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【五章連載】ディオス・ウトピア 〜神々の王は平穏を望む〜  作者: 神威皇華
第四章 海淵神殿編
205/240

205話 暁光と刻印


 急に雰囲気が変わったフォンスさん。

 

 「せっかく幻影でアトラス港を覆い、海渦巨鮫(カリュブディス)を操ったというのに……! なんと言う偶然!! いや───必然だったのかッ!!」


 フォンスさんの花緑色(エメラルドグリーン)を想起させる瞳からは、先程までの生気は感じられない。

 この世の全てに絶望した廃人のような瞳が、生きるという行為に希望を求められなくなった、と訴えかけてきているようで。


 『【暁天灯燈(ヴィドフニル)】』


 少年の声が、聞こえた。

 途端、俺とフォンスさんの間に淡く光る1つの球体が現れ、瞬く間に輝いた。

 ───その光を形容するとすれば、夜明けを告げる陽光の如き閃光というのがしっくりくるだろう。

 暁光が、視界を覆い尽くす。 

 俺はその光に耐えかねて、目を瞑る。



 *   *   *



 俺はゆっくりと、瞼を開く。

 すると、そこには───


 「金の、鶏冠?」


 フォンスさんにゆっくりと近づいていく鶏。

 雪のように白い羽毛に反して、王冠のような輝きを見せる金色の鶏冠と肉髯。


 白と金以外の色が見当たらない鶏───とても特徴的なである。

 それに、一般的なサイズの鶏より格段に大きい。

 一般的な鶏を1と仮定(おく)とするなら、目前にいる鶏はだいたい3くらいだ。


 『”水神(ステュクス)“セラピア=ラフムの分身体───個体識別名:ヴィヴィアン。何か、申し開きはあるか?』


 「あるとでも、思っているのか? 私は、私の意思で幻影を生み出し、海渦巨鮫(カリュブディス)を暴走させた。だが───幻影を生み出した理由は、アトラス港(ここ)を訪れる観光客の為だ。彼の罪人───”背理神(イブ)“アマルティア=ムネモシュネが、住民を全員攫ったことが問題なのだからな」


 フォンスさんが鶏に向かって話している隙に、リルに光属性魔法を使用する。


 あくまで応急手当として行う魔法の行使なので、外傷しか癒さないが……リルの呼吸も安定しているようだし、命の危機というわけではない筈だ。

 あの程度の衝撃で体を痛めているのであれば、ルフスの鉄拳を喰らって原型を留めていることの方が不思議だ。

 それにリルのことだから、相手の油断を誘って反撃をしようとしてる可能性がある。


 『そうか、ならば───そう伝えておこう。”冥獄神(ハデス)“フラーウス=ヘルにな』


 「ま、待てっ! 何故、“奈落(タルタロス)”ではなく“冥獄界(ヘルヘイム)”などに───ッ!?」


 認めないと言わんばかりにフォンスさんが声を荒げると、それを制止させる為か───彼の頭上に、金色の瞳の象徴(マーク)が浮いていた。


 あれは、なんだ……?

 金色だから神々しさを感じるが、それと同時に不気味さを感じる。

 

 『その、刻印は……! もう知覚したのか、フラーウス!!』


 黄金の瞳を見て、その鶏は驚愕や感嘆ような感情を混ぜ込んだ雰囲気を醸し出しながら喋る。

 そして、冷静になったのか少しだけ重い声でその鶏は告げる。


 『私は、[夜明ケノ時刻(うた)ヲ紡グ神鶏(もの)]。この称号()の所以たるスキルを味わうがいい───【界基時掌(フィアラル)】』


 その鶏は、優雅に足を伸ばして立ち、雪の様に白い(はね)を大きく広げた。

 すると時計の紋章とも呼べるようなものが、鶏の背後に現れた。


 スキルを発動したのか?

 時間に関係するスキルということは、フギンの配下なのだろうか?

 前に『配下が居る』って言っていたしな。

 

 「暁光と時のスキルだと!? まっ、まさか、貴様は……! 私の本体、セラピアと同格の“聖霊(そんざい)”である───レクスか!!」


 『あぁ、そうだ。理解したのなら───黙れ』


 刹那、フォンスさんの動きが止まる。

 フォンスさんの頭上にずっと浮いていた瞳が輝いた。

 より一層強く光り輝いて───動かなくなったフォンスさんと共に消えた。


 なにが起きたんだ……?

 あの鶏が、フォンスさんだけを対象とした時間停止を使用したことは予想できる。

 だが、あの瞳のマークに関しては分からない。

 知識は前よりも身についてきてはいるが、まだまだ知らないことの方が圧倒的に多い。

 今回の瞳のマークがいい例だ。

 ……まぁ、いろんなことを教えてくれたシルには、本当に感謝しかない。



改めてシルに感謝を───

最後まで読んで頂き有難う御座います!


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― 新着の感想 ―
[良い点] カラスの配下がニワトリというのもまた味がありますね。 <知識は前よりも身についてきてはいるが、まだまだ知らないことの方が圧倒的に多い。 新しいことを知ったらすぐにまた新しいことが出て…
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