202話 煌めく劫炎
テオスの城に存在している、闘技場とも呼べる場所にて───
「我をこのような場所に連れて来て……お主の目的はなんだ? “叡智神”」
漆黒の全身鎧に身を包む存在が、眼前にいる私に向かって問い掛ける。
「あのままでは暴走していたでしょう? ですから、その衝動を発散させてあげようと思ったんですよ。貴方の大好きな───戦闘で」
「ふん、後悔しても知らぬぞ! 来い───“竜血魔剣”!!」
そう言って、ジークが異空間から闇を凝縮したと見紛う程に黒い大剣を取り出した。
ここで私がジークを足止めすることで、世界が半壊する事態は免れる。
あとは、誰かが異変に気づいてくれると良いのですが……大丈夫でしょう。
あの蛇の生みの親であるカエルラがどうにかしてくれる筈ですから。
最悪の場合はフラーウスかイリスにでも頼むとましょうか。
ジークが大剣を力強く握り、構えた。
……挑発ですか、面白い。
全てに対応できるあのスキルを使用しましょうか。
「【全智神書】」
私は世界の事象を知りたい時によく読む本を顕現させて、付与されている魔法『形状変化』を使用した。
その力を以って、本の大きさを約4倍にまで巨大化させて───表紙に触れ、持った。
「隙ありです!」
私は本来の使用用途とは異なる使い方───武器として、使用した。
神の力を帯びた背表紙が、ジークの鎧に直撃し、亀裂が入る音が聞こえた。
途端、超重力で押し潰されるようにジークは地面に伏した。
「なッ……! 鈍器だとッ……!?」
衝撃によって、顔を隠し全身を守っていた漆黒の鎧が砕け散り、血を流している。
ジークはフラつきながらもゆっくりと立つ。
赤い長髪が揺らめく炎を、蒼い瞳は高音の炎を連想させる。
雪を想像してしまうほどの透き通った肌に、整った顔立ち。
赤と黒を基調とした王族の貴賓のあるドレスのような服に身を包む少女がいた。
「……主しか知らない我の姿を見るとは、万死に値するっ! 魔力解放───劫炎岩漿!!」
ジークが声を発すると同時に、ジークは大剣を闘技場の地面に叩きつける。
怪力により破壊された大地は破片と成り宙に浮き、熱風によって吹き飛ばされている。
途端、血のように赤黒い灼熱の液体───魔力によって造られた熔岩が、砕かれた大地の隙間から勢いよく溢れ出す。
私は巨大化させた本を盾の代用として、そこに設置した。
熱風が吹き荒れ、熔岩が周囲を焦がす。
が、“神”の力の前では無力。
さて……ここからどう説得して、冷静にさせましょうか。
「クソクソクソ、クソがァアアア!!」
竜の咆哮とも勘違いされそうな怒号が、熱風と熔岩と共に私を襲う。
ジークの感情と同調していると言わんばかりに、熱風の熱さと早さが増す。
熔岩の流れが早まり、活火山にいると錯覚してしまいそうになる程に周囲の景色が変わっていく。
これでは、正真正銘の怪物ではないですか。
炎獄界ムスペルヘイムを治める王、アドラヌス。
その種族は魔人であり、人類からは炎獄神スルトとして認知されている存在。
本当に、ここが砂漠地帯じゃなくてよかった。
「もう良い。我が視界に映る全てを───燃やし尽くせ!!」
ジークの瞳から光が消えると同時に、大剣を振り上げた。
途端、その大剣が赤く発光し始めた。
いやっ!
これは……発光してるんじゃない!
炎を帯びている……!!
だとしたら、この技はッ───!!
「《 破天煌滅覇・ 劫炎焼界燼》」
私の考えを裏打ちするように、ジークがその名を告げた。
その名は、世界を焼尽させる程の威力を誇る炎を“竜血魔剣”に付加する技。
炎獄の王が操る炎は規格外───!!
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