2話 邂逅相遇
骸骨は背骨を貫かれたことで、崩壊する。
地面に落下した衝撃で、骸骨は木っ端微塵になる。
残された骨片は、瞬く間に塵となって跡形もなく消失した。
俺は目の前で生じた現象に驚き、声を上げた。
「うわぁっ!」
木の根が地面に戻っていくのを見届けた後のことだった。
強烈な頭痛と眩暈が収まっていることに遅れて気づいたのは。
そのお陰で、考え込んでも体調に異常をきたすことはない。
「この状況、絶対におかしい。だが、この森に居続けることのほうが危険だ」
いくら俺の知っている世界ではないにしろ、樹木がひとりでに動いているとは考えにくい。
だったら、なんらかの意思が介入していると考えておくべきだろうな。
それに、歩いている途中でまた頭痛や眩暈でも引き起こそうものなら大変なことになる。
「また木の根が出てきてくれる保証もないし、もっと慎重に行動しなければ」
たとえ出てきたとしても、木の根が俺を攻撃してこないとも限らない。
できる限り、骸骨とは接触しないように森の外へ出よう。
それと骸骨が持っていた剣は護身用として拾っておくとしよう。
俺は剣を拾い上げた後、周囲を警戒しながら歩き始める。
延々と歩き続けて疲れてきた頃、鮮明な光が森の隙間から差し込んできた。
俺は「やっと外に出れた」と確信して、その光へ一直線に走った。
「───えっ」
視界が開けた先には、花園と白亜の城があった。
だが、そこは森の外ではなく森の中心だった。
城の周りを、海のように新緑が染め上げている。
それ以上に俺の腰ほどまである多彩な花々に目を奪われる。
「……道はあるのか」
城に住んでいる人がいるからなのだろうか。
森と城を繋ぐように、花園が左右で分断されていて道ができている。
獣道のように踏まれた痕跡などはなく、雑草すら生えていない。
綺麗に管理された花園に、俺は何気なく足を踏み入れた。
『───ッ!!』
上空から、ボウッという音が聞こえた瞬間。
反射的に体が動き、気がつくと後退していた。
それ以上に驚いたのが、上空から炎塊が落ちてきた。
花園を分断する道に衝突した瞬間、爆発した。
その衝撃で地面は抉られ、黒煙が天に昇る。
「な……なんなんだ!?」
そして、地面には黒衣を着た骸骨が佇んでいた。
眼窩に紺碧の光を宿す骸骨が、じっと俺だけを見つめる。
ただそれだけで俺の体は震え始め、止まらなくなる。
その時、先ほど出現した半透明の板が、俺の視界に映った。
─────────
名称:───
技巧:53
種族:呪怨骸霊
職業:魔道師
魔力:───
特性:屍骸騎将
戦技:───
魔術:基礎階梯魔術(炎・風・雷)
特異階梯魔術(炎・風・雷)
極致階梯魔術(炎・風・雷)
耐性:破壊耐性
神聖耐性
称号:───
─────────
言葉通りに受け取ると、相手のレベルは53ということか。
それに対して、俺は10前後あればいいものだろう。
はっきり言ってあまりにも格が違いすぎる。
そんな存在と対峙すれば、待っているのは死だけだ。
『───ッ!』
発声できない骸骨が、口を動かす。
その瞬間、骸骨の周囲を囲うように3つの円陣が現れた。
それぞれが淡い蒼色の光を放った直後、そこから骸骨が飛び出してきた。
骸骨と言っても、白骨化した馬にまたがる骸骨なのだが。
「よし、逃げよう!」
3騎の護衛が騎槍を鎧を装備したのを確認して、俺は逃走の判断を下した。
漆黒の襤褸とも言えるものを着た骸骨へ向かって全速力で走り出す。
俺が目指すは、護衛の騎槍による突きすらも耐えるであろう白亜の城壁。
そのためには骸骨たちを越えなければならない。
城の周りに咲く花を踏みつけるわけにはいかないからだ。
たとえ不本意だとしても、誰かの努力を平然と壊せるはずもない。
だから、俺は───この骸骨たちを飛び越える!
『───ッ!』
『───!!』
『───!?』
護衛の反応は三者三様だが、主を守るために槍を構える。
俺は瞬時に地面を蹴って槍を握りしめ、そこから旋回して馬の頭を足場とする。
振り落とそうとする馬から離脱し、護衛と主を一気に飛び越える。
足場が不安定だったこともあって体勢が崩れたが、無事に着地することに成功した。
命がかかっていれば、人間は限界を超えて空中で一回転もできるのか。
「飛び越えられるかは賭けだったが、なんとかなったな」
安堵しつつも、俺は深呼吸して再び走り始める。
背後からあの馬が駆けてくる音が僅かに聞こえている。
だが、本当に注意すべきなのは黒衣の骸骨の方だ。
「そういうことっ、してくるよな!」
『───ッッ!?』
物体が落下する際に生じる微かな音を聞き取り、前方に転がり込む。
後方に視線を移すと、無数の閃光と轟音が撒き散らされ、地面が抉れた。
転がり込んでいなかったら、感電死していたかもしれないな。
いや、今はそんなことを考えている暇はない。
「生きるために足掻かなければ、死んでしまう!!」
俺は声を荒げながら、城門を飛び越えて城内へと侵入した。
生きるために、最善を尽くす───
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