195話 滅殺した意図
「そろそろ出ようかしら、クリール?」
「はい、何でしょうか? 母様」
クリールは私の真横に姿を現した。
私の近くには居るだろうとは思っていたけれど、こんなに直ぐ出てくるとは思ってもみなかったわ。
それに、私が眠っている間に、【人化】のスキルも獲得していたなんて。
「ラプラスは暫く眠らせておきましょう。でも、丁寧に運んでね?」
「はい、わかりました」
クリールは快く了承して、通常はスカートの内部に身を潜めているソレでラプラスを掴んだ。
私はそのことに少し驚いて───
「それで、ラプラスを締め殺したりはしないわよね?」
「はい、安心してください。この触手は私の意思でしか動かないので大丈夫です」
クリールは自信満々に言葉を返す。
大丈夫、って言い切って良いのかしら?
……自分の体の一部である機関を意識的に動かせないことの方が問題だから、杞憂だったわね。
「そう、なら良いわ。じゃあ、行きましょうか」
クリールが無言で頷いて、私について来た。
そして“海淵神殿”から出ると───
ルフスも、ウィリデも、ヴェルデも、ジョーカーも、倒れ臥していた。
私は急いで駆け寄り、全員の体調を確認した。
アマルティアが消滅してロキもいなくなったというのに、何で倒れているの?
まさか、他に敵がいたとでも言うのかしら。
でもルフスを倒せる程の強者なんて、滅多にいない筈なのに。
それに、怠け癖はあるけれど状態異常耐性は異常なほど高い筈のウィリデも倒れている。
一体……何が起こっていると言うの?
「母様、アマルティアが滅んだ影響かと思われます。あの女は本来、正されるべきの存在だった。滅んでは、いえ───滅ぼされては、いけなかったのです」
「善性か悪性かは二の次で、“記憶”そのものを司っていたのが問題だったということかしら?」
クリールは首肯して、続けた。
「“神帝”様であれば“神権”を使用してアレテーを再誕させることは容易かと思われますが、覚醒されていないご様子でしたので懇願するのは止めておいた方が宜しいかと」
そうね、クリールの言う通りなのだけれど……私個人としては納得していない。
それどころか不満しかない。
罪人とは言え、その“罪”は意図したものではなくあの蛇王に唆されてしまったから起きたこと。
アレテー自身には何の罪もない。
それに、あの時───ロキは口封じをしたようにも見えた。
「クリール。少し話を変えるのだけど、バシュムはどうしているのかしら?」
クリールは口を開けたまま声を発さず、俯いた。
何かを言おうとしたけれど、それを言って良いのか躊躇している。
バティムに何かあったのね。
「クリール、バシュムに何があったの?」
クリールはその言葉に驚いたのか、ビクリと肩を震わせた。
それでも返事はなく、私から目を逸らして俯いている。
「わかったわ。この話は終わりにして、先ずは全員を“戦艦”内に移動させましょう」
クリールは無言で頷き、残りの7本の触手を器用に使って倒れている皆を移動させた。
* * *
ロキが身を潜めた影の空間にて───
アマルティアという存在が消滅した。
その影響で、アマルティアのスキルによって作られた分身体【記憶分体】が消滅し、【記憶改竄】によって隠されていた“真実”が明かされる。
未熟な父親は耐え切れるか、見ものだな。
実の子供───優秀な息子と不変の娘の2人が、アマルティアが情報を集める為だけに利用していた【記憶分体】だったと知った時、アイツはどんな表情をするのだろうか?
「これで、あの兵器について思い出した機械人形が動くだろう。……だが、少し気になる事がある。ティアマトが復活したのなら、あの地に封印されている聖蛇も当然目覚める筈だ」
影の空間からその地に繋がっているであろう影に潜んだ。
そろそろアイツに粛清されても仕方ないところまで来てしまっている。
だからこそ、俺は全力で足掻くと決めた。
今更ではあるものの、テオスが“神”に至れるのであれば問題はなにもない。
「ふっ……こんな暗闇で何を考えているんだか。だが、あの邪竜を相手に死者を1人も出さずに乗り切った時……俺が知らない未来が待っている」
誰も存在しない影の空間で俺はそう呟いて、影を介して外界へ出た。
彼の存在が封印されている場所───そこは、“砂漠帝塔”の地下に広がっている洞窟。
暗躍せしロキ───
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