181話 憎悪の化身
“激流海域” ───そこは、海の創造主が座す一帯。
激流などと呼ばれる理由は、人が辿り着けぬ域に到達しているからだ、と人類は認識している。
たが、本当の理由は───“異流渦隔門海域”が存在しているからである。
深海に存在するその神殿の真奥にて、巨大な水球の中で蹲って眠る者こそ[始海の女帝]たるカエルラ=ティアマト。
その姿を見て嗤う者は“背理神”アマルティア=ムネモシュネ、その本体。
「うふふ、ようやく準備が整った……! これで、私は───この女に成り代われる!!」
アマルティアは満面の笑みで、そう告げる。
だが、ここで予想外の出来事が起こる。
それは───“海覇神龍”の意識の覚醒。
その意識は、かつて嫉妬に狂ったカエルラの反転人格。
「え……? 何が、起こって───」
その瞬間、アマルティアは目を疑った。
大きな水球は破裂し、支配しようとしていたカエルラが目を覚ましたのだから。
その瞳は宝石のように澄んでいて、髪は水のように透き通る綺麗な青色。
そしてカエルラは、アマルティアを見て微笑み───スキルを使用した。
「【水造生物】」
カエルラの体の周りに複数の水球が浮かぶ。
それらは、水棲生物へと姿を変え───アマルティアに襲い掛かる。
鮫が、海蛇が、海月が、魚が、アマルティアの血肉を喰らう。
「いっ! いたい!! たっ、助け───ッ!!」
アマルティアの骨が、肉が、臓器が、喰われていく。
皮膚が破れ、肉が裂かれ、骨が砕かれ、血が流れ、痛みが脳を焼く───。
その中で、冷静な判断など出来るはずもなく。
その生物達は、母を貶めようとした事を理解しているかのように───無慈悲に喰らい尽くす。
「いっ、いや! これ以上は、本当にッ!! 死んで───ッ!!!」
そして、アマルティアはスキルを使うこともなく、死した。
1つだけ奇妙な点があるとすれば、少し笑っていたことくらいだ。
* * *
「さて、次はどうしようかしら? このまま暴れるのも良いけれど……面白くないわね。あ、そんな時はっ!」
カエルラは妙案を思いついたのか、何者かに【念話】を繋ぐ。
ずっと身を潜めていた存在は、その隙を見逃さずに死角からの攻撃を繰り出す。
その存在は金髪の美女で、数刻前に消えた筈のアマルティアだった。
「【記憶強奪】」
その技は、全ての“記憶“を自らのものとするスキル。
正確に言えば、対象の記憶の全てを消し去り、その肉体を崩壊させる事が出来る権能。
だが、その真の目的は───自らがその者に成り変われる力があるからだ。
その技は、対象に“接触”することによって発動する。
幸いにも発動条件は、カエルラが覚醒する前に済ませてあった。
それ故、カエルラの体は光に包まれる。
「えっ───?」
その光は一瞬で崩れ去り、光の粒子となって“海淵神殿”の真奥で、霧散した。
今ここに───生まれてはいけない存在が、生まれてしまった。
“背理神”アマルティア=ムネモシュネの分身体が、本体の“記憶”を引き継いだ。
そして、“海帝神”カエルラ=ティアマトの“海覇神龍”とも言われる”憎悪の権化“の人格を取り込んだ───歪な“神人”が、生誕した。
憎悪に塗れた、歪なデミゴッド───!!
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