182話 世界の理
“能力”───それは、各々の力やその人物そのものを表す存在。
だが、“記憶”とスキルを奪うという愚行をした者が居る。
名を───“背理神”アマルティア=ムネモシュネと言う。
かつて、“人神”オルトゥス=デメテルと一緒に“精霊界”で暮らしていた者。
「ふふふ、あはははははははは!! これで……“海帝神”のスキルを手に入れた!! あとは、私を陥れた時の記憶を覗いて───」
アマルティアは絶句し、静寂が神殿を包み込む。
その理由は、自らが欲していた“記憶”が何処にも無かったから。
魔法によって改竄されていようとも、元“記憶神”である自分には分かるから大丈夫、と言った結果がこれだ。
あまりにも愚か……復讐する相手を間違え、部外者を殺すなど。
「───遊びは、終わった」
俺は、魔法とスキルを解除して姿を現す。
アマルティアは、調子に乗って痛い目を見た子供のような顔で、俺を見つめる。
「……ロキ、なんで……? てっきり、カエルラが私に“黄金林檎”を食べさせたと思っていた、のに…………」
それは───禁忌を犯して理に背いた“背理神”の、心からの本音だった。
さて、これからどうするか?
テオスの意識も直に目覚め、あの船も間も無く此処に落ちてくるだろう。
そして、テオス達の敵対者であるアマルティアは絶望の真只中。
う〜む……どうしたものか───ッ!?
俺が必死に思考している最中、念話が繋がった。
今、この瞬間、絶対に繋がってはならない人物と。
『《Change of destiny》』
今の言葉は、どういう───は?
気がつくと、俺はアマルティアの頭に手を翳し、スキルを使用していた。
それは、他者の選択権に干渉する【因果調律】を。
アマルティアは、少し俯くと人柄が変わったかのように笑顔になって───
「ふ……ふふふ、あはっ! あはははははははは!! 本当に面白いわね! この力さえあれば───私は、もう一度この世界を創り直せるッ!!!」
好奇心からくる笑みと、理に背くという狂気さを秘めた笑み。
その2つの顔が、今のアマルティアには存在していた。
アマルティアの高笑いが“海淵神殿”の最奥に響く。
だが、それを打ち消すかのように───トポンと音が響いた。
それと共に、ドゴォォォンとけたたましいが聞こえた。
この音……それに、このタイミング!
間違いなくスキーズブラズニルだな!!
今、このタイミングで会うのは得策ではない。
早々に、撤退するとしよう。
ロキは勘付き、またも影の中へと身を潜め、逃亡を図るのであった。
───そう、その筈だった。
“無音”アルセーヌ・デルタ───いや、“狙撃神”アルセーヌ=アルテミスの銃弾が、ロキとアマルティアを撃ち抜くまでは。
「クソッ……! “狙撃神”のヤツ、スキルを使いやがったな……!!」
狂気の笑いが支配する神殿に、ロキの呟きは掻き消された。
狙撃神の命中力は凄まじく───
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