206話 神鶏グリンカムビ
「リル、起きてるよな?」
「はいっ!」と大声で返事して、ゆっくりと立ち上がる。
木屑や石の破片などがリルの艶のある黒髪に付着している。
俺はそれが気になったので、頭髪を優しく───犬の毛を撫でるようにして、ゴミを払う。
「ありがとうなのですっ……! テオス様!!」
リルはそう言って、はにかむように笑う。
リルの笑顔は、俺の心を冷静にさせてくれる。
冷静というよりも、安堵するの方が適切だろうか?
まぁ、どちらにせよ……リルに嫌がられていないので良しとしよう。
「質問なんだが、フォンスさんはあんなにも様子が変だったんだ?」
「えっとですね、それは───」
『その件については、私の方からお伝えしましょう』
俺とリルの会話に割って入ってきた存在───金の鶏冠が特徴的な鶏。
ゆっくりと俺達の方へ近づいてくる。
大きさと色さえおかしくなければ、普通の鶏と勘違いしてしまうだろうが……。
その鶏は人語を喋り、体格や体毛が“普通”ではない。
異質さは、時にトラブルに巻き込まれる確率を上げることがある。
「待て、そもそも何故お前が此処にいる? 各世界に時刻を伝える神鶏───“真煌神鶏”」
リルの声が、誰かを疑っている際のものへと変化した。
他者を疑い過ぎるのは良くないとは思うが……信じ過ぎるのも良くないからな。
俺はどちらかと言うと、信じ過ぎてしまうタイプなのでここは黙っておくのが良いだろう。
『“時空神”フギン=クロノス様から命じられた為、問題にならない。それに、私が各世界に時刻を伝達するのは───次元を超越し得る脅威が、敵対したときだけだ』
その鶏は、淡々と続ける。
『おっと、これは失礼したしました。私、“樹華神”ネロ=シルワァヌス様に仕える光の聖霊───レクスと申します』
鶏がそう言うと、一瞬で【人化】のスキルを使ったのか人の形を成した。
金色の短髪に深紅の瞳、純白の紳士服に身を包む少年が目の前に立っていた。
そして、俺に対して恭しくお辞儀する。
その様子を見ながら、リルが嫌味のように言った。
「【人化】のスキルは持っている癖に……人間の前には姿を見せない所為で、神異名を持っていない───」
レクスと名乗った鶏が、微笑みながらリルのこめかみを掴む。
口角は上がっているものの目が笑っていないので、怒っているようにしか見えない。
「私を馬鹿にしたいのであれば、幾らでもどうぞ。多幸感で頭がバカになっていた狼ちゃん?」
レクスはそう言ってリルの頭を鷲掴みにして、微笑んだ。
シルがそうだが、優しそうな外見の人って怒ったら怖いよな。
いや、もしかすると───怒ったら怖い人が優しそうな外見なのだろうか?
う〜ん……どっちだろうな?
「このっ……! は、なせっ……!!」
リルはレクスの手を離そうとして、腕を引っ掻く。
だがレクスは微動だにせず力を入れたままだ。
「人間に知られていなくとも、強大な存在がいることを知っておいた方がいい。信仰量だけが、“神人”の全てではないのだから」
レクスはそう言って、ニマニマと笑う。
完全に遊ばれているリルの姿を見ながら、思った。
少し力を込め過ぎではないか───と。
金の鶏冠を持つ鶏は、グリンカムビ───!!
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