208話 不安定な存在達
“世界樹”内にある“精霊界”にて───
「見送りありがとう、エクセレトス」
私に向かってお礼をするのは“天棲聖霊”に名を連ねる御方。
水の聖霊にして、水の管理者───“水神”セラピア=ラフム様。
「貴方様に感謝されることなど、私は何もしておりません。剰え、敵の侵入を許してしまい───」
「エクセレトス、どうしてそう卑屈になるの? 確かに、敵の侵入を許してしまったのは貴方のミスよ。でも───それが、自身の価値を下げていい理由にはならないわ。謙虚は度を超えると周囲を不快にさせるものよ。もっとよく相手の言葉の真意を、聞き取る能力をつけなさい」
セラ様は、私の為にここまで感情を露わにしてくださった。
常に冷静沈着で、滅多に感情を表に出すことのない───セラ様が。
「わかりました。セラ様のお言葉、肝に銘じます」
私はそう言って、頭を下げる。
そして顔を上げると、セラ様は少しだけ微笑んでいたような気がして。
「貴方のその真面目さ、嫌いじゃないわ。その真面目さが───敵に利用されたり、騙されたりしないことを祈っているわ。機会があればまた会いましょう、エクセレトス」
そう言って、壮大な滝を想起させる長い青髪を揺らしながら外界へと向かって歩いていく。
後ろ姿は自信に満ち溢れていて───凛々しく、格好よく、美しかった。
私もこの人のような存在になりたいと、心の奥底で思ったのだった。
* * *
テオスの城を隠すように囲む“錯綜神森”にて───
1人の女性が蹲って、脳内で自責を繰り返している。
彼女は、様々な存在と関わっていく毎に反省し、後悔している。
「はぁぁぁぁぁ…………」
口から溢れる、長く深い溜息。
原因は、自身の変えようのない二面性によるもの。
強気で気品に満ちた表と、弱気で悲観的な裏。
私の二面性には、こんなにも明確な違いがある。
にも関わらず───私の中ではどっちが本当の私なのかがわからない。
「あら───セラちゃん。こんな所で落ち込んで、どうしたの?」
その声に反応して、私は顔を上げた。
すると、私の視界に映ったのは───鷹の翼をゆっくり動かしているのに、滞空飛行できている人物。
風の管理者であり、風の精霊達を従える存在───“風神”クーペ=エンリル。
主人格が姉だからなのか、現在は姉の人格が出てきている。
「なんで、ここに……?」
「ネロ様から聞いたのよ。“精霊界”にある水源の浄化をしに行っている、ってね! 貴方があそこに行くんだったら、会話をしなくてはいけない状況が必然的に生まれることになる。そうなったら、セラちゃん───貴方は、後悔しかしなくなるでしょ?」
私に問いに、『当然のこと』と言わんばかりの言葉が返ってきた。
その言葉を聞いて、心が少し暖かくなる。
こんな私を受け入れてくれて、心配してくれる人がいる。
私はエクセレトスにとって、今のクーペのようになれていたのかしら?
わからない、けれど───そうなっていたら、嬉しいわね。
「セラちゃん。辛いことを言うようだけど、本当の自分を探すのはやめなさい」
「な、なんで、そのことを知って……」
「そんなの、理解るに決まってるでしょ。私も───貴方と同じように悩んだ経験があるんだから」
クーペは少しだけ照れくさそうにそっぽを向いて、そう言った。
いつも私を導いてくれる太陽ような人の照れている顔が、とても可愛らしく見えて。
それと同時に、私の知らないクーペの過去が知れて嬉しかった。
「なんで笑っているの?」
少しだけ首を傾げて、クーペはそう言った。
そして、とても真面目な顔になって───
「でも、覚えておいて。自分に寄り添い、自分を認める……それができるのは、自分自身だけなの。だから、セラピア───貴方は貴方なのよ、他の誰でもないわ。私は貴方にはなれないし、貴方も私にはなれない。貴方という存在は、この世界に1人しかいないの」
そう言って、花が咲くようにクーペは笑った。
この瞬間のクーペを私が独り占めできている気がして、多幸感に包まれている感覚があった。
それと同時に、この感情は一体なんなのだろうと疑問にも思った。
経験談ほど、説得力に長けているものは無く───
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