145話 旅行
「おぉー!」
俺は過ぎ去っていく景色に驚きを隠せず、声を漏らす。
漆黒の巨体が森林の中を駆け巡る。
やっぱり、自然の風は気持ちいいね。
でも───
「……早すぎない?」
思わず声に出る。
だが、それは風の音によって掻き消される。
その理由は明白。
リルがリラックスして走っているからだ。
あの世界の常識で例えるなら、新幹線くらいじゃないかな。
まぁ、俺の目がおかしくなってなければの話だけど。
「? 何か言ったのです?」
「ううん、何も言ってないよ」
リルの疑問に俺はそう返事する。
危ない危ない、訊かれてなくて良かった……。
これからは、もっと発言に気をつけなきゃな。
リル……もしかして、めちゃくちゃ耳が良いのかな?
良さそうだよね。
今……狼に変身してるし。
「主! 主! 帝国を通って最短で行くか、少し迂回して砂漠を通って行くか、どっちにするです?」
う~ん……どうしようかな?
ん?
帝国を通って?
もしかして、帝国を飛び越えるとかじゃないよな?
「帝国って言ったら、帝国のある場所を全力で飛び越えたりしないよね?」
俺の発言に、リルは“当然の事”とでも言う様に告げた。
「え? 飛び越えちゃ駄目なのです?」
「よし、分かった。砂漠を通って行こう。出来る限り、最速で」
ネクロ達より早く着いて、周りにある店で食材調達でもしとこうかな。
たぶん、すぐに海淵神殿って言う所に行く事になりそうだし。
アーテルやネクロの様子から、そんな感じがした。
「分かったのです! 最短で砂漠地帯を抜けるのです!」
セト……?
何処だ、そこ?
砂漠って言ってたから、そこの地名かな?
それにしても、砂漠……砂漠かぁ……。
あの世界では縁が無かったなぁ。
それに、砂漠と言ったら蠍が居るイメージだよね!
あとはサボテンとかオアシスとか。
───この後、俺は後悔する事となる。
何故、「最速で」などと口走ったのかを。
* * *
テオスの家にて───
「まだ……?」
私は眠りにつく少女に問う。
少女の正体は……ウィー様。
ウィー様は、テル様達が喋っている間に眠ってしまった。
「う~ん……」
ウィー様は、うめき声をあげる。
「ベータ、早く行きましょう。眠っているウィリデ様は放置して……」
アルセーヌのウィー様を下にみるような発言。
それは許されない。
ここは、私が───あ、団長が怒ってる。
手出し厳禁……。
アルセーヌの発言に、いち早く動いたのは───団長。
「デルタ。それは……アーテル様の命令に逆らう、と言う事ですか?」
団長が素早く取り出したトランプが、デルタの首に触れる。
そして、そこから……紅い雫が滴り落ちる。
「……取り敢えず、合格かなぁ~」
緊迫した空間にそんな呑気なウィー様の声が響く───
ウィリデは、ジョーカー達を試していた!!
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