189話 微かな光
さて……と、100人近くのアマルティアの分身体の精神を乗っ取るのは、少々骨が折れますね。
ですが、そのお陰でアマルティアの精神状態の異常さが伺えた。
心と記憶は結びつき、記憶とスキルは連鎖する───か。
流石はアーテル様、この状況すらも考えて何度も「忘れるな」と仰っていたのか。
私はアーテル様の思慮深さに感嘆しつつ、“神殿”へ向かって歩を進める。
巨大かつ豪華な扉を押し開けると、カエルラ様が座す筈の玉座に、カエルラ様の姿をしたアマルティアが座していた。
「あら、来たのね。随分と苦戦していたようじゃない。違っているかしら、“心理神”?」
「私が本気になれば、お前の精神を潰す事など造作もないことを知っていての言葉遣いか?」
「そうなの? なら、何故……今すぐそれをしないのかしら?」
クスクスと揶揄うように笑う。
コイツは頭が回るから、己の限界というものを理解している。
自分には何が出来て、何が出来ないのか───それを理解してしまっているからこそ、限界以上の事はしない。
自身の出来る範囲でしか物事を進めない性格だからこそ、アマルティアは私がこの選択をする事を読む事が出来ない。
「そうですね。それでは───『お話』しましょうか。嘘で塗り固められた性格、周りの者達の偏見、魔なる存在によって穢された精神、そう謂う全てを引き剥がした純粋な“記憶神”アレテー=ムネモシュネと」
アマルティアにそう告げ、私はスキルを使用する。
他者の精神世界に侵入することが出来る───【精神干渉】を。
私がこれから、お前の土俵に入ってやる。
* * *
アマルティアの精神世界にて───
辺りは漆黒一色、かと思われたが違っていた。
私の周囲だけは白くなっていて、それ以外は黒に染まっている。
幾ら私の周囲が黒いとは言っても、10mくらいは白さが残っている。
「あら、2人目のお客さんね」
背後からその声が耳に届いて、驚愕しながらも振り返る。
そこには、純白の玉座に座るアレテー(現在のアマルティア)と氷の彫刻のような玉座に足を組んで座っているカエルラ様が居た。
「カエルラ、様……? 何故このような場所でゆっくりなさっているのでしょうか?」
私は思ったことを、そのまま言ってしまっていた。
ヤバい、殺されてしまう───と思ったものの、カエルラ様は落ち着いた表情で仰った。
「私の本体は無事なので、放置していても問題ない。なので、私は私なりに彼女の手伝いをしたいと思ったので、協力しているまでよ。でも……問題が発生しましたわ。かの蛇王、アポピスの呪いが強くなって来ているの」
アポピスの呪い。
それは、かつて精霊界に侵入して来た存在で、“記憶神”アレテーが、“背理神”アマルティアに存在が反転……いえ、変質してしまった原因。
精神世界がこれほどまでに闇に染まっているのはそれが原因か。
さて、この状況をどうすれば良いのだろうか?
カエルラ様は私に何を期待して、来るかどうかも分からない私を待っていたのだろうか?
アポピスの呪いは、アマルティアの精神を蝕んでいて───
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