183話 狙撃
海底には、漆黒の戦艦が沈んでいた。
傷一つなく、転覆すらしていない完璧な状態で。
数分前───戦艦は、海に沈んだばかりであった。
戦艦は渦と謂う激流に呑まれ、その流れに身を任せていた。
その流れが落ち着いた途端、少しだけ浮遊感が全員を襲った。
理由は、カエルラの支配域である───“海淵神殿”アトランティスに近づいたから。
“海淵神殿”アトランティスの周りには空気がある。
その理由は、海水が存在することを拒絶する空間が存在しているからなのじゃが───最も、カルラが意図している事なのかは知らぬが。
───もう着くのか、自由落下はあっという間じゃったな。
戦艦を轟音と振動が襲う。
じゃが、この程度の揺れ……何ともないじゃろう。
人間からすれば地震と同じくらいじゃろうからな。
む、この気配はロキか?
儂がそう疑問に思っていると、アルヴィスが何らかの操作をした。
「テオス様とリル様以外の全員を、強制退出させる」
アルヴィスの声が聞こえると、転移時の独特な浮遊感を儂を襲った。
視界は白に染まり、徐々に青くなっていく。
そして視界の感覚が元に戻り、純白の柱が何本も並んでいる“神殿”があった。
「一体、何が……」
転移して早々、ジョーカーがそう呟く。
ふむ、この状況でよく言えたものじゃ。
この歪な気配は……危険じゃな、急がねば!!
「アルセーヌ! 敵は2人、アトランティスの内部に居る!! 攻撃を許可する、撃てッ!!」
儂は、アルセーヌに命じる。
「ハッ! 承知しました、ルフス様!!」
アルセーヌは直ぐに銃を顕現させ、対象の位置を完全に補足する。
そして、その声を合図として引き金を引く。
「【千射必撃】ッ───!!」
アルセーヌが小型の銃の引き金を引く。
高速で銃弾が射出され、2つに分離する。
分離した刹那、急速に加速し───神殿の壁をすり抜け、敵を穿つ。
それらの出来事は、静寂の中で起こった。
ヤツの攻撃は絶対に当たる。
一時的に、理すらも歪めるスキル───【撃墜之神】。
そのスキルを持つ故に、アルセーヌについた神異名は“狙撃神”。
* * *
さて、死んでいるでしょうか?
【千射必撃】を使用した以上、命中していない可能性は皆無ですが……内部に誰がいるかが分かっていません。
それに、生き残っている存在がいるのなら、それは完全に覚醒した“神人”───
気がつくと、コツンコツンと何者かの足音が聞こえた。
急いで思考を放棄し、瞳に景色を映す。
そこに居た人物は───漆黒の長い髪を持つ神人だった。
なッ……!
何故、此処にロキが!?
驚愕しつつも、急いで銃弾を創造し、相手を見据えて狙いを定める。
引き金に手を当て、そのまま引き金を───
「デルタ、今はダメ」
背後から声が聞こえた。
か、体が……動かない!?
まさか毒!?
いや、私は戦艦内で食事はしていない。
ならば、空気感染……いや、それも考えにくいな。
それに奇妙なのが、冷静に思考が出来ていること───だ?
一瞬で視界が闇に染まる。
感覚的には、誰かに視界を塞がれているようだ。
視界が闇に……まさかっ!
これは、ベータのスキル!?
ジャック・ベータのスキルとは!?
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