221話 戦闘機構
テオスが創造した城の見張り塔にて───
艷やかな長いプラチナブロンドの髪と碧眼をもつ少女が、そこに立っている。
「魔力解放───<幻想構築>。構築対象:偵察機ケルビム」
瞬間、彼女の掌に2対4本の促進機構がついている機械が現れた。
正確に言うのであれば───生み出された。
その機械は瞬く間に彼女の掌から離れ、30cm上昇したあたりで静止した。
「───【解掌倣製】」
その声が森中に響くと、少女の周囲に計36機の偵察機が宙に静止していた。
そして、少女は上空で静止し続ける偵察機に指示を出す。
「司令塔1機を除く全機を以って、周囲の地形把握を開始せよ」
その命令を認識したのか、一斉に35機の偵察機は周囲に散らばる。
“世界樹”を含めた“錯綜神森”の地形情報を収取しに、35機の偵察機は散ったのである。
『……勤勉だな、ガーゴイル』
私は仕事に一区切りがついたであろう彼女に向かって、声を掛ける。
すると、彼女は慌てふためきながら声を上げた。
「アーテル様!! い、いいいっ、いつから私の影の中に!?」
気配が感じられないことで、影の中に潜んでいると勘違いしたのだろう。
まぁ、それもそうだよな。
今の俺は、使用者に魔力隠匿・気配遮断・不可視・不可知という特殊状態を常時付加するスキルを使用しているからな。
ガーゴイルの問いに対する答えを教える為に、俺は再現したスキルを解いた。
「俺は“神威闘技場”で行なわれている訓練に参加できないからな。フラーウスが所有しているスキル【隠蔽変装】を再現していたんだ。驚かせて悪かったな、ガーゴイル」
俺がガーゴイルに対して誤った瞬間、大声で仮名を呼ばれた。
「あ……あのっ、アーテル様!! “背理神”アマルティア=ムネモシュネによって改竄されていた記憶が戻りましたので、“禁戒墜幽獄”内にある“深淵”へ行くことを許可してもらえませんでしょうかっ!!!」
言葉の節々から『無理なお願いだというのはわかっています』という意思が滲み出ている。
それと同時に『どうしても行きたい』という強い思いが、その瞳にはあることを感じ取った。
というより、瞳に刻まれているI/O電源のマークが白く光り輝いている。
本当にガーゴイルは解りやすい。
戦闘兵器でありながら、感情という機械にとって致命的な欠陥を埋め込まれた戦闘機構───それこそが“保護神”ガーゴイル=タロースという“神人”。
だが、感情という欠陥を得たことで、向上心や羨望などという『人間味』を獲得したことによりガーゴイルは強くなった。
「お前が持つ装備の中で、最も特異な武装───“神創機装”の捜索に行きたいのだろう? ならば行くがいい。シルには俺から事情を説明しておこう」
俺はそう言って、ガーゴイルを見送った。
戦闘機構に搭載されている転移装置を使用して転移する際に、ガーゴイルが「ありがとうございます」と小声で言って微笑んだ。
その微笑みは───ただ単に感情がある戦闘機構が見せる表情とは、到底思えなかった。
感情を持つ機械の微笑み───
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