127話 唯一無二の書物
俺は歩を進め、そこに辿り着いた。
そこには、世界を隔てる壁にして扉───ビフレストがあった。
俺は……虹色に輝く壁兼扉を、『移界門』を使用して壊そうと拳を握る。
その瞬間、周りの空間に溶け込むようにして“壁”が消える。
どういう事だ!?
何故だ!
何故、何故、何故、何故───!!
……あ、そういえば!
テオス様がお世話になっていた“先生”は───
「やっと来られましたか。アーテル殿……」
その声が脳に到達した瞬間、思考の海から現実に引き戻される。
そして、その声が聞こえた正面を真っ直ぐ見る。
すると……そこに居たのは───
「その体躯、その声……もしかして、貴方が───」
彼は、俺が漏らした言葉を遮る。
「えぇ、そうですよ。私が───この世界の存在する99,9%の武器を造った者。私の名前はピウス、真名はヘパイストスと言います」
そう言って、片手を胸へと当て恭しくお辞儀をした。
その姿を見た瞬間、俺もお辞儀をした。
「いえ、こちらこそ。兄がお世話になっております」
「いえいえ、私も楽しかったですよ」
その返事を聞いて少し安心した。
兄が───いえ、テオス様がピウス殿に迷惑を掛けていないかと、どれほど心配した事か……。
だが、それももう忘れなくてはな。
もう、俺達……家族は引き裂かれてしまった。
二度と後に引けない事が起こってしまったのだ。
だからこそ、俺達家族は神兄のことを……敬い、テオス様と言うのだ。
まぁ、あの3人はそれぞれの呼び方で呼んでいるが……一々、俺が文句を言う必要は無いだろう。
いや……あの3人に文句を言う方が遥かに面倒だから、文句を言わないだけなのですが……。
「どうかしましたか? アーテル殿?」
「いえ、考え事をしていただけですので、大丈夫です」
「これは、申し訳ありません。思考の邪魔をしてしまうとは……!」
何故、これ程までに謝るのでしょうか?
他人の思考の邪魔をした、というだけの理由で……あぁ、そういう事ですか。
“知識”を管理する者としての矜持、というヤツでしょうか?
「立ち話もなんですし、案内しますよ。それに、シル殿にも連れてきて下さい、と言われているので」
「それは有難う御座います」
よし、では現状報告といきますか。
もう暫く待っていて下さいね、シル……。
※ ※ ※
万解書庫の最奥にて───
「遅いですね……。まさか、ピウスが油を売っているのでしょうか?」
自分の呟きを直ぐに否定する。
流石にそれはないでしょう。
何せ、あのピウスですからね。
油を売っているのは、アーテルの方でしょうね。
さて、これからどうなるのでしょうか?
そう考え、私は“本”のページを捲る。
でも、そのページはテオス様に関する情報が全て抜けている。
幾らこの本であっても、神の行動を推し測る事は出来ない、と言う事ですか……。
此処に来る意味も、もう無いという事なのでしょうか……?
いえ、テオス様が決められた事こそが、私達にとっての最善の道。
それ故、安寧を求めて私達はテオス様に仕える。
1人の人間であり1人の友である、という事を忘れない為に……。
その瞬間、音が聞こえた。
この音は……“来客”の音色の筈───あぁ、もう来たのですね。
あまり考え過ぎるのも駄目ですね。
これからは、改善していかないと……テオス様に見捨てられてしまう。
それだけは、絶対に避けなければ。
自らが死しても、この魂はテオス様と生き続けるのだとしても……。
そう考え、本を閉じ、元々あった場所へ転移させる。
シルが見ていた本とは一体───!?
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