162話 海淵の渦を塞ぐ氷塊
テオスの城、宝物殿にて───
巫女服を着た白髪の少女は笑う。
「ふっ、ふははははは!! まさか、このタイミングでスキーズブラズニルを起動させるとは……妾も驚きじゃ!」
金貨の山に座すその少女は高笑いする。
そして、その少女───アルブス様が私に問い掛ける。
「のう、お主も予想しなかったじゃろう? パンドラ」
私は、自らが入っている箱の蓋を内部から押し開け、外界へ出る。
「む? その瞳の色……また新しい絶望が生まれたのじゃな?」
やっぱり凄いや……アルブス様は。
些細な変化に直ぐ気づく。
その力は、機械神だからなのかな?
それとも……
「大丈夫か?」
アルブス様は私にそう問う。
「うん、大丈夫。そう言えば……スキーズブラズニルって最近作られたばかりけど、ちゃんと動くの?」
私はそう問い掛けた。
すると、アルブス様はドンと胸を叩いて自信満々に言った。
「大丈夫じゃ! あれは“雷神”モーズグズ=トールと妾───“機械神”アルブス=デウス・エクス・マキナが造った戦船なのじゃ! 万一の問題もなく、動くに決まっておる!!」
「そうなんだ。じゃあ、渦塞氷塊に突撃しても無傷?」
「う〜む……どうじゃろうな? あれは海淵と大地を区切る壁ゆえ、壊してはならぬ物じゃ。それに、それを壊せると言う事は……世界を破壊しうる力を持っている、と言う事になる。そして───渦塞氷塊は界隔虹煌神壁と同じ働きをしている……。それ故、境界神の許可がいるのじゃ」
今から境界神に許可を貰う、という方法もあるけれど……ダメだ。
あの御方は……今、教会の本部へ行かれている。
【念話】を使って連絡する事も可能だけど……失礼だ。
洗礼の儀の最中だったりしたら……キレられる。
「……と言う事は、傷はつくけど……被害は甚大にはならない?」
私の問いにアルブス様は頷く。
「うむ。じゃが……あの船には大砲が付いておる。あれは───モーズグズの魔力“巨縮”が付与されておる」
「大砲……? それって、強いの?」
アルブス様は「うむ」と言って頷き、扇子を取り出した。
そして、パタパタを仰ぎ始める。
「司令塔で指示を出す人物のレベルや精神力、魔力密度などによって……“砲撃”の威力が変動する仕様なのじゃ」
「おぉ〜! それ、面白そうだね!!」
「じゃろう?」
アルブス様はそう言って、ニヤリと笑った。
* * *
テオスの城、フィリアの部屋にて───
茶髪の少女が微笑んでいる。
「久しぶり。イズン」
私にそう言うのはネロ様。
私が管理する黄金林檎がある精霊界を守護する存在───それこそが、ネロ様。
黄金林檎───それは、善と悪という意味を持つ。
「いえいえ、ネロ様もお元気そうで何よりです」
ネロ様に感謝を告げる。
「ふふっ、ありがとう。それで……どうだった? ロキの力は……」
ネロ様は直ぐに本題に入ってきた。
私に与えられた任務───それは、精霊界に居る間のロキの監視。
“監視”に関しては、ムニン様の方が得意だと言ったのですが……聞き入れて貰えなかった。
ネロ様の事だから……何かしらの思惑があるとは思うのですが───って、何を考えているんです!
今はネロ様の問いに答えないと……!
「はい、テオス様程では無いかと。あそこまでの“圧”は感じませんでした」
「そうですか。あ、そういえば……弟と妹は大丈夫?」
ネロ様は少し残念そうな顔をする。
そして、私に質問を投げ掛け、首を傾げる。
「はい、大丈夫です。お陰様でいつも元気にしております」
「……そう。それなら良かった。じゃあ、私は帰るわね」
ネロ様は立ち上がって、扉の前まで歩いていく。
「はい。ご足労頂きありがとうございました」
私はネロ様に向かってお辞儀をする。
そして、顔を上げてネロ様を真っ直ぐ見つめる。
「気にしないで。貴方は───私の娘なんだから」
その声が聞こえた瞬間、私の頬にネロ様の柔らかい手が触れる。
ネロ様は───今にも泣きそうな顔をしていた。
ネロの真意は───!?
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