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【五章連載】ディオス・ウトピア 〜神々の王は平穏を望む〜  作者: 神威皇華
第四章 海淵神殿編
201/240

201話 アレテー=ムネモシュネ


 「ふざ、けるな……っ! 我が、この程度で───ッ!!」


 必死に抵抗しているが、指1本動かせていない。

 妙だな……いくらシルでも、他者に干渉することのできるスキルは所持していなかった筈だが?

 一体どうなって───


 「……あぁ、そういうことか」


 私は小さく呟いた。

 少し驚いた所為で、声が漏れてしまった。

 私は忘れてしまっていたのだ。

 シルの後ろに時間と空間を管理し、支配する天使───フギンがいたことを。


 「ソロモン、少しだけジークをお借りしても?」


 「あぁ、それは構わないが……傷つけたりでもしてみろ、私は刹那の内に貴様の命を刈り取りに往くぞ」


 私がそう言うと、シルは少しだけ口角を上げて「えぇ、わかりました」と言ってきた。

 その声が脳に届いた直後、シルとフギンとジークの姿が掻き消えた。


 ……転移したか。

 まったく、嵐のようだ。

 さて、私も情報を整理しなくては。


 そう考え、私はゆっくりと椅子に腰かける。

 そして、意識を研ぎ澄ます。

 魔力の性質(オーラ)が暴走しないようにしっかりと抑制(ふた)をして、魔力の知覚範囲を狭める。

 ついでに目で感知できる範囲を消しておく。

 世界というものを感知出来なくなった体で、私は思考を巡らせる───。


 私の妻はあの日亡くなった。

 それは事実だったが、それ以外の全てが偽りであった。

 名前すらも、本当は覚えていなかったのだ。

 違和感すらも感じさせぬ程の記憶の改竄。

 流石は、私の妻───“記憶神(イブ)”アレテー=ムネモシュネ。

 原罪を犯したことで“正義神(ディケ)”アーサー=フォルセティに罰せられた存在。

 その罰は、“精霊界(エデン)”からの追放であったが……その判決を下した瞬間、黄金林檎(ボヌム・マールム)を食べるようアレテーを唆した存在が、突如として現れたのだ。

 [(せい)ナル魂ヲ喰ラウ蛇]の称号を持つ存在───“濁神闇蛇王(アポピス)”。

 アイツさえいなければ、(アレテー)は───ッ!?


 刹那、体の一部が欠損する程の衝撃(ダメージ)を受けた。

 その影響で、私の意識は世界と再び結び付けられる。

 視界に景色が映り、空気の振動や匂いなどの五感も戻ってきた。

 途端、数秒前まで座っていた椅子が粉々に砕け散っている光景が目に入った。

 それと同時に、投げ飛ばされた自身の体を動かして受け身をとり───椅子を壊し、私に蹴りをいれた人物に言葉を投げ掛ける。


 「……何故、私の思考の邪魔をした? “運命神(モイラ)”ロキ=フォルトゥーナ……ッ!!」


 私の瞳の映るのは、運命を管理する存在。

 ラプラスを連れて帰ってきたカエルラからは、【影移動】を使用したと聞いていたが……。

 まさか、このタイミングでやってくるとは。


 「お前の妻を殺したのは俺だが───お前の妻を蘇生したのも俺だ。貴様の幸せなど、俺にとってはどうでもいいが……アイツ等が悲しむ顔を二度も見たいと思う趣味はないのでな」


 ロキは、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。

 その瞬間……私の眼前に光り輝く球体が現れた。


 なんだ!?

 この眩い球体は───


 目を瞑りたくなるほどの光が、(うそ)だったとでも言うように消えた。

 そして、金髪の少女の姿が私の目に映った。

 あまりにもその顔つきが衝撃的で、私は膝から崩れ落ちた。

 ロキを問い正そうとしても声が出ない。

 視界には亡き妻の幼き頃の顔をした、金髪翠眼の少女の笑みだけが映っている。

 

 「せいぜい、感謝しながら生を謳歌するといい。“死”の概念を管理する───原初の人間(デミゴッド)よ」


 ロキはそう吐き捨てるが、その言葉には静かに燃え上がる怒りが感じ取れて。

 だがロキは、その感情を表に出すことなく自然に影に沈んでいく。

 本来、影の管理者(ニュクス)が許可した存在(もの)しか通れない影の“門”を。


 

ロキは何故、影を移動できるのか───!?

最後まで読んで頂き有難う御座います!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ロキ、やっていることがゲスの極みィ!!! 人の生命を愚弄しおって!!! 蘇生するならまだしもそれを失った本人の前に持ってくるのはいかがかと思いますねぇ!!!(褒め言葉)
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