表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍1巻発売中】魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~  作者: 延野正行
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/89

第11話 不良聖女

感想欄が好意的で嬉しいです。

もっと勘違いコメディが流行ってほしい。

引き続きご支援お願いします(切実)!

 ◆◇◆◇◆  another side  ◆◇◆◇◆



「くそ……。聖女候補如きに……」


 言葉を絞り出したのは、聖クランソニア学院の生徒だった。

 封印された武器を携帯しているところを見ると、聖騎士候補生らしい。

 制服の胸には、Dクラスを示す徽章が輝いていた。


 半ば意識を失いかけている生徒の顔を、足蹴にする。

 サラブレッドのように鍛え上げられた足首を辿ると、1人の少女の顔に行き当たった。

 息を飲むような金色の髪を後ろに束ね、その髪に隠れた耳は燕の翼のように横に開いている。

 引き締まった手足と細いくびれは、鍛錬の賜物だろう。


 残念なのは、獣の如き青い目の三白眼と、一息吐きたくなるような物足りぬ胸であった。


「その聖女候補に、聖騎士候補生ごとき(ヽヽヽ)がやられてるんじゃねぇ」


 さらにお腹に一蹴り喰らわせる。

 ついに聖騎士候補は意識を失った。


 少女は振り返る。

 そこには死屍累々とばかりに、同じ聖騎士候補生が倒れていた。

 どうやら皆、彼女がやったらしい。


「最近の聖騎士候補生はなってねぇ。まあ、貴族のボンボンばかりが、高クラスであぐらを掻いているんだから仕方ねぇか。それにしても、聖騎士候補が歩いているエルフをナンパするかよ、普通。だから、聖女なんかに喧嘩で負けてしまうんだよ」


 少女は最後に唾を吐き捨てると、街の路地裏を出る。

 表で待っていたのは、3人の同じ聖女候補生だった。


「ネレムの姐貴、お勤めご苦労さまでした」


 一番チビの候補生が、ネレムと呼ばれた少女にハンカチを渡す。

 その後も、ネレムの前で腰を低くして、愛想笑いを浮かべていた。


 彼女らはネレムの取り巻きだ。

 同じEクラスに所属する聖女候補生たちで、男爵か子爵の令嬢だという。

 かくいうネレムも同じで、ザイエス子爵家の三女に当たる。


 取り巻きたちは、一応家名と正式な名前もあるのだが、ネレムは忘れてしまった。

 便宜上、チビがトム、デカいのがヤン、ひょろをクンと呼んでいた。


「さすがです、アネキ」

「聖騎士候補生をのしちゃうとは、しししし……」


 ヤンが呟き、ひょろが独特の声で笑う。

 だが、ネレムは頬1つ赤らめることなく、踵を返し、学院がある方へと歩き出した。


 その表情は浮かないというよりは、何か怒っているように見える。


「褒められても何も嬉しくねぇよ」


 むしろネレムの心は空虚だった。


 実はネレムは女だてらに聖騎士を目指していた。

 家が騎士の家系というのも往々にしてあるが、彼女に1人目標となる人がいた。


 それが英雄ゴッズバルトである。


 小さい頃、父の書斎にある伝記を読み、彼のようになりたいと思った。

 父にそれを告げた時は、大層喜び、激しい訓練に付き合ってくれた。

 来る日も来る日も、雨の日も風の日も、ネレムは聖騎士になりたい一心で剣を振るい続けた。


 そして入学試験、10日前。

 ネレムは訓練中に大怪我を負った。

 幸い命に別状はなかったが、利き腕である右肩が上がらなくなってしまう。


 その状態では剣も振れない。


 結局、ネレムは聖騎士になることを諦めなければならなかった。

 それでも胸に秘す思いを完全に消すまでには至らなかった。

 急遽、聖女候補生の方を受験することにし、合格したというわけだ。


 だが、ネレムは後悔していた。


 少しでも聖騎士の側にいたい。

 自分が追いかけていた夢の側にいたいと思ったが、溢れ出てくるのは、ただただ羨望のみだった。


 鬱屈した気持ちは、暴力に走り、ネレムはすっかり不良聖女と蔑まれるに至る。

 今や彼女を慕うのは、その力に屈した3人だけだった。


「ところで、ネレムの姐貴。ジャアク(ヽヽヽヽ)の噂を聞きました?」


 唐突に話題を振ってきたのは、トムだった。


「ジャアク? ああ……。確か、ルヴルっていうFクラスの聖女のことだっけ? それがどうしたんだよ」


「そう。それっすよ。あいつも色々やらかしてるんですけど、今回のとびっきりですよ」


「とびっきり?」


「なんと、あの英雄ゴッズバルトを泣かせたらしいんすよ」


 トムが口にした瞬間、高速で腕が伸びてきた。

 そのまま胸ぐらを掴まれ、捻り上げられる。

 目を見開いた時には、ネレムの鋭い三白眼が目の前にあった。


 すでに眉間に青筋が浮かんでいる。


「てめぇ、ふざけたことを抜かしてるんじゃねぇぞ」


「落ち着いて下さい、姐貴。マジの話なんですって」


「クン……。てめぇもボコられたいのかい?」


「ホントっす! おで、見てたっす!」


「はあ??」


 自分を指差すヤンを見て、ネレムはまだ信じられない。

 だが、ヤンは性格上嘘が下手だ。

 周りの反応からしても、嘘を言っているように見えない。


「ヤン……。お前が話せ」


 ようやくトムを地面に下ろした。


「おでも信じられないけど……。ゴッズバルトさん、泣きながら土下座もしてて。あとお金も……。とにかくジャアクに向かって、謝ってた」


「マジかよ……」


 何か崖からポンと突き飛ばされたような気分だった。


 ネレムにとって、ゴッズバルトは憧れの人だ。

 目標そのものだと言っていい。

 聖騎士でありながら、幾多の戦場に参戦し無辜(むこ)の民を救った英雄。

 自分が1人前になる前に退役されたが、その憧憬の念は捨てきっていない。

 今、こんな身体になってもだ。


 なのに……。


「許せねぇ……」


 ネレムは拳を握る。

 自然と身体が震え、怒りを露わにした。


「トム……。ジャアクを明日裏庭に呼び出せ。ゴッズバルトさんと何があったか知らねぇけど、あたいがきっちりシメてやる!!」


 パシッと拳を打ち鳴らし、ネレムは打倒ルヴルを誓うのだった。





 一方、その頃ルヴルは……。


(くくく……。放課後が待ちきれぬな)


 授業そっちのけで、にやついていた。

 いつになく上機嫌のルヴルを見た教室の生徒の反応は――。


「なに? 今日のジャアク……」

「むちゃくちゃ機嫌が良さそうだけど」

「逆にそれが怖い……」

「絶対目を合わさないでおこう」


 相変わらず恐れられていた。


頑張って、今日も2本更新させていただきました!

そして残念ながら、作者ができるのは、作品を書いて、投稿するまでです。

多くの方に読んでいただくためには、もっとランキング上位に行くことが必要です。

流行の作品ではありませんが、その中でもこんな作品があるんだぞ、というのを見せたいです。


面白いと思っていただけたら、

是非ブックマークと、下欄にある広告下の☆☆☆☆☆評価を付けていただけると助かります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第2巻12月15日発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


コミカライズ版もよろしくお願いします
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シーモア様にて2巻発売!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス10巻 11月14日発売!
90万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
役立たずと言われた王子、最強のもふもふ国家を再建する~ハズレスキル【料理】のレシピは実は万能でした~

コミカライズ9巻1月8日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる⑨』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


ツギクルバナー

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[一言] 取り巻きも含めて不良聖女4人が舎弟になりそうな予感しかしない。(*ノ▽ノ)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ