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列車開発と牧場開発4






 列車一号の試運転を開始。しかし、動かない。上手いこと漕げないようだ。それどころかペダルがライノクスの力に耐え切れず潰れてしまった。つまり、失敗した。


「う~ん、どこが間違ってたのかな?」

「色々かな。やっぱり、私達で作るのは限界がある」

「ですよね。そもそも車両部分は乗ったことはありますけれど、機関車の方は知りませんし」

「強度問題もあるぞ、です」

「何か他に方法は……」

「あれよ。北海道を旅行した時に寄った開拓村」

「ああ、馬車鉄道ですね」

「なにそれ?」


 聞いた所によると、馬車鉄道は、馬が線路の上を走る車を引く鉄道で19世紀のイギリスで誕生したそうだ。これも現状には合っている。それに線路の上を走ることでただの馬車に比べて乗り心地もよく輸送力も大きくなるらしい。馬では引くことの出来ない大型車両でもドリルホーン・ライノクスという生物の枠を超えているモンスターなら可能かも知れない。


「じゃあ、そっちでいこう。連結部分に衝撃吸収用の設備も取り付けないといけないし、もしものことを考えてライノクスにもしっかりと鎧を装備させた方がいいよね」

「そうね。アースさんが作った藏を利用して運転席も作った方がいい」

「よーし、作ろうか」

「任せろ、です」


 簡単な馬車の構造を真似するだけなので必要な物は殆ど無い。ペダルを漕ぐ訳でもないので強度もなんとかなる。問題はライノクスが走る時の衝撃が大きくなることくらいだ。そちらはサスペンションとアブソーバーで解決してみる。いや、いっそ線路に魔法を付与して車両を浮かせてしまうか。リニアみたいに完全に浮かせる訳じゃないけど。供給する魔力と盗難防止の対策をしないといけなさそうだけど。


「お茶が入りました。休息時間です」


 いつの間にか時間が経っていたようで、ティナがお茶を入れてきてくれた。


「そういえば線路はどうするの?」

「モンスターから線路を守らないといけませんよ」

「あー」

「それなら村などの柵に使われているものをお使いになったらどうですか?」

「なにそれ?」

「簡易の結界が展開できるように施された魔導具です。商業ギルドと魔導士ギルドが協同で制作して販売しています」


 確かにそれがあればモンスターが寄ってこないのか。


「弱いモンスターにしか効かねーし、数がいると突破されるぞ、です」

「弱点もあるのね」

「後は何かないかな……」

「ひなに任せろ~」

「「「うわっ!?」」」


 いきなり上から降ってきたひなたとひなたを抱えている二メートルはある黒い全身鎧の騎士。鎧には金色の紋章や金色の線が引かれており、黒色で金の紋章が描かれた盾を腕に装着している。更には背中に黒い機械の翼まである。生気は感じられないけれど明らかに強そうな鋼鉄の騎士。そう、その姿はどちらかというとロボットに近い。いや、パイプや腕を見れば機械でできているのが一目でわかるので確実にロボットだ。そしてなにより見れば見るほど寒気を感じさせる。まるで――


「不浄なる者っ!? お気を付けください!」

「ん、大丈夫」

「ひなた、何これ?」

「ひな特製殺戮怨霊ゴーレム!」


 えっへんと胸を張るひなた。言っていることが物騒過ぎる。


「えっと、僕の記憶が正しければひなたはユエの腕を作ってたんじゃ?」

「ん、できたから持ってきた。コレはそれの副産物」

「副産物で危険な物を作るな! だいたい怨霊って危なすぎるよ」

「闇精霊さんが入って怨霊さんを食べてエネルギーに変えて動くの。怨霊さん、成仏できて闇精霊さんとひな、エネルギーもらってラッキー」

「じょ、浄化をできるのですか……?」

「ん、強制的に成仏させる。ひな達にはとっても安全」

「まあ、安全ならいいや。ユエの腕ができたってならお願い」

「ん、ひなに任せる」

「お願いしますね」


 ユエはひなたと一緒に少し離れた所で作業を行っている。ティナはまだ警戒している。調は興味深そうに黒騎士を見ている。


「ねえ、これを線路の護衛に配置するとして、もう一つ出来るか分からないけれど考えたことがあるの」

「何?」

「うん。ティナ、モンスターって強いモンスターの縄張りには近づかないのよね?」

「そうです」

「なら、強いモンスターの血や魔力ならどうなる? 近付いてこない?」

「血は分かりませんが、魔力を感じたら逃げると思われます」


 血の場合は引き寄せることもあるかも知れないね。魔力の場合は逃げるか。モンスターの魔力の源はやはり魔石だよね。


「なら、魔石を砕いてレールに混ぜればいいかも? 強いモンスターは警戒しないといけにけれど、既に街道が作られるほどモンスターが狩られている場所の近くなら強いモンスターなんて居ないはず。居たらそれこそ皆で討伐するはずだし」

「そうですね。確かにその通りです」

「じゃあ、試してみようか」

「そうね」


 先ず調の言った通り、オークから回収した魔石を砕いて鉄に混ぜてみる。魔石をハンマーで砕いて乳鉢ですり潰してから鉄を溶かした鍋に入れる。温度に関しては調にお願いした。結果は失敗。何度か試しても定着せずに消えてしまう。


「こういうのは付与魔法が必要なのではないですか?」

「確かに物体に付与している。やってみて」

「わかった」


 技能付与を発動しながら混ぜてみると微かに魔力が残った。成功といえるけれど、これじゃあ使い物にならない。


「成功した。でも……」

「使い物にならないわね。オークでこれだとガルム達のを混ぜてもコストパフォーマンスが悪い。線路は複線も考えて沢山要るし、一本一本の距離も長い」

「だよね」

「複数を混ぜればどうですか?」


 混ぜるか。待てよ、モンスターの強力な魔力を付与するだけだよね。だったら僕の、極大魔力と合わせて付与すればいいかも。オークの魔石は定期的に手に入る。コカトリスもそうだ。なら、できそうなきがする。


「もう一度」

「わかった」


 鉄をもう一度溶かして貰う。鍋の内部と外の温度をコントロールして内部の鉄だけを熱してくれているので何度も試せる。ついでだし、精霊さんにお願いして不純物を抜いてもらおう。あと、分子構造も細かくしてもらう。確か、細ければ細かい程切れ易くて滑るって聞いた事があるし。


「ねるねるねるね」


 大量の魔力を流し込んで魔石を混ぜる。


「懐かしい」

「久しぶりに食べてみたくなるわね」

「なんなのですか?」

「僕達の国にあったお菓子だよ。っと、出来たね」


 できた鉄は濃密な魔力を発している。ハイ・オーク・ジェネラルの魔石みたいで、遜色がないほどだ。


「これを使ったレールね。盗まれそうじゃない?」

「だね」

「可能性はあります」

「線路の周りに有刺鉄線を張り巡らせて電流を流す。流した電流が消えた場所にあの黒騎士を直行させる。それ以外はパトロールかな」

「踏切は?」

「立体交差にして線路に近づけないようにするのがベストだし、無しでいく。その辺はお母さんと相談だけど」

「わかった」


 レールの形に形成していくよう精霊さんにお願いする。精霊さんは職人顔負けレベルで加工してくれるので楽だ。


「そういえば黒騎士を置く駐屯場所も一定距離ごとに作らないといけないわよね?」

「そうだね」

「やる事いっぱいですね」

「あの、それなら宿場を作っては如何ですか? あの黒騎士さんが安全を確保して頂けるなら普通の道を歩く人達も随分と助かると思います」

「……ありだね」

「そうね」


 僕と調は頭の中で計算してみる。先ず黒騎士の駐屯場所を作る時に宿屋も作成すると、旅の人が泊まってくれるので宿屋の利益が入るし、トラブルがあった場合は鉄道を利用してくれる。どうせ駐屯場所は管理の為に人を置くので駅にしても問題は無い。国としては流通が捗るから利益も出てくる。税金の計算とかが面倒だろうから鉄道騎士団に纏めて計上するようにすれば面倒は少なくなる。


「治療所も設置すれば近くの村からも人が集まってくる。そうなれば道の駅みたいな感じにできる」

「利益は結構でそうだね」

「失敗してもそこまで痛くない。家はすぐに作れるし、どうせ線路を守るために黒騎士を配置するついでだし」

「よし、やろう。ありがとう、ティナ」

「いえ、賛成して頂けるとは思いませんでした」

「ふふふ、楽しくなってきたね」

「ええ」


 さっさと車両とレールを作っていこう。貨物車も作らないといけないしね。まあ、こっちは時空魔法を使えばすぐだ。時を止めた倉庫ならテロも事前に防げるしね。後はミノタウロスさん達やワーウルフさん達とシルバーウルフ達が乗る護衛車両も作らないとね。


「リン君、リン君!」

「できたの?」

「はい! 見てください! 新しい腕ですよ!」


 機械の手ということは違わないけれど、前みたいに武器じゃない普通に握れる指になっている。でも、掌には相変わらず振動破砕の機構があるし、腕の部分には篭手のように爪が設置されている。


「これですか? ちゃんと武器にも盾にも出来るんですよ」

「へぇ~」


 爪は篭手に収納もできるようで、何より回転させて手に嵌める事で前と同じ刃の爪になった。盾や収納式になったぶん、結構大きくなっている。これって僕が手を貸したらもっと小型化出来そうだ。


「ひなた。収納部分を僕の魔法でアイテムボックス化するからもっとスマートにしてあげて」

「ん~わかった。アニメみたいにカッコイイし、ひな賛成~」

「あははは、確かに大きいですしね」

「後、黒騎士を量産して」

「お兄ちゃんはひなを過労死させる気?」

「いや、そういうつもりは……」


 妹をそこまで酷使する気はないよ。一、二時間やってくれるだけで充分だし。


「できるけど」

「できるんだ」

「黒騎士を作る人形さんを作ればいいだけだから楽勝~。でも、素材を取りにいかないと駄目~」

「素材か。ダンジョン?」

「そー。だから待ってて。ひながいっぱい作る」

「わかった」

「ならいっそ工場を作ったら?」

「いいね、それ」

「ひなはわからないから任せる!」


 黒騎士工場の作成も決定して急ピッチに作業を進めていく。


「リン君、素材は私が取ってきます。こちらではあまり手伝えませんから」

「悪いけれどお願いするね」

「はい。ひなたちゃん、黒騎士さん達を借りていい?」

「ん、いいよ」

「では、行って来ます」

「いってらっしゃい」


 ユエがダンジョンへと向かった。僕達は車両とレールを作成していく。レールに関しては僕が作った鉄をフランがレールにして僕が時空魔法でレールの時を止める。その後、調がミノタウロスさん達に協力してもらって砦に向かってレールを設置していく。その間の護衛はワーウルフさん達にお願いする。ちなみに時間を止めた理由は簡単だ。内包している魔力を逃がさないためとドリルホーン・ライノクスという巨体が踏んで壊さないようにするためだ。一応、調には土の中級精霊さん達をつけて埋没するように設置してもらうつもりだ。あれ、そうなるとレールに土や石が嵌ったら大変な事になる。これはライノクスの前にレールを掃除する除去機も取り付けないといけないかな。






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