215話 漆黒の太陽
悪霊達が一通り精神攻撃を行ない、現世から冥界に帰った瞬間。
バシュムから気味の悪い気配が漂ってきた。
その巨軀から溢れ出る靄は、視認できるほどに濃密な殺気。
「……吾ガ語ルハ、偽リノ創世神話。4度創造サレ4度破滅シタ偉大ナル太陽ノ軌跡デアル」
刹那、バシュムを中心として巨大な洋紅色の魔法陣が地面に顕れた。
巨大な魔法陣の前後左右の四箇所に、白色の魔法陣が描かれた。
これは、魔法……!?
だが俺は、このような魔法は知らない。
敵が持つ未知の魔法か……よし、発動し終わるまで傍観しておくとしよう。
フラーウスが動いていないからな、安心していいだろう。
「第1ノ太陽、ソレハ“煙を吐く鏡”ガ創造シタ〈土の太陽〉───『涅耀煙界塞乖異影襲』」
バシュムの右側にある白い魔法陣が、焦茶色に染まった。
その魔法陣の中心に、闇泥が球体と成ったものがカチリと嵌まった。
「第2ノ太陽、ソレハ“羽毛ある蛇”ガ創造シタ〈風の太陽〉───『万潰崩斬暴嵐頽滅壊』」
バシュムの前方にある白い魔法陣が、緑青色に染まった。
その魔法陣の中心に、暴風が球体と成ったものがカチリと嵌まった。
「第3ノ太陽、ソレハ“大地に座るもの”ガ創造シタ〈雨の太陽〉───『流墜赫燦烈焔燗燼滅』」
バシュムの左側にある白い魔法陣が、朱色に染まった。
その魔法陣の中心に、火炎が球体と成ったものがカチリと嵌まった。
「第4ノ太陽、ソレハ“翡翠の淑女”ガ創造シタ〈水の太陽〉───『激浪水瀑淘濫崩澎湃』」
バシュムの後方にある白い魔法陣が、瑠璃色に染まった。
その魔法陣の中心に、海水が球体と成ったものがカチリと嵌まった。
「コレ等ノ太陽ガ辿ッタ結末ヲ繰リ返サヌヨウ、“光り輝く者”ガ新タナル太陽を創造シタ。ソレコソガ、〈動の太陽〉───【奉血顕悉滅灼陽】」
バシュムがスキルを円滑に発動する為に用いられる口上を言い終わった。
刹那、洋紅色・焦茶色・緑青色・朱色・瑠璃色の魔法陣が、互いに共鳴するように輝き出した。
「……なにも、起こらないだと? それとも、発動までに時間が掛かるのか?」
俺がそう言うと、バシュムの巨躯には深紅の紋章が浮かび上がり、その紋章からは深紅の塊が出てきた。
それは───生命が血液循環を行う為に必要な器官である、心臓。
瞬間、ドクンドクンと脈打つ心臓は、内側から切り裂かれるように爆散し、青色の血は5つの魔法陣に飛び散った。
「吾ガ心血ヲ、捧ゲ奉ル。コノ儀ヲ以ッテ、黒陽ノ顕現ヲ……」
刹那、焦茶色・緑青色・朱色・瑠璃色の魔法陣が宙に浮かび、バシュムの頭上で重なり合い1つ魔法陣へと昇華した。
「人身御供とは愚かな! この行為がどれほどの生命を奪ったか忘れたかッ……!?」
「………………」
長い沈黙、それに加えて微動だにしないバシュム。
様々な色が混じり合った魔法陣は、バシュムが永眠る下に描かれている洋紅色の魔法陣と同等の大きさに広がり降下した。
……せめて、バシュムの気配が変わった理由を解明しなくては。
スキルが発動してしてしまった以上、止める術はない。
それに使用者が死んでも尚、維持できているのだ……使用者を移動しても問題ないだろう。
「───『転移』」
バシュムの巨体を俺の後方に転移させた。
その瞬間、魔法陣が何事もなかったかのように消え去った。
───は?
バシュムが存在しなくなったことで、魔法陣が消失した?
いや、魔法陣という触媒が必要ではなくなったという可能性がある。
フラーウスが空を見上げたことで、俺も連られて空を見上げた。
そこには───漆黒の禍々しい太陽が雲を掻き分け、その存在を主張していた。
途端、影が“砂地域”を覆い尽くした。
創造されし漆黒の太陽───
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