163話 海獣カリュブディス
「さぁ───出航するぞ!!」
ラムダがそう叫び、浮遊している椅子に飛び乗る。
そして、手慣れたように辺りの景色を確認しながら出航の準備を始める。
「目的地は何処です? ラムダ」
「渦塞氷塊だ!」
ラムダは、大声でそう告げる。
本当に……出航の準備をしながら返答ができているのだから、凄いとしか言いようがない。
「わかりました。では……私はアルセーヌの所へ行ってきます。運転は任せましたよ───ラムダ」
私はそう言って、扉へ向かって歩を進める。
突然、ラムダが「あぁ、任された! 団長!!」と言ったので、驚いて振り返ってしまった。
ラムダのその顔は、なんだか煽っているようで少しイラッとした。
私が直ぐに扉の前に立つと、扉が左右に動いた。
流石はアルブス様とモーズグズ様が造り出した戦艦。
やはり───素晴らしい。
これ程までに、未知の力が眠っているとは……!!
私は感嘆しつつも、アルセーヌの元へ向かって歩を進める。
機械仕掛けの廊下を歩き、階段を降りる。
確か……操縦室が3階。
探知・防衛室が2階。
個別の部屋がある1階。
様々な機構が眠る地下1階。
そして、アルセーヌの元へ着く。
正確には……アルセーヌがいる部屋に着く。
さて、この歯車に手を近づければ良いんでしたっけ。
私はそのギアに触れた。
その瞬間、ギアが青く光り出し、扉へと青い光が血管の様に……分岐しながら流れる。
それが───扉を覆い尽くしたのを視認すると、左右に扉が動いた。
「……おや、団長殿ではないですか」
そう言うのはアルセーヌ。
「準備は大丈夫ですか? デルタ」
「はい。それはもう万全に」
そう言うアルセーヌに私は釘を刺す。
「油断───いえ、慢心している時ほど……人間は騙されやすい」
「解っていますよ。それを利用し尽くして来た私が、痛い程そのことは知っている」
苦虫を噛み潰した様な顔で、アルセーヌはそう言った。
アルセーヌには釘を刺さなくても良かったようですね。
では、自室に戻るとしましょうか。
「私はそろそろ戻りますね。渦塞氷塊を破壊する際に、また来ます」
「わかりました」
そう言ってアルセーヌは私に向かって微笑んだ。
その瞬間、ビービーと鈍い音が部屋中に響く。
「!? こ、これは……まさかっ!」
「デルタ!? この音は……」
「団長、早く操縦室へ! 海渦巨鮫と思われる反応がレーダーに掛かりました! 対処方をラムダへ───」
アルセーヌの発言を遮る様に船が揺れた。
まずい……!
この船が揺れるという事は……相当な負荷が掛かった、と言う事。
それに先程、アルセーヌが言ったカリュブディスと言う単語。
それは───海獣の一体に過ぎない。
群れから離れた個体なら良いが、もしそうでなければ……
『グ……グゴォオオオオ!!!』
猛獣の叫び声が、私の脳内に響いた。
唐突の事で、一瞬足がふらついたが何とか耐える。
今のは……!!
まさかっ!
リーダー格のカリュブディスだとでも!?
私は驚愕しつつアルセーヌの部屋から出る。
そして、司令塔の階段を急いで駆け下りる。
急いで扉のロックを解除する。
すると、ガーと扉が左右に開く。
その瞬間、視界に映った光景は───
「……海渦巨鮫!!」
海から飛び出した鮫。
その鮫は大きく空中で旋回していた。
その姿は……!
まるで、宙を舞うセイレーン───!!
カリュブディスの出現───!?
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