203話 終焉を告げる焔獄竜
私は直ぐにスキルを使った。
一瞬で本を縮小し、ページを捲る。
書かれている内容を瞬く間に頭に叩き込んだ。
「【事象掌握】───ッ!?」
そして、理解してしまった。
これから起こる回避不可能な何かを。
先程の技は、これから使用するスキルに適した環境を造っていただけなのだ、と───。
「ようやく気づいたようだな。だが、とうに手遅れだ! 我が究極の奥義、その瞳に焼きつけるがよい───【燦焦灼罪毀焔獄竜】!!!!」
先程の叫んだ名はスキルでしょうね。
……確証はありませんが。
ジークはゆっくりと剣を地面に突き刺した瞬間、剣に付加されていた炎が地面に吸い取られていった。
途端、地割れが起こる。
割けた隙間から、赤黒く濁り熱を発する熔岩が溢れ出る。
「な、ぜ───!?」
この光景は、まさに“炎獄界”そのもの。
このスキルは地形を変質させるものなのでしょうね。
だとすれば、この闘技場はものの数分で溶岩に呑まれてしまう。
この場合における私の最善の行動は───えっ?
私が翼を広げて飛ぼうとした瞬間。
その存在が、姿を現した。
「終末を告げ、終焉を齎すは───血濡れた紅き七頭の邪竜」
ジークの背後に、熔岩と炎が混合した七つの頭を持つ竜が、存在していた。
圧倒的な威圧感を放ち、この場の空気を一瞬にして支配した存在。
そ、そんな……!
この姿は───この、禍々しさは!!
「───欲望のままに喰らい、全てを焼き尽くせ」
冷酷な言葉が聞こえ、竜が襲い掛かってくるのがわかる。
回避する為に、飛ばなければいけない。
でも、身体が微動だにしない。
恐怖と謂う感情に、脳が支配されてしまっている。
熔岩の熱がゆったりと、でも着実に距離を詰めてくる。
七つの頭部を持つ竜が私を取り囲むように近づいてきた。
その時だった、第三者からの干渉が入ったのは。
「【時空間操作】!」
神性を持っている存在には、時間停止は効かない。
効かない、とは───常人と同じように、肉体と意識が停止しないということ。
でも、気を惹くことはできる。
「いい加減にして、ジーク! このまま争い続けても勝負が決しない。それくらいわかるでしょ?」
「黙っていろ、フギン。我は、アリシアと戦っているのだ。貴様は───」
刹那、フギンがジークの背後に立っていた。
異空間から取り出した“宙歪神鎌”を彼女の首に近づけて、言った。
「大人しく従え、と言っている。それとも───牢獄に送られたい?」
不服と言わんばかりに、頬を膨らませながらもジークはフギンの言葉に従った。
ゆっくり屈み、大剣を地面にそっと落とした。
「終焉の邪竜───貴様は“炎獄界”に戻れ。時空ごと隔離されたくはないだろう?」
『う、む……我もそうなることは本意ではない。時の管理者よ、お主の慈悲に感謝しよう』
“星天神”モルガナ=アステリアの予言で語られた世界に終焉を齎し得る竜。
そんな存在が、フギンに頭を下げるなんて。
それに、喋れるなんて思ってもみなかった───
『智慧の管理者よ、先程はすまなかった。“炎獄界”に訪れることがあれば、我に連絡するとよい。我に出来ることがあれば、最大限の協力を惜しまないと神に誓おう』
「……“契約神”オルコス=ヴァールにも同じことが言えるのですか?」
熔岩で形成された終焉の邪竜は無言で頷いた。
途端、氷が水になるが如く───竜の形状が崩壊し、熔岩となり地面に吸収された。
熔岩という存在となって世界を渡った、というのが正解かもしれませんね。
“境界神”ピウス=へパイストスの“神壁”にこのような抜け道があったとは。
それとも、わざと抜け道を作ったのでしょうか?
焔獄竜の深謝───
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