送するくらいはしてやろう」


 「わかりました!」


 私はロキが提案してきた条件を、1つ返事で承諾した。


 「そうか。ならば、束縛衝動とも言うことのできる不安を減らす努力をしような? 害から『守護』するのと、害が及ばぬように外部からの関係を断つ『監禁』をすることは、全く違うことだからな」


 「……そう、ですね。わかりました」


 その瞬間ロキの口角が上がり、悪寒が全身を駆け巡った。

 ロキの笑みは、不吉の象徴とも言えるような気配を帯びていて。


 「“神権”行使───渡界権。指定人数:5 転送世界:“冥獄界(ヘルヘイム)”」


 刹那、計5人の存在が別世界に転移した。

 1人は攻撃・防御・回復・支援・妨害が可能な万能役(オールラウンダー)、1人は魔法による単体・全体攻撃を得意とする攻撃役(アタッカー)、1人は料理による回復と炉火による攻撃を行なえる攻撃役(サブアタッカー)、1人は敵の精神に干渉し支配できる妨害役(デバッファー)

 そして、最後の1人は───“神”を騙る傍観者(ウォッチャー)


 「“神権”行使───萬掌権。発現事象:“界淵層罅(エリヴァガル)”」


 誰もいなくなった部屋に、ロキの言葉だけが響いていた。

 その影響により“冥獄界(ヘルヘイム)”には『次元の歪み』と呼称される“界淵層罅(エリヴァガル)”が顕現した。



ロキの力によって世界を渡る───

最後まで読んで頂き有難う御座います!


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