211話 爆発性×劇毒
砂漠地帯の地下に存在している“神岩洞窟”にて───
漆黒のロングコートに身を包んだ青年が、その地に舞い降りる。
その青年はテオスが創造した城から、転移してきたのだ。
「やはり、か……“崩滅壊聖蛇”バシュム。カエルラの封印が解けたのなら、再びパスが通る。そのパスを利用して、失ってしまった魔力や体力を回復を計ったが……そのパスはあまりにも細かったようだな」
コイツは、生きている。
封印された状態で生死の境を彷徨っていた頃とは違う。
意思疎通ができなくとも、コイツは言葉というのを理解している。
ただ、声を発する器官がないだけの話だ。
「先ずは───起きろ。それが、俺と戦う為の最低限度の誠意というものだ」
途端、地面が揺れる。
その揺れは、バシュムが起こしているもの。
自らの体を起こす為に、鎖を千切ろうとしているのか。
これほどの巨体で抵抗するのだ、ものの数分で砕け散るだろう。
ならば、その後に取る行動を予測しておくべきだな。
バシュムを縛っていた鎖が千切れ爆ぜると同時に、卑しくニヤリと笑う。
その笑みに不気味さを覚え警戒していると、バシュムが動いた。
ドゴゴゴゴゴという轟音を立てながら、一直線に地上を目指して上に登り出す。
「───『転移』」
* * *
砂漠地帯の上空にて───
青黒い闇が空間を支配しており、遥か彼方から存在を主張するように黄金の塵が瞬いてる。
陰る気配のない小望月は、太陽の輝きとまでは到達ないが、その輝きに勝るとも劣らない確かな光で世界を慈しむように優しく包んでいる。
『スベテ、クライツクシテヤルゥウウウ!!』
そんな幻想的な景色を唐突に破壊した存在がいた。
洞窟の岩盤を粉砕し、砂を掻き分け、現れたのは───かつて世界を半壊させた怪物だ。
「これは、封印による影響か……?」
俺はバシュムの漆黒に染まった鱗を見て呟いた。
バシュムの鱗は、鮮やかで艶のある虹色だった記憶が鮮明に残っていたからだ。
瞬間、バシュムの巨大な口がゆっくりと俺に迫る。
蛇が獲物に毒を打ち込む為の牙───牙の横に溝がないことから管牙だと推測できる───が完全に軌道修正が出来ない位置まで近づいた。
「その貪食さが、軀を滅ぼすと知るがよい」
俺はスキルで構築した液球を残して、バシュムの頭上に瞬間移動した。
視界が切り替わると同時に、バシュムから声にならない叫びが聞こえ、その口元から爆炎が生じていた。
『ッ───!?』
バシュムは驚きを隠せていない。
勿論、理由は明白で───俺を捕食した瞬間に口膣が爆発したからだ。
その貪食さによって軀を焼いたバシュムに、俺は静かに真実を告げた。
「お前が喰ったソレは、“害毒神”ギルタブリル=セルケトのスキル【死病融毒】で作成した劇毒───爆発性物質である硫酸と過酸化水素を含んだ出血毒だ」
本音を言えば、危険物質であるシアン化ナトリウムも入れたかったが、時間が足りなかったな。
このスキルを使いこなせるように頑張らなければ……身を滅ぼす要因になってしまう。
劇毒が爆発するという恐怖───
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