176話 幻惑の匂い
「タンタロス、何をした?」
我がそう問うと、タンタロスは首を傾げ───
『ワシが、その理由を喋るとでも思うておるのか?』
いやらしく不気味な笑顔。
狂気を孕み、黒一色で染められた生気を感じぬ瞳。
瘴気さえも纏えるであろう人間を逸脱した薄紫色の身体。
そして、乱雑に伸びた灰色の髪。
それ等のどれを取っても───常人とは言い切れない。
寧ろ、真の狂人と言える。
『まぁ、よかろう』
タンタロスの声が聞こえた瞬間、視界が霞む。
いや、違う!!
霞んでいるわけではない、のか?
こ、これは……霧!?
『この技は【呪怨殺毒濃霧】。“神”すらも祟り殺せる───呪いの霧じゃ』
タンタロスはそう言いながら、前髪に触れ───かき上げる。
“神”の記憶に、微かにあったオールバックという髪型になっている。
ほぅ……本気を出す、と言う意思表示か?
いや、そうではない可能性も考えた上で、戦闘を続行するべきか?
……その策を考える時間が無駄だな。
よし、希望を与え、叩き落とすとしよう。
「良かろう。覚醒はしていなくとも“神”と謂われる存在であることは変わらない。その証拠を───教えてやろう」
我は、タンタロスが居るであろう場所に向かって声を発した。
この景色すらも、幻術である可能性を疑ったほうが良さそうだ。
しかし、次から次に……面倒なものだ。
いや、1番大変なのは───“運命神”の方か。
『お主、何者じゃ? 自分のことを他人事のように言いよって……それではまるで、自分が“神”ではないと言っているようなものじゃが……。どうなっておる? お主の精神構成は───』
よし、今が絶好の機会だ!
我は“呪いの霧”ごと消す為に、風属性魔法を使用する。
「敵の前で、隙を見せない方が良いぞ。痛い目に遭うからな───『神風斬刃』!!」
タンタロスが居る方向へ手を伸ばし、それを飛ばす。
刹那、暴風が吹き荒れ───霧が吹き飛び、姿がはっきりと顕になったタンタロスの胴体を分離させていた。
それの正体は、風の刃。
“神”の力を以て圧縮した“始源の嵐”に最も近い魔法。
『もう、倒した気でいるのか? 何とも浅はかとしか言いようがない。少々、楽観視し過ぎと言うものじゃぞ』
暴風に髪を揺さぶられながら、そこに悠々と立つのはタンタロス。
先程とは、雰囲気が違っている。
何かが、おかしい……?
ま、まさかッ───!!
タンタロスは、我がその答えに辿り着いたことに気がついたのか、ニヤリと不適な笑みを浮かべた。
そして、答え合わせとでも言うように言葉を紡いだ。
『【神堕幻惑蜜香】───このスキルは、ワシとお主が出逢った瞬間から発動させていたものじゃ。それにすら気づけんとは、“神”も落ちたものじゃな。あぁ、暫くは【呪怨殺毒濃霧】の神経毒の所為で動けないじゃろう。ワシに課された“任務”はもう済んだ故、失礼するとしよう。では、また何処かで合間見えるじゃろう、その時まで眠っていると良い。そのまま、永遠にな───』
あの感じ……気づいたというよりも、元から知っていたとしか思えないな。
今はこんな事を考えている場合ではない、早く“神”の精神世界に行かねば……!!
我は、動かぬ体に見切りをつけ、自身の並列存在たる───ルフス=プロメテウスに念話で連絡を入れた。
連絡の意図とは───!?
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