159話 怪盗と詐欺師
「では、テオスを此処に連れて来たんだ。もう、俺は帰るぞ」
「ま、待って……!」
転移しようとするロキ様をウィリデ様が声を絞り出して、呼び止める。
すると……ロキ様の動きがピタリと止まった。
「何だ、ユピテル……」
「声はロキ様そのもの。……でも、あの御方はウィー達を“真名”で呼んだりはしない。貴方は、ロキ様じゃない。違う?」
ウィリデ様の声に、ロキ様はほくそ笑む。
「そう思うなら、そうなのだろう」
「それは……肯定、ととっても良い?」
ウィリデ様は、ロキ様の返事にそう問い返す。
「あぁ、お前の判断に任せる。天空の覇王にして智謀の女王よ……」
ロキ様は、そう言って不敵に笑う。
そして、ウィリデ様「はぁあああ~」と大きな溜息を吐く。
「もういいや。どうせ、喋る気ないんでしょ~?」
「あぁ、執拗に追い回されようともな。だが───1つ、教えてやろう。アマルティアがカエルラを支配しようとしている」
「!!」
ロキの発言に驚き、全員の動きが止まる。
「ま、まさかッ! だが、それが本当なのだとしたら───……」
「少し黙っていろ、タナトス。俺はお前に殺されそうになった事を忘れはしない」
「……? 何を言っているのか、分かりません」
ネクロ様はそう言って、首を傾げる。
その姿を見てロキ様が舌打ちをする。
「まぁ、いい。情報は教えた。俺はもう帰る───精々、俺を楽しませてみせろ。原初の人間達よ……」
ロキ様がそう言うと……その体が、漆黒の液体に変貌する。
そして、それは重力に従って地面に落ちる───が、その液体は……ロキ様自身の影に吸い込まれていった。
あれは……【影移動】!?
ロキ様が使えるなんて……
「アイツ……私を無視し続けていたのです!!」
うがーと、大声で叫ぶのはリル様。
今からでも遅くない、とロキ様の後を追う為に匂いを嗅いでいる。
「リル、やめなさい。今から追いかけても、絶対に追いつけませんし……絶対に、勝てません」
ネクロ様は「勝てません」の部分を強調して発言した。
「何故なのです!? 私が、あの鎖を使って、アイツの能力を封印すれば……」
リル様の意見にネクロ様は冷酷な言葉を告げる。
「それでも勝てません。何故なら……あの指輪は、全ての“力”を抑制し隠蔽する装飾品。ロキの力は最低でも……見ることが出来るステータスの2倍以上はある、と考えておいた方が良いでしょう」
「お、お言葉ですがっ! その指輪は……テオス様が所持しているのでは───」
今まで、沈黙を貫いていたラプラスが声を上げる。
だが、その声はネクロ様の声によって掻き消される。
「えぇ、ですが……オルトゥスからこんな報告が来ています。『ロキは僕の魔力とスキルを使っても勝てなかった。それに、テオス様が所持している筈である……“斬理剣”レーヴァテインも所持していた』と───」
そんな……。
テオス様が所持する武器ですら所持している……。
その場合、ロキ様の能力は───武器や装飾品のコピーか、武器庫の出入りが出来る権利、の可能性が最も高いですが……両方とも現実的ではない。
「それは……幻影だった、と云う事も視野に入れるべきでは? 目の前で起こった全てが本物では無い可能性、を疑うべきかと」
アルセーヌがネクロ様に口を挟む。
その意見に、ネクロ様は頷く。
流石は……怪盗、といった所ですか。
本当に良い意味で、着眼点がいやらしい。
でも、これは……アルセーヌが味方だから言える事。
それに関しては、ジャックやラプラスにも言える事ですが……。
「それも視野に入れるべきですね。……貴方はどう思います?」
そう言って。ネクロ様はウィリデ様に視線を移す。
だが───……
「私!? 私はねー」
リル様が自分の意見を言おうとした瞬間、ネクロ様が「貴方じゃありません。ウィリデに訊いているんです」と言った。
相変わらず、キツい言葉ですね……。
王の特徴……とでも言うべきでしょうか?
そして、ネクロ様は何事もなかったかの様に「さて」と呟き、話を進める。
「ロキについて、どう思いますか? ウィリデ……」
ネクロ様は、しっかりと名前を呼んで問う。
それに対しウィリデ様は───
「ロキを強さで見るなら、誰でも勝てない。それは……策士として見ても、同じ事が言える。そして───それらを度外視して、スキルと正体を予測するなら……もう、正体は分かる」
ウィリデ様のその言葉に全員が驚愕し、呆然となる。
その場は、一時の静寂に包まれた───
ウィリデから告げられるロキの正体───!!
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