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白雪の陰陽師  作者: 桃姫
青葉騒動編
120/370

120話:■■ ■の純潔

「へくちっ」


 そんなくしゃみの声が部屋に響く。その部屋に居たのは、2人の女性だった。くしゃみをした女性に対して、スーツの女性が言う。


「ちょっと、風邪とかはダメよ。これから本番なんだからね」


 そんな風に叱るような態度の彼女は、所謂マネージャーという職業についている。売れないアイドル事務所のマネージャー兼プロデューサー。それが彼女である。


「大丈夫ですよ。たぶん、誰かが噂してただけです」


「そう、まあ、貴方には十勇士って名乗ってるファン筆頭がいるから噂もされるでしょう」


 そんなことを言うマネージャーに苦笑する。今は地方巡業の真っ最中である。年末年始というのは、どこも忘年会に年始会と、集まれ騒げの宴尽くし。そうなれば、売れないアイドルとて出番はある。特に、年末年始の特番に有名なアイドルたちが出演するようになった昨今では、こうした地方巡業が、売れないアイドルへと回ってくるのである。


「それじゃあ、――戦国武将系アイドル、みらくるはぁと幸村ちゃん、行ってきます!」






 新年の冷たい風が、撫でる。彼女は、まだ、知らない。彼女という人間に宿ったそれが、如何なものなのかを。しかし、それを知る機会が訪れる。新年から少し経った、その日に――。

 その出会いまでは、まだ、少し時間がある。








 戦国武将系アイドル・みらくるはぁと幸村ちゃん。彼女の苗字が、その戦国武将と同じだったためだけに名づけられた安直な芸名。


 ニックネームは幸村ちゃん。生年月日非公開。血液型O型。出身地は長野県。


 特技は動物に好かれること、四葉のクローバー探し、という何とも評価しがたい。


 身長体重、スリーサイズは非公開である。好きな色は青色と白色。ハナミナプロダクション所属。





 ――彼女の物語は、今、描かれ始める。

次章予告

 冬休みも明け、訪れる新学期。気持ち新たに始まる学校生活。


 聞こえてくる春の足音はまだまだ遠い。


 聞こえてくるのは、地に落ちる六文銭の音だけだ。


 ――悪魔が嗤い、――妖精が笑い、――神が微笑む。



 ――第五幕 九章 偶像優愛編

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