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ワーウルフ



 コカトリス達の生活空間を整えたのでお母さん達に報告しようとしたのだけど、お母さん達は居なかった。千里眼で探してみると砦に向かっている。ひなたは居なかったので作業場に行ってみる。


「ひなた」

「ん、何?」


 ひなたはぬいぐるみと人形達に囲まれて作業をしていた。人形に関してはダンジョンから持ってきたあの殺人人形なんだけどね。


「お母さん達が居ないけど、何か聞いてる?」

「ん。お掃除しに行くって、言ってた」

「お掃除? まあいいや。ひなたはご飯とか大丈夫かな?」

「ん、大丈夫。用意してある。お兄ちゃん達は?」

「僕は向こうで泊まる事になるから、帰ってこないよ」


 ワーウルフさん達を見守るためにティナ達は動けないし、僕もあっちに居た方がいいしね。


「ん、わかった。ひな、お留守番してる」

「大丈夫?」

「ん、皆、居る」


 周りのぬいぐるみ達が頷いている。確かに寂しくはないか。それに城には子供達も大人達も居るし、大丈夫だろう。


「わかった。それじゃあ、ちょくちょく様子を見に来るね」

「ん。いってらっしゃい」


 ひなたの部屋から転移してツリーハウスに戻る。



 ツリーハウスに戻った僕はティナを探す。でも、別のツリーハウスで彼女達を見ているのか、居ない。態々呼ぶのも悪いのでそのまま台所に移動する。ここはキッチンもちゃんと準備されているのでアイテムボックスから調理器具と材料を出すだけでいい。準備が出来たら一旦、外に出てアイテムボックスからオークの死体を何匹か取り出す。


「精霊さん、解体をお願い」

『心得た~』


 解体をお願いすると瞬時に行なってくれた。その中からオーク肉の肩ロースをブロックで取って、それ以外はアイテムボックスに仕舞っておく。台所に戻ったら肉にフォークを突き刺して塩胡椒をしっかりと馴染ませる。次に熱したフライパンに脂身を下にしっかりと表面を焼く。その間にニンニクと生姜、ネギを切っておく。


「ん、こんな感じか」


 次に肉を紐で縛る。深めのお鍋にお湯を沸かして縛った肉とネギとにんにく、生姜を入れて沸騰させる。ここでタレを作るんだけど、残念ながら醤油は無い。なのでそのまま煮込む。時空魔法で時間を短縮し、出来たお肉を寝かせる。その間に深い鍋に水で洗ったお米を入れて鍋でご飯を炊く。

 次に玉ねぎと人参を微塵切りにしてフライパンで焼いていく。玉ねぎは熱をしっかりと通して辛味を消して甘味を出させるのが普通だけど、この玉ねぎは品種改良済みで辛味は無い。それでも熱を通すと更に甘味が濃くなるのでしっかりと炒める。炒めたら塩胡椒で下味を付けて先程作った肉も微塵切りにして一緒に炒める。炊けたご飯をフライパンに入れて強火で一気に焼く。しばらくフライパンを動かしながらかき混ぜてお米がパラパラになって来た所にコカトリスの無精卵を取り出して割って器入れる。卵の中にある白い紐見たいなカラザを取り出してしっかりとかき混ぜたらフライパンに投入してかき混ぜる。強火で一気に仕上げる。後はお椀に入れて固めた後、皿を乗せてひっくり返す。出来たらスプーンを付けてアイテムボックスに仕舞っていく。

 何度か作って――唐突に気づいた。


「ワーウルフって、玉ねぎは大丈夫だったかな?」


 不安だからもう一品、作っておこう。コカトリスの卵焼きとオムレツを作っておく。それからティナの下へと向かう。

 別のツリーハウスに入る手前でノックをする。


「はい」


 ティナの声が中から聞こえて来たので、要件を告げる。


「ご飯を作ったけど、皆は食べられる?」

「ちょっと待ってください」


 少し待っていると、ティナが出てきた。ティナの顔には疲れが浮かんでいる。


「ワーウルフって何でも食べられた? 玉ねぎとか……僕達が食べれるような物は全部食べられる?」

「大丈夫なはずです。例え何かあっても解毒と浄化でどうにか出来ますから」

「わかった。それじゃあ、これ」

「はい。ありがとうございます」


 食事をティナに渡していく。ティナのアイテムボックスに移した後、僕は戻ってティナを待つ。少ししてからティナが戻って来た。


「そっちはもう大丈夫?」

「六人ほど、動けるようにはなりました。ですが、他の方はまだ時間が掛かります」

「わかった。とりあずご飯を食べようか」

「待っていてくれたのですか?」

「うん。どうせならね」


 お互いに向かい合って席に座ってご飯を食べていく。なんていうか、卵が凄く美味しい。そのせいか他の食材が負けてしまっている。


「あの、この卵ってもしかして……」

「コカトリスだよ」

「よろしいのですか?」

「何が?」

「コカトリスの卵は銀貨40枚から60枚もする高価な品ですが、私達のような奴隷が口にする物では――」

「ティナは僕のお嫁さんなんだからそんな事を言っちゃ駄目だよ。同じものを一緒に食べるのは決定事項だから。ワーウルフの人達も辛い思いをしたんだから、せめて美味しい物でも食べさせてあげたいから金額は気にしなくていいよ。そもそも取ってきただけだからお金は掛かってないしね」


 しかし、コカトリスの卵ってそんなに高いんだね。まあ、森の奥地に居るからそこまで行くのも大変だし、コカトリス自身も石化の魔眼とかを使ってくるから卵が高いのは理解出来るんだけどね。コカトリス達は有精卵はともかく無精卵は放置しているみたいなんだけどね。いや、卵を狙ってやって来る者に対する囮にしているのかも知れない。


「まだまだあるし、子供達にも食べさせてあげようか」

「よろしいのですか?」

「あの子達はティナの兄弟みたいな子達だよね?」

「そうですが……」

「なら、僕にとっても兄弟だからね。それにこれから安定して手に入るから価格も下がるし気にしなくていいよ」

「はい」


 食事を終えたらユエ達を確認する。どうやらミノタウロスの所から戻って来ているようだ。このままいけば夕方くらいにはこちらに到着するかな。


「ご主人様、フランちゃんには婚約指輪を作って差しあげないのですか?」

「え? なんで? アイテムボックスはあげるって言ったけど……」

「求婚してましたよね? フランちゃんも受けてましたし」

「え? いや、ちょっと待って、どういうことっ!」

「あ、やっぱり知らなかったのですね。ワーウルフの女性は耳と尻尾を触らせるのは伴侶だけです。触らせて欲しいというのは求婚の言葉になりますね。エルフも同じはずですが……」


 どうしよ、ただモフモフしたかっただけなのに。そういえばフランも最初は抵抗していたや。そりゃいきなり求婚されれば抵抗もするか。でも、その後は受け入れてくれたよね。何で……あっ、あの時、フランは僕の言う事をなんでも聞くって言った後で、悩んでから触らせてくれた。


「うわぁ、それってつまり、僕は他の人を助けてあげる代わりに僕の嫁になれって言った事で……」

「そうなりますね」

「最低だよ!? ど、どうしたらいいのかな!?」

「諦めてください」

「てぃ、ティナ?」

「あちらが拒否していたら問題は無いのですが、受け入れていますから。それなのにこちらから断るというのはワーウルフにとって耐え難い屈辱になります。特に女性は一途に一生一人の男性に尽くすので、断られて捨てられた方は未婚のままになり、自殺する人も多いそうですよ」


 つまり、僕が断るとフランのこれからの人生、お先真っ暗って事だよね。


「で、でも、大丈夫かな? 僕にはもう三人もお嫁さんが居る訳で……」

「ワーウルフは一夫多妻制なので問題は無いと思います。強い男性の下に嫁ぐのが推奨されていますから」

「戦闘民族なんだね……」

「どうなさいますか?」

「責任を取るしか……いや、これじゃ駄目だね。落ち着いて考えよう。僕に四人のお嫁さんと妹を養って子供を育てる力は……」

「ありますね。コカトリスの卵を定期的にお売りするだけでも充分ですし、アイテムボックスを作られれば数十人でも数百人でも養えるかと思いますよ」

「そんな気がしてたよ!」


 恐るべきは空間魔法と時間魔法を覚えた付与魔法使いって事だね。でも、養えるなら責任は取るべきだけど、フランの事はよくわからないしどちらかといえば妹って感じなんだよね。でも、女の子を悲しませる訳にもいかないし、不用意な事をした僕も悪い。フランは口は悪いけど、根はいい子だし……どうしたらいいか。


「うん。フランには悪いけれど、前向きに検討するという事で……」


調達も先送りにしている訳なので、フランもそうしよう。


「それがいいと思います。フランちゃんを一緒に説得しましょう」

「ティナは優しいね」

「いえ、そんな事はありません。それにヒルデさんからもフランちゃんの事を頼まれましたから」


 あからさまにホッとしているし、優しいのは合ってるんだけどね。でも、やっぱりちゃんとお父さん達みたいに愛し合いたいよね。


「さて、お昼寝なさいますか?」

「そうだね。あちらが大丈夫なら、ちょっとだけしようか」

「でしたら、こちらにどうぞ」

「うん」


 ティナにベッドで膝枕をしてもらう。ティナに頭を撫でてもらいながら車両の設計を考えていく。何も元の世界と同じ物を作る必要は無いのでなんとかなる。列車の模型とかも何度も作ったしね。まあ、こっちはまだいいとして、問題はお醤油や味醂とかだ。発酵は僕の力で直ぐにでも出来るけれど、作り方がわからない。まあ、そっちはお母さんがするだろから、僕は別の事かな。卵の生産はコカトリスでいいとして、牛肉が問題だね。ミノタウロスが無理だとしたら別のを考えないといけない。まあ、ユエ達の交渉次第だけど。

 そんな事を考えているといつの間にか眠ってしまっていた――





「起きた?」


 気が付いたら膝枕をしていたティナが調に変わっていた。周りを見るとフランとユエが僕にくっついて眠っている。


「うん。お帰り」

「ただいま。そっちは大丈夫だったってティナから聞いたわ。こっちはミノタウロス達と交渉した結果、三日後に返事がくるの。でも、相手の現状からして受け入れるのは確実。戦士長さんも聡明だったみたいだし」

「そうなの?」

「少なくとも私とユエがおかしいってのは気付いてた」

「おかしいって……」

「私は炎そのもので、ユエは真祖の血族じゃない」

「そうだけどね」


 自分でおかしいっていうのはどうかと思う訳ですよ。


「そっちは置いておいて。肉は無理かも知れない。牛乳は頼んだけど」

「そっか。そっちは別に探そう。豚と鳥は確保出来たしね」

「わかった」


 千里眼で確認する限り、森には牛系は居ない。次に草原を見てみる。広大な草原には集団で行動するアメリカンバイソンなようなのが居た。またそれらを狩っている豹やライオンなども生息していた。驚いたのはサーベルタイガーや恐竜まで居た事だ。流石はファンタジー世界。


「居たよ。それも集団で」

「じゃあ、先にそっちを確保しに行く?」

「そうだね。他にも欲しい動物が居るし、明日は皆でそっちかな」

「わかった。それで、ご飯はどうする?」

「炒飯ならあるけど」

「それもいいけど、豚肉がいっぱいだからトンカツ……串カツを作ろう。塩味だけだけど」

「そうだね」


 起きてから台所に向かっていく。しかし、昼寝が気付けばガッツリと寝ていたや。それだけ疲れが溜まっていたのかも。

 っと、今は夕食の準備だった。串カツをするには油が大量に必要だ。炒飯の時には豚の油を使ったけれど、こちらは植物油を使う。お母さん作った奴で、オリーブオイルと一緒に貰っている。料理を開始するとテキパキと作れる。料理スキルを昼間に覚えたからだ。

 下味を付けた一口サイズの肉を串に刺していく。後は野菜炒めくらいかな。


「私も手伝いたいけれど、料理した事ない」

「じゃあ、一緒に作って覚えようか」

「わかった」


 調に料理を教える。といっても調にとっては簡単な事をお願いする。


「油の温度を170℃にして、串を小麦粉と卵を混ぜたこれに入れる。それからパン粉を付けて揚げるだけ。狐色になって浮いてきたらいいからね。跳ねる油や温度には気を付けないといけないけれど」

「わかった。でも、其の辺は大丈夫。特性的に火や熱は効かないから」


そういえば調は火の精霊みたいな感じだったね。なら、大丈夫か。


「出来た奴は五本ずつアイテムボックスに入れたらいいよ」

「熱々の状態で保管するの?」

「そう。揚げ物は冷めたら美味しくないしね。後、出来る限り低い位置で入れるといいから」

「頑張る」


 調が串カツを作っている間に野菜炒めとポテトサラダを作る。ついでに何個かは串に刺して調に渡しておく。野菜炒めが出来たらじゃがいもをお湯に入れて茹でる。調の方は沢山あるのでそのままやってもらう。次にコカトリスの卵と油、レモン、塩胡椒、辛子を使ってマヨネーズを作る。凄く面倒だけど作るしかない。油以外を全部ボールに入れて後はちまちまと油を足してかき混ぜて様子をみて、油を追加してかき混ぜる。ひたすらこれの繰り返し。人力では凄く大変だ。


「精霊さん、風の魔法でかき混ぜて」

『任せろー!』


 かき混ぜられるマヨネーズの元。高速で掻き回されたそれらは遠心力に従って飛び跳ねていく。


「ちょっ、ちょっと!?」

「ご、ごめん!」


 結果、僕と調はマヨネーズだらけになっちゃった。料理とかはアイテムボックスに入れてあるからそこまで被害は無かったのが救いだ。


「うぅ、べとべと」

「お風呂入ろう、お風呂」

「そうね。でも、先に作った方がいいかも」

「わかった」


 とりあえず、ボールを二個使って片方を蓋にして精霊さんにかき混ぜてもらう。コカトリスの卵は鶏の卵よりも遥かに大きいので一回で沢山作れる。味見をするととても美味しい。マヨネーズが完成したら容器に移し替える。マヨネーズが付着したままのボールで茹でて柔らかくしたじゃがいもの皮を剥いてボールに入れて潰していく。そこに辛味の無い甘味だけの玉ねぎの微塵切りを投入してマヨネーズと一緒に混ぜる。


「あ、忘れてた」

「どうしたの?」

「ゆで卵が要たんだ」

「この大きさのを茹でるの?」

「うん」


 大きな鍋がないので精霊さんにお願いして水球を作ってもらう。そこにコカトリスの卵を入れて熱して貰う。ゆで卵が出来たら殻を剥いて白身を微塵切りにしてポテトサラダに混ぜる。最後にレタスを引いた上に乗せて、その上から黄身を砕いてトッピング。これで野菜炒めとポテトサラダが完成。


「こっちも終わったよ」

「うん」


 串カツと炒飯が今日の晩御飯。統一性が無いけど気にしない。量が居るのだよ、量が。


「じゃあ、お風呂に行こうか」

「わかった。二人も起こす」


 それから嫌がるフランを無理矢理お風呂に連れ込んで綺麗に洗う。ワーウルフは本当にお風呂が嫌いみたいだ。でも、森の中を行ったんだらから我慢してもらおう。フランの次にユエを洗ってあげていると、調は自分で身体を洗った。


「時間短縮。早くご飯食べたい」

「そうだね。確かに僕一人で洗うと効率が悪い。皆で洗いっこしようか」

「そうですね。私が一番最初になってリン君は二人ですね」

「リン以外にぜってえ、洗わせねえ、です」

「じゃあ、リンはフランね。ユエは私とティナが持ち回りで洗うから、三人で交代交代ね」

「仕方ないですね」

「まあ、それでいいか。よーし、綺麗に洗っちゃうぞ!」


 お風呂が終われば楽しい食事タイムだ。まあ、ティナを待つので少し時間が掛かるのだけどね。その間はフランの毛づくろいを手伝う。ティナが戻ってきてから楽しい食事タイムに突入……する前にひなたを呼びに転移した。やっぱり、一人で食事は淋しいからね。こっちに連れてきたひなたはフランと睨み合った後、食事を行なってこっちに泊まっていった。







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