204話 我慢の限界
翌日───
昇り出した太陽の光が海面に当たり、神秘的な景色を生み出している。
その付近に存在しているアトラス港には以前ほどの活気はない。
いや、活気がないと言えるレベルではなく────無人になっていた。
一体全体、何がどうなっているんだ?
以前来た時……記憶が朧気ではあるものの、流石にここまで静かじゃなかったぞ。
「リル、前に来た時……ちゃんと人いたよな?」
「はいっ、ちゃんといたのです!」
リルは俺の問いにこくりと頷いて、笑った。
風を生じさせるほどに、リルのもふもふの尻尾は喜んでいるようだ。
「じゃあ、早めに買って帰るか。店内に行けば、人に会えるかもしれないしな」
「はいなのですっ!」
リルは、俺の後ろついて来る───正確には、俺の右斜め後ろだが。
* * *
俺とリルの2人は、調味料が売っているであろう店を探し出し、扉を開けて店内へと入った。
外から見た限りだと木造だと思っていたが、店内は石造のようだ。
基礎的なところは石造で、外観だけを木造にしている可能性が高いな。
それが本当なら、何とも不思議な造りをしているものだ。
「───おや、こんな時にお客様とは珍しい」
店内の奥から男性の声が聞こえた。
コツコツと足音が聞こえ、扉が音もなく開いた。
そこには、青色の短髪に花緑青の瞳を持つ男性。
白衣のような服と同化していると勘違いしてしまいそうになる色白の肌。
「その気配! お前、何者だ!?」
リルが慌てたように俺の前に出てきた。
すると、その男は微笑んで。
「……どうかいたしましたか、お客様?」
その男性は、首を傾げて聞いてくる。
途端、納得したように大声を上げて頷いた。
「あぁ、そう言えば名乗っていませんでしたね! 私の名前はフォンス。アトラス商会の建設者───フォンス・アトラスと申します」
フォンスと名乗ったその男性は、そう言って微笑んだ。
優しくていい人だとは思うけど……そう思うのは、あくまで俺の偏見だ。
いや、経験則と言った方がいいのだろう。
少し怪しさも感じるが……それもまた、偏見でしかない訳で。
「すみません、調味料ってありますか?」
フォンスさんを睨んでいるリルを横目に、俺はフォンスさんに聞いた。
「調味料ですか? やはり、超常の存在と謂うものは人智を超えているものなのか」
フォンスさんの声が少し低くなり、空気が重くなった。
少し長い前髪から見えたフォンスさんの瞳が、据わっているように感じる。
それに店内が薄暗い所為か、その瞳が少しだけ光っているようにも見えて。
「やっぱり! 貴様は───っ!?」
リルの声が聞こえると同時に、ドゴォンと鈍い音が聞こえて振り返った。
そこには、石造の壁に全身を打ち付け血を流すリルが居て。
「───ぇ」
「だい、じょ……から」
リルの口元が動くが、離れている所為で声が聞こえない。
近くに行って聞き返したくても、足が動かない。
「【人化】を使っているとは言え、これ程までに弱くなっているとは。[冥獄の番犬]と呼ばれた存在とは思えないな……」
俺の背後から、そんな声が聞こえた。
他者を慈しむ心が込もった声で、冷酷なことを言うフォンスさん。
その表情には、先程の優しい雰囲気はない。
以前、セーレが会ったフォンスとはかけ離れていて───
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