157話 泣き叫ぶ獅子
「大丈夫ですか、ウガルルム?」
ぼんやりとした脳にその声が聞こえる。
「……?」
「人の姿に成って、寝ぼけているようですね……」
誰が喋っているかは分からない。
でも、懐かしい……。
私をよく叱っていたあの人の声に似てる……
そんな風に思いながら、目を開ける。
すると……霞んだ視界が少しずつ鮮明になってくる。
そして、視界に映るのは───
え?
え……え!?
不死者……?
何で!?
「おや、その様子は……私が誰だか分からない、と云った所でしょうか?」
そう言いながら、その不死者は首を傾げる。
この声……そうだ。
訊き覚えがある。
ソロモンの声だ。
「あ、貴方は……ソロモン王?」
「その名で呼ばれるのも久しぶりですね。その名は───とうに忘れ去られているかと思っていましたよ」
やはり、ソロモン王だ。
でも、何故……不死者の姿に?
それに、今のソロモン王の言い方からして……今は違う名前で呼ばれている?
いや───その可能性は……
「今の、私の名前は───ネクロ。“死滅神”ネクロ=タナトスと名乗る者」
穏やかな声音から重々しい声音へと変貌する。
ッ!!
やはり、この御方は……圧倒的に強い。
声だけで、相手を萎縮させることができるのだから。
「あぁ、すいません。驚かせてしまいましたね」
そう言って、ソロモ───ネクロ様が頭を下げ、謝罪する。
「いっ、いえ! あ、頭をっ! 上げて下さい!!」
私は、自分が挙動不審になっているのを、自覚する。
「もう大丈夫ですよ。アマルティアの洗脳は解けましたから……」
その瞬間、体がネクロ様に近づく。
え?
なん、で───
そして、私は気づく。
ネクロ様に頭を撫でられいることに。
「良いですよ……泣いても」
「───え?」
私はその言葉を放ったと同時に知覚した。
自分が泣いている、と。
なんで……?
何で、私は泣いて……?
今まで泣いた事なんて、無かったのに……
「感情を表に出さず、抑え込んできた……。ウガルルム、時には発散しなさい」
優しい声が聞こえた。
でも、ネクロ様はこう続けた。
人や生物を襲う発散方法はダメですよ、と。
私はコクリと頷いた。
でも、涙が止まらない。
止めたいのに……止まらない。
何で?
何で、止まらないの……?
いつもと違う自分に対して、私は混乱する。
泣いたりなんかしない、自分が泣いている。
その現象は───まるで、自分の心が制御できていない様な感覚。
「はぁ、仕方ありませんね。ここには私しか居ません。貴方が守護する民達も居ません。存分に泣きなさい」
ネクロ様はまた私の頭を撫でる。
その言葉がきっかけかはわからない。
でも……自分の中でキツく縛られていた“何か”が解けた気がした。
「あ、あぁあああ!! ネクロ様ぁ〜!! う、うわぁああああああああ!!」
その後は、ずっと泣いた。
それをネクロ様は地母神の如き優しさで抱きしめながら頭を撫でてくれた。
「大丈夫、大丈夫。思う存分……泣きなさい」
何が理由で泣いたのかは分からない。
理由も分からず、それを知ろうともしないで……ただただ泣き叫んだ。
地母神の如き死滅神───
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