220話 心身の治療
俺は自室の天井を見ながら考える。
覚えている範囲で過去から現在までの行動を、脳内で映像化し再生する。
アトラス港で買い物をしようとして店舗を探したことは覚えてる。
そこでフォンスさんという商人と出会い、なぜか攻撃されたことも覚えてる。
浜辺に戻り、そこでBBQをして味付けもしていない食材全てが美味しかったことも覚えている。
なのに───なんで、俺は自室の寝床に居るのかが解らない。
『おはようございます〜 テオス様〜』
混乱している脳に、声が届いた。
扉は開いていないということは───リリスの声か。
「……おはよう、リリス」
『やはり調子がよろしくないのでは〜? もう暫くお休みしても、いいと思いますが〜』
「いや、そこは問題ないんだが。俺は、なんで此処にいるんだ?」
その瞬間、枕の感触が温もりのある絹のように変わったことに驚いた。
すると、リリスが俺の顔を覗き込んでいて───俺とリリスの視線が交錯した。
「【催睡溺惑】」
リリスの声が聞こえた途端、猛烈な睡魔が俺を襲う。
俺の視界に映る景色が狭まり、暗くなってくる。
意識が朦朧とする中、頭を撫でられていることは分かった。
頭を撫でられることに関して恥ずかしいとは思いつつも、抵抗する気が起きなかった。
「安心して眠ってください」
リリスに耳元で優しく囁かれた。
その直後に俺の意識は暗転し、深い眠りに落ちていった。
脳内でリリスの甘い声が、反響し続けていた。
* * *
枕から人形と成ったリリス。
スキルを使う為であれば、そもそも人形に成る必要はない。
だが───リリスは今も尚テオスの頭を撫で、膝枕をし続けていた。
薄暗い寝室にカーテンの隙間から差し込む光を眺めながら。
「テオス様……」
眠りにつく主を心配するように、リリスは呟く。
それが、不敬であると理解していても。
「…………」
撫でる手を止めて、リリスはテオスの顔を覗き込んだ。
疲れなどないと言わんばかりに、心地よさそうに眠るテオス。
その顔を眺めながら再び、リリスはテオスの頭を撫で続ける。
頭を撫でるという行為に───何の効果もないと解っていても。
今のリリスには、こうすることしかできないのだから。
テオスが記憶喪失になった原因。
それは、慣れない戦闘を数日間に渡って行なっていることが関係している。
戦闘において様々な筋肉を使うことによる肉体的疲労、戦場で戦うのが見知った相手という精神的疲労。
それにより1回の戦闘で感じてしまう疲労は、心労となって───擬似的な解離性健忘を引き起こした。
「……おやすみなさい。テオス様」
リリスはテオスの心を癒やし、保護り続ける。
我慢し続ける心が、壊れてしまわぬように───。
愛しく想うが故に───
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