アヌシャヌス第一次攻防戦準備
アース
目の前に広がる草原に妻のエリゼと共にやってきた。今回の依頼は簡単で砦を更に堅牢にすることだ。面倒なことはエリゼに丸投げしてあるから強化するだけだ。
では、始めよう。まず初めに現在ある防壁を強化する。今の防壁は石を積み上げて土などで固めただけの防壁だ。強化するのは簡単だ。鉄を被せるだけで随分と違うからだ。幸い、大量の鉄がアイテムボックスに入っている。それを使ってさっさとコーティングしてしまう。錬金術を使えば即座にできる。材料の鉄と防壁を触れてイメージをする。脳内にエディタをイメージすれば便利なものだ。実際に脳内だけとはいえ起動するのだから。3D映像で防壁を見て全体を覆うようにおこなう。
完成した防壁は繋ぎ目なく分厚い鉄に覆われている。これで第一防壁は問題ない。次に第二防壁を作成する。こちらは防壁は高さ五メートルにして第一防壁と同じ物を少し上のサイズに変更して設置する。盛り上がる土を使って溝を作成する。大量の地面を隆起させたため、地下水脈に当たった。お陰で水堀も出来た。橋もついでに作成しておく。すぐに第三防壁も同じように作成する。最後に土を付けてわざとボロボロの石などを取り付けて壊れかけを装う。これで外観は変わらないどころかより酷くなっている。遠くから見ても分かるだろう。これで相手側は誤認してくれる。
次に防壁の内側に狙撃場所を作り、連射が可能なようにしたバリスタを設置する。これは矢筒を上に設置し、撃つと下に落ちてくる。後はハンドルを回して自動的に引き絞る。数人が必要だが強力な兵器だから仕方ないだろう。投石器も設置しておけば問題ない。矢や石は重いだろうが、アイテムボックスに入れることで労働力を削減できるしな。
後は外に土嚢を積み上げ……いや、それ以上の仕掛けをしておくか。目指すは最小兵力で大軍を殲滅できるようにすることだ。
「おい、この地図に間違いはないだろうな」
「もちろんです」
クロードが俺につけた騎士が答える。なら、充分に使える。
「少し出るぞ」
「はっ!」
砦から出て北の森へと進む。ガルムを借りて数キロ進んだ先で巨大な穴を作成する。水脈に到達させて穴に水を満たす。これで残りの準備を始める。砦の前の草原を周りより低くする為に地盤沈下を起こす。後はエリゼにお願いして大樹に南の水を吸い上げ、北側に放出するようにしてもらえば完成だ。水攻めは基本だろう。
これらを三日で作成した。
「次は搬入路か」
「一応、リーブル側から補給路はありますが……」
「バレやすい補給路など使っていられるか。戦争で大事なのは補給だ」
「そうなのですか?」
「そうだ。食糧や武器が無ければ戦えんだろ」
「確かに」
「てな訳で地下通路を作るぞ」
「はい。お手伝いします」
「おう。騎士達を動員して土をアイテムボックスに入れさせろ」
「つ、土ですか?」
「今から掘り出すからな」
砦の内側から地下に向かって掘り進め、途中から西に向かうようにする。エリゼからの報告でリンが列車を作ってるそうだからな。地下から搬入出来るようにしたら安全だろう。
ロミルダ
私はエルフの女に捕まり、精霊を体内に入れてあいつの思う通りに動かされている。今は私の上司に報告をしている所だ。
「では、計略は成功したのだな?」
「はい。ゴブリンとオークの量産に成功しました。また、ミノタウロスもオークを狙ってやって来ているのが確認出来ました」
「ふむ」
「リーブル村に関してはいつでも呼応して反乱を起こせます。それはラプシンも変わりません。またヘルミナ公爵家もウルカレル男爵領に対して動きはありません」
「ウルカレル男爵領以外には?」
「内部の権力争いが激化しております。直ぐに内乱に発展するでしょう」
「よくやった。暗殺したかいが……いや、なんでもない」
王が死んだのはこいつらの者か? いや、有力貴族を殺しただけかもしない。どちらにしろどうでもいいことだ。
「城砦ですが、補給路をリーブル村で断っているため、食糧や武器類なども届いていないのでろくな戦闘もできないと思われます。防壁の修復も出来ていないかと」
「そうかそうか! これで我がアヌシャヌス王国に逆らう愚かな国に鉄槌を下せるな。我らが神もお喜びになるだろう」
「その通りでございます。急ぎ本国に連絡し、大部隊を準備されるとよろしいかと」
「ん? 少数で攻めた方がよかろう」
「恐れながら申し上げます。我らだけでかの砦を抜いたとしてもヘルミナの大部隊により奪い返されるのが目に見えております。例え混乱しようとも相手側も増援を呼んできます。そうなれば一番被害を食らうのは我々です。ここは現状を報告し、大部隊を編成し一気に準備が整う前のヘルミナを落とすべきです。そうすれば第一の功績は卿のものとなりましょう」
「そうかそうか! うむ、良かろう! すぐに準備させようぞ! 主は詳細な情報を集めてまいれ」
「心得ました。春の進軍には間に合わせます」
「頼むぞ」
これで破滅への道を歩みだした。だけど、私は違う。そうだろ?
『肯定。我らは汝の願いを叶える』
『報酬はきちんと支払われる』
ならいいさ。人質にされているうちの妹達を助け出す力を貸してくれればね。
『了承。女王様より認可を受けた』
『我ら精霊による救出作戦を用意する』
本当に手を出したら駄目な奴に手を出したようだね、私達は。
『肯定。我らによるカウンターアタックが発動される』
カウンターアタックって、何をする気なの?
『止まぬ雨』
『止まらぬ暴風』
『『暴れまわる轟雷』』
世界の破滅じゃないか。大打撃を受けるのは確実だろうね。本当に恐ろしい。
クロード
ギュンターがリーブル村に到着した時には既に決着が付いていたとは恐れ入るな。いや、目の前の人には心底驚かされる。今はギリアムの入れたお茶を飲んでいるが。
「それで、アースさんが砦の強化をしてくれている間に作戦を詰めましょうか」
「そうね。といっても、来る敵を引き寄せて殲滅するだけよ」
「そうですけれどね。そちらから提供される戦力はどれくらいですか?」
「ミノタウロスとワーウルフ。シルバーウルフを複数。これが息子が用意している戦力ね。後、コカトリスを数羽くらいなら頼めば出してくれるでしょうね」
聞いただけで恐ろしい戦力だ。特に力が強く強靭な身体で剣などが殆ど通らないミノタウロスと石化の魔眼を持つコカトリス。それに加えて高い機動力を持つシルバーウルフとそれを操るワーウルフ達。ワーウルフに関してはこちらに来るはずの人達がアヌシャヌスの手の者によりリーブル村で襲われたそうだ。これはあちらにも賠償をせねばならない。こちらの不手際で起こってしまったことだからね。
「この戦力は相手の側面をつかせましょう。砦に充分引き寄せてからね」
「そうですね。それで魔法部隊の件ですが……」
「精霊達にお願いしてサポートをするように頼んでおく。でも、必要ないかも知れないわ」
エリゼさんが虚空を見ながら楽しそうにしだした。
「アースはここに溜池を作って傾斜をつけた地面に大量の水を流して、敵兵を一気に押し流す気よ」
「出鱈目ですね、本当に。しかし、被害が少なく済みそうです」
「そうね。まず引き寄せてから水攻めで一気に数を減らす。その後に魔法部隊と射撃部隊による一斉攻撃。続いて左右の側面からミノタウロスとワーウルフ達が突撃する。それに呼応して砦から打って出る。これで終わりね。残党狩りはワーウルフ達に任せたらいいから」
「そうですね。猟犬は追撃戦こそ恐ろしい。開戦の予定は春でいいですよね?」
「ええ。雪が積もった中では連中も大部隊ではこれないわ」
「では、次は鉄道の件です――」
私達は色々と話して詰めていく。この国の為にも彼女達の協力は是非とも取り付けたい事がらだ。
名前:リン
種族:エルフ/ドワーフ
肉体:肉体強化Lv.4(up)、肉体再生Lv.2(up)、状態異常耐性Lv.2(up)、頑強Lv.4、剣術Lv.6(new)
魔法:精霊魔法Lv.5(up)、時空魔法Lv.4(new)
技術:騎乗Lv.4(new)、技能付与Lv.2(new)、建築Lv.4(new)、木工Lv.4(new)
特殊:エクストラテイミングLv.2、極大魔力Lv.4(up)、千里眼Lv.2(up)、経験値10万倍(PT)、成長限界突破(PT)、精神障壁Lv.1、強運Lv.1
名前:ユエ
種族:吸血鬼/人間
肉体:肉体強化Lv.7(up)、臓器再生Lv.6(up)、状態異常耐性Lv.1、頑強Lv.6(up)、痛覚遮断Lv.2(new)、斧術Lv.3(new)、魔力量増加Lv.3(new)、肉体再生Lv.4(new)
魔法:吸血魔法Lv.8(up)、時間魔法Lv.4(up)、魔法障壁Lv.4(new)
技術:木工Lv.4(new)
特殊:血の従者、殺戮機構Lv.2(new)、振動破砕Lv.1(new)、真祖の血族Lv.1(new)、精神障壁Lv.1(new)
状態:隷属
名前:調
種族:精霊
肉体:肉体強化Lv.5、肉体再生Lv.3、状態異常耐性Lv.4、頑強Lv.6、剣術Lv.3、魔力回復向上Lv.3、魔力量増加Lv.5
魔法:火炎魔法Lv.3、魔法障壁Lv.4
技術:木工Lv.4、騎乗Lv.4
特殊:金剛力Lv.2、円月輪Lv.3、精神障壁Lv.1、、魔導剣Lv.3、聖なる生ける炎
状態:隷属
名前:ティナ
種族:人間
肉体:
魔法:回復魔法Lv.4、封印魔法Lv.1、料理Lv.4
技術:
特殊:
状態:隷属
名前:ホワイト・アリス
種族:ホーンラビット(変異個体)
肉体:跳躍Lv.6
魔法:
技術:
特殊:貧弱Lv.5
状態:隷属
名前:ブラック・アリス
種族:ホーンラビット(変異個体)
肉体:跳躍Lv.6
魔法:
技術:
特殊:貧弱Lv.5
状態:隷属
名前:シルバーウルフ
種族:シルバーウルフ
肉体:嗅覚索敵Lv.3、肉体強化Lv.3
魔法:
技術:集団連携Lv.5
特殊:
状態:隷属
ユエの肉体再生ですが、現状のまま初期状態となりますので腕は再生しません。身体の大半を失ってからの再生なら可能とするかも知れませんが。




