188話 ソロモンの奥の手
「ネクロ! まだヤツの本体が判らぬのか!?」
ルフスの声が聞こえる。
その声には、苛立ちと焦りが含まれている。
だからと言って無視も出来ない。
言葉を投げ掛けられたからには、しっかりと返さないといけない訳で。
「あぁ。【罪禍天秤】を使用してはいるが、見当たらない。完全に“魂”の模倣をしているようだ」
気に入らないが、そこだけは褒めるべきだ。
だが、最も魂に関わる私を出し抜こうなど、傲慢の極み……こんな所で怒ってはならない。
今はこの場に居なくとも、2人の娘と1人の息子を育てているのだから、言動には気をつけなくてはならない。
ルフスは、私の言葉を訊いてチッと舌打ちをした。
そして、戦艦の周囲とそれ以外を隔てている炎の壁の火力と量を上げる。
ふむ、流石に無茶をし過ぎな気もするが……。
本人がちゃんと考え出した結果なのだから、私が文句を言う事でもない。
「ウィリデ、雨と紫電の許可を出す。さっさとやれ」
「了解っ!」
ルフスの言葉に素直に従い、ウィリデはスキルを使用する。
広範囲に影響を齎す権能の【豪雨】と雷を生み出す権能である【稲光】のランク3:紫電を。
瞬く間に大雨が降り注ぎ、轟音と共に雨の如く紫電が落ちる。
それ等が齎す結果は───アマルティアの感電死。
「ふむ……アマルティアの出所は“海淵神殿”か。何とも厄介なものじゃな。此処は深海……つまり、“太陽神”たる儂が、最も苦手とする場所じゃ」
遠回しに……戦力にはならないからカウントするな、と言っているのでしょう。
ですが、そこはやはり“太陽神”。
海にいようとも、その火力は落ちていない。
「そう言えば、ロキの姿が見えませんね……。何処かに逃亡を図りましたか? それとも、いつものように事が終わるまで隠れ潜んでいるのか……どちらにせよ、アマルティアの分身体をどうするかが第一の目標ですね」
「そうじゃな。アマルティアの殲滅には問題はないが、数が減らないのであれば、こちらの戦力を見せる愚行をしておる。じゃが、相手にはさぞ余裕があるようじゃ。その余裕、ネクロ! お主が何とかせよ!!」
私に対する絶対的な信頼と、自らの判断力における自信が混ざった声。
仕方ありません……任されたからには、やらなければならない。
幾らアマルティアであっても、“始源の魔法”の前には無力だろうし、カエルラについても調べられる。
「【神智記創世術式】───始源級・光属性魔法-『神瞳』」
視界に映る全ての情報が視覚化される。
“神殿”の材質や構造、この空間に空気がどのくらいあるのか、海面から何m下なのか、アマルティア達の“魂”の情報───だが、ロキの情報だけはなかった。
逃走したか……だが、そんなタイミングあったか?
断言しよう、そんな暇はなかった。
時間を止めたのなら強制的に時間を作る事は出来るだろうが、一瞬であの術式を直ぐに構築出来るほどロキの脳は高性能ではない筈だ。
「アマルティアの本体を発見しました。“神殿”の最奥に居座っているようです。最初からアマルティアは、分身体を使っていたのかも知れません」
「そうか、わかった。訊いていたなラプラス! 道は儂等が作る、行け!!」
「はっ!!」
ラプラスは炎の壁を飛び越えて、ゆっくりと歩く。
一歩進むごとに向かって来たアマルティアの動きが止まる。
動こうとはしているようだが、動けていない。
ほぅ……魔力とスキルを使って、精神に干渉しているようだな。
待てよ、最初からラプラスを動かしていれば被害も気にせずに済んだのではないだろうか?
ネクロの気づきは、もう遅く───
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