197話 運命神の選択
薄暗い洞窟に、旋律が響き渡る。
その曲はある“神人”によって奏でられているもの。
だが、その曲が作られた理由を知っていれば、今の俺を嘲笑っているように感じて。
「───おい。その曲が持っている“意味”を理解して弾いているんだろうな、イリス?」
俺がその人物に対して問い掛けると、すぐに返事が返ってきて。
「うん、知ってる。理解した上で、この曲を弾いている。今の貴方には……この曲がお似合い」
その声が聞こえると同時に現れたのは、紫紺の瞳を持つ少女。
その少女は、紫の短い髪を右側でまとめ上げている。
この髪型は……ワンサイドアップか?
いや、ワンサイドヘアと言うんだったか?
「……そうか。よくもこのタイミングで、この第一楽章を聴かせてくれたものだ」
「この曲───『月光』を聴いても尚、正式に私達の側につかないの? そんなに、天使族が信用できない?」
「───違う。お前達のことは信用も、信頼もしている。それをしていないのは、俺の心身だ。この神体は、オーディンにとって都合の良い傀儡でしかない。だからこそ、お前達が叛逆することを知ったら……俺が止めなければいけなくなる。例え、その結果が変わらないものであるのだとしても……僅かでも、生きていて欲しいんだ」
……それに、分かっているんだ。
いつまでも正体を隠し通せないことは。
今はまだバレていないかもしれないが、これからはオーディンにもバレるんだ。
だったら、この気持ちを隠して偽っていてはいけないことも、ちゃんと理解している。
「……そっか。じゃあ、1つだけ質問───なんで、カエルラの反転した精神を犠牲にしてまで、アマルティアを滅ぼしたの?」
イリスが、首を傾げて訊いてくる。
なんだ、気になっていたのはそんなことなのか。
だったら回答も、楽だな。
「嫉妬は───羨望と憎悪の2種類に分けられる。嫉妬と謂う一括りの存在よりも、羨望という純粋な状態の方が良いに決まっているだろう」
「それは、とても自己中心的な考え……」
俺を拒絶するような、諭しているような口調。
だが、その程度の言葉の強さでは俺とオーディンの間で結ばれた“契約”を破棄することなど出来る筈もない。
だが───俺も、決めないといけない。
いつまでも運命と謂う強大な存在に縛られたままなのか、反抗して足掻くのかどうかを。
「あぁ、その通りだ。だが……それ以外に、カエルラとアマルティアの2人を救う方法が存在しなかったのだから、仕方ないだろう!!」
「なら、諦めればよかった。カエルラかアマルティアの、どちらかを」
何故、そんな風に言うことが出来る?
1つの命を諦めて、自身が救いたいほうの命を救う?
だれが、決めた───守りたいものは、救いたいものは、選ばなければいけないなどと。
ふざけるなよ、俺はあの日誓ったんだ。
守りたいものは何があっても絶対に守り抜くと、だからこそ俺は俺であれるのだ。
「───何故、諦める必要がある? 救える可能性がある命なら、救うのが“神”と謂う存在だろう!?」
「可能性という希望に縋って、それが叶わないと理解してしまった時、精神により大きなダメージが入る。その事を、ちゃんと理解して言ってるの?」
「あぁ、理解している! だからこそ、俺はオーディンに逆らえなくなっても尚、お前達と協力してテオスが呼ばれる筈の年月を早めて───」
「……わかったから、黙って」
イリスは、俺という存在を拒絶するかのように、睨んできた。
そう、その時だった───完全にアレテーが復活したのは。
記憶神の復活───
最後まで読んで頂き有難う御座います!
「面白い」 「次の話が気になる」と思って頂けましたら、下の☆☆☆☆☆から応援宜しくお願いします!
感想やいいね、ブクマ登録などして頂けると嬉しいです!




