141話 戦艦
深夜───
月が陰り始め、此の港は昼とは対照的に海潮音がはっきりと聞こえる。
……そろそろか。
何故、ワタシがアイツを待たないといけないのだ……?
チッと、舌打ちをして思考を切り替える。
戦艦の状態を訊いたら……キングに海で異変が起きてないか、訊きに行かなくては。
遅いな……!?
ワタシは、異変を───いや、人の気配を感じ……振り返る。
すると、そこに居たのは───……
「イリス……?」
ワタシは眼前に居る少女へ向けてそう言葉を漏らす。
その少女は無言で首を横に振った。
「……違う。私は……そう、音楽家」
紫紺色の髪の少女が、取ってつけた様にそう言った。
「いやいやいや! 流石に、限度と言うものが……!?」
音が聞こえる。
いや、これは……曲か。
フッ……このゆったりとした曲調───『月光』か……。
月が陰り、暗黒に包まれた時にこの曲を奏でるか……まぁ、イリスらしいな。
音符という“情報”の羅列……素晴らしい!!
イリスは鍵盤があるかの様に空中で指を動かす。
音が小さくても、その中にはしっかりとした力強さを秘めている。
やはり良いものだな。
何故、音が聞こえるのか不思議ではあるが……それを今聞くのは野暮、というものだろう。
この音色……心が洗い流されていく様だ───……
この曲が、カエルラ様が眠っている“神殿”まで届くと良いのだがな。
それにしても、アルヴィスのヤツ……幾ら何でも時間を掛け過ぎでは?
そう思った瞬間、海面が揺れた。
ゆっくりと海面が盛り上がり、ソレは姿を現した。
やっとか。
と言うか……持ってこなくても良かったんだが?
完成したかどうかと、機構さえ教えて貰えれば良かったんですが……もう過ぎた事だ。
海面から出てきた物は……船。
それは、雷神が魔力を込めた唯一無二のワタシ達が乗る船。
雷神の魔力のお陰で、様々な形状……いや、膨張と収縮が可能になっている。
だからこそ、一々……海の底から持ってこなくても良かったものを……
「これで良いか? セーレ!」
昼会った人物とは思えぬ程に、はきはきと大きな声でワタシに訊いてくる。
「あぁ、有難う」
「フッ……貴様に礼を言われるとはな!」
そう言って、アルヴィスが大声を出して笑う。
アルヴィスの後頭部で纏められている薄水色の髪の毛───レア様の角くらい短い───が風で靡く。
と言うか……本当に、落差が激しいな……。
後は、どの様な事が出来るのかを訊いてから……キングの所に行くとしましょうか。
「ラムダ……本当に、この船に神帝様を乗せても良いのですよね?」
「あぁ、だが……流石にあの氷塊にだけは突撃したら、少しは凹むがな」
ほう……あの氷塊に当たっても、少し凹むだけで済むのか。
まぁ、舵を奪って突撃するのもありですが……得策ではありませんね。
最悪の場合、クリールに絞め殺される可能性があるから絶対にしないがな。
もしそうなったら、その後はカエルラ様に殺されるからな。
『自らの娘の手を血で染めた』と言う理由で。
本当に……“天命異形衆”は敵に回してはいけないな───……
カエルラの家族=天命異形衆!!
最後まで読んで頂き有難う御座います!
「面白い」 「次の話が気になる」と思って頂けましたら、下の☆☆☆☆☆から応援宜しくお願いします!
感想やいいね、ブクマ登録などして頂けると嬉しいです!




