初めてのダンジョンアタック
この小説は戦闘をあまり期待しないでください。
あくまでテイマーがメインなので
僕達の新しい家を作る場所に到着すると、お母さんとお父さんは相談しだして地面に色々と書いていた。その日は僕達が料理したりしてお手伝いした。
次の日、僕達は暇なのでダンジョン探検に出掛けた。といっても最初はダンジョンの入口を僕達の出入りを自由に設定して封鎖する事からなんだけど。
「よし、封鎖完了。それじゃあアリス達と僕達のレベル上げに向かおうか。引率はヴェロニカさんです!」
「はい、よろしくお願いしますね~」
「ん」
「お願いします」
ユエは砦に買った背負い籠に毛布を引いて入ってもらっている。これを僕が背負って運ぶのだ。ちなみにアリス達も入っている。
「ダンジョンは罠がありますので気をつけましょう。トラップの解除が出来る人は……いませんよね」
「ん、大丈夫」
「ひなたちゃんが出来るんですか。それじゃあ大丈夫ですね。一応、ひなたちゃんはガー君に乗ってくださいね」
「ん」
「リン君はひなたちゃんの後ろで、最後尾をター君が守ってください。私が先頭を歩きます」
「「「は~い」」」
ダンジョンの入口は山に出来た大きな入口だった。中に入るとかなり広く、床や天井、壁は山肌になっていた。
「トーチ」
暗かった道がヴェロニカさんの魔法の光で照らされる。これで探索しやすくなったんだろう。僕達は全員が種族特性で暗視持ちなので意味はないのだけど。
「これで見えますね。光源の確保は大事ですよ」
「ん。暗視ある。みんな」
「っ!? ええ、そうでしょうね! 私だけですよ!」
「あははは」
「あ、あの、何か来てますけど」
通路の先に動く2メートルはある鉄製のものがこちらにやって来る。
「邪魔です」
ヴェロニカさんが手を振ると炎の塊が飛んでいって鉄を跡形も無く燃やし尽くした。どんな温度しているんだろうか、非常に怖い。
「ふぅー。さて、ここは怖いモンスターさん達が沢山いるので気を付けて行きましょう」
「ん、ヴェロニカの方が、怖い」
「何か?」
「なんでも、ない」
「では、トラップの探索と解除をお願いします」
「ん。精霊さん、よろ」
低級精霊達が駆けていって罠を探していく。
『ひゃーっ!?』
『刺さった~死ぬ~』
『抜けられるんじゃね?』
『脱出~』
死なないし、傷つかない精霊さんの数による強制探索はどんどん罠を発見していく。それを僕達がヴェロニカさんに教えて解除していく。次第に精霊さん達も解除の仕方を覚えて自ら解除していく。
「何でもありですね、精霊さん!」
「ん、便利」
「ズルっ子ですよね」
「代価はちゃんと払ってるんだけどね」
「ん。魔力いっぱい、あげてる」
極大魔力で増やした魔力を大量に差し出しているので、精霊さん達からしたら星を食べたおじさんみたいに無敵モードに近くなっている。精霊さん達自身も意欲的に協力してくれている。
『おっきいのくるよー』
「ん、何体?」
『いち、にい、ん~? いっぱい』
『いっぱ~い』
低級精霊はまだ数字は覚えられないようだ。そんな事よりも問題は通路の先の曲がり角からこちらに向かってくる鉄の塊だ。それらは腕をこちらに向けて――
「あっ、まずい」
「フレイムウォール」
――大量の礫を放ってくる。それらはヴェロニカさんが瞬時に展開した炎の壁によって遮断された。
「リン君、そういえば酸素ってちゃんと入ってきますか?」
「あっ、やばい」
ユエの言葉で設定してなかったので急いで設定する。
「う~ん。とりあず皆さんの実力アップの為に動けなくしちゃいますね」
「お願いします」
「はい、お願いされました」
炎の壁を出しながらヴェロニカさんが無数の炎の弾丸を放つ。それから少しして爆音が響いた後、攻撃が飛んでこなくなった。ヴェロニカさんが炎を消すと、残っていたのは手足と頭を完全に破壊されて動けなくなったゴーレムだけだった。
「はい。それではゴーレムが倒しにくい理由を説明しますね」
「「お願いします」」
「ん」
「答えはモンスターの心臓たる魔石、ゴーレムの場合は動力炉ですが、そちらが搭載されているのが一際頑丈に作られている胴体だからです。こんな状態でも死んでいません。なので動かなくしただけです。では、皆さん、これを倒してみましょう。物理攻撃はあんまり効きませんからね」
「ん。ダークアロー」
ひなたは闇魔法の初級攻撃魔法を使って何度も攻撃していく。
「あーじゃあ僕にはきついや」
「ユエちゃんはどうですか?」
「私も無理です」
「それじゃあ、装甲を剥がしちゃいますね。炎爪」
ヴェロニカさんは炎の爪を作り出して、それでゴーレムの胴体を解体していく。すると綺麗な宝石のような結晶体が嵌められた電子回路が出てきた。
「これが魔石です。どんなモンスターのものでも換金できます。ただ、値段は内包する魔力量が高くて小さい程金額が上がります。これだと銀貨5枚くらいですね」
銀貨が一万円だから五万円くらいかな。
「モンスターの魔石は高いんですね」
「いえいえ、ゴーレム系のは内包する魔力の魔力量が高いんです。それも魔力自体の純度も高いので便利なんです。まあ、取るのは難しいですし、戦闘が長引くと魔力自体が少なくなって使えなくなるんですけどね」
「なるほど。早く倒した方がいいんだね」
「そうです。攻撃手段を無くすという方法もありですが、火力が高くないとできません。今回は資金稼ぎではないので別にいいですけどね。それにゴーレムは持ち帰れれば全部がお金になりますから」
「そうですよね。全身金属ですし」
ゴーレムは宝の山という訳だね。幸い、僕はアイテムボックスもあるからどうとでもなるね。
「それとモンスターの魔石ですが、こちらは動力以外にも使い道があります。それは私達の強化に使えるという事です。魔石を破壊して体内に魔力を取り込んでスキルの成長を促したり、新たなスキルを得たりできます」
「新たなスキルっ!?」
「凄いですね」
「ん、期待」
「まあ、スキルは滅多に手に入らないですけどね。あと、魔石は食べられます」
「「「えっ!?」」」
「ただ、非常に不味いです。食べると吸収効率は高くなる上に魔力も回復出来るんで便利なんですけどね」
魔石を食べるって凄いね。
「不味い?」
「はい、不味いです。ただ、純度が高く大量の魔力が入っている魔石は美味しいらしいです。貴族の方に人気ですね。楽して強くなれますから」
「納得だね」
「はい。食べるだけで強くなるならお金を出しますよね」
「そういう事です。では、そろそろレベル上げに入りましょう。ユエちゃん、兎さん達を離してください。リン君はこの魔石を直に食べるように命令してください」
「ん、生の方がいい?」
「ええ、いいですね」
「アリス、食べて」
二匹のアリスは僕の指示に従ってゴーレムの腹部にある魔石にかぶりつく。その間にヴェロニカさんが次々と胴体を開いていく。
「リン君はこの魔石を破壊してください。ユエちゃんは……食べます?」
「そ、そうですよね……食べてみます」
「ユエが食べるなら先に僕が食べるよ」
「リン君……」
「それじゃあお二人でどうぞ」
僕達は魔石を食べてみる。すると何とも言えない味が広がった。ステータスを確認してみる。
名前:リン
種族:エルフ/ドワーフ
肉体:肉体強化Lv.3、肉体再生Lv.1、状態異常耐性Lv.1、頑強Lv.4(new)
魔法:精霊魔法Lv.3、空間魔法Lv.3
技術:
特殊:エクストラテイミングLv.2、極大魔力Lv.1、千里眼Lv.1、経験値10万倍(PT)、成長限界突破(PT)、精神障壁Lv.1、強運Lv.1
名前:ユエ
種族:吸血鬼/人間
肉体:肉体強化Lv.1、臓器再生Lv.3、状態異常耐性Lv.1、頑強Lv.4(new)
魔法:吸血魔法Lv.1、時間魔法Lv.1
技術:
特殊:血の従者
状態:手足欠損、隷属
[頑強Lv.1を習得しました。頑強Lv.1は頑強Lv.4に上昇しました]
[ユエは頑強Lv.1を習得しました。頑強Lv.1は頑強Lv.4に上昇しました]
魔石も10万倍が適応されたようだ。
「スキルを手に入れたよ」
「珍しいですね。適正が無ければいくらやっても手に入らないんですけど……」
適正か。僕がドワーフのハーフで、ユエがダンピールだから手に入ったのかも知れない。
「きゅい」「きゅう」
食べ終わったみたいで、2体も確認してみる。
名前:ホワイト・アリス
種族:ホーンラビット(変異個体)
肉体:跳躍Lv.4(up)
魔法:
技術:
特殊:貧弱Lv.5
状態:隷属
名前:ブラック・アリス
種族:ホーンラビット(変異個体)
肉体:跳躍Lv.4(up)
魔法:
技術:
特殊:貧弱Lv.5
状態:隷属
跳躍のスキルレベルが1から4まで一気に上がった。残念ながらスキルは手に入っていない。貧弱は力が弱い事を意味している。それがレベル5。どれだけ弱くなってるのやら。
「さて、それじゃあどんどん狩っていきましょうか。間引かないと大変ですからね」
「「「はい」」」
やって来るゴーレムを殲滅し、魔石を食べさせながら進んでいく。僕もユエも食べたくないし、ひなたも嫌がったのでアリス達にひたすら与えてみた。すると15個目で頑強を習得した。跳躍は6まで上がった。成長限界突破もあって恐ろしい成長だよね。やっぱり、ブリーダーになった方がいい気がするや。
「むっ、変わった」
「そうだね」
床が地面から整備された鉄製の床になった。いや、床だけじゃない。壁や天井も人工物になった。更に進むと工場みたいな場所に出た。目の前には通路があり、左右は空洞となっており、下を見るとタンクのような奴が並んでいる。
「侵入者を確認。これより排除します」
通路の先から声が聞こえ、そちらを見ると僕達と同じサイズの人型をした機械の人形が居た。その腕は剣が握られ、肩にはバルカンみたいなのが備え付けられている。
「キリングドールですか、厄介ですね」
「キリングドール?」
「ええ。殺す事に特化した存在です。ゴーレムより上の存在です。さて、どう戦いましょうか」
「ん、任せる」
「ひなたちゃんがですか?」
「そう。ユエお姉ちゃんにプレゼントする」
「私に?」
「ああ、腕と足か。それはいいかもね。でも、大丈夫?」
「任せる。得意分野」
そう言って、ガー君を前に行かせる。キリングドールもこちらに凄い速さで走って近付き、飛び上がって切り掛って来る。それに対してひなたは腕を前に突き出す。
「お座り。待機」
「っ!?」
空中で急に墜落して床に座るキリングドール。それから動かそうと身体を必死に揺すっていく。
「エラー、エラー。外部からの干渉を確認。駆除を開始……」
「ん、無駄。押し流す」
本当に膨大な量の魔力の奔流が濁流となってキリングドールへと流れ込んでいく。次第にキリングドールが光出して完全に動かなくなった。
「支配、完了」
「えっと……」
「ユエは知らなかったけ? ひなたは人形魔法を使うんだ」
「なるほど。魔力にものを言わせてコントロールをダンジョンから奪ったんですね」
「ん、正解。相性いい」
ダンジョンからしたら酷い話だね。しかし、これでユエにも手足をプレゼントできる。
「ありがとうございます、ひなたちゃん」
「ん、気にしない。それに、まだ改造、いる」
「それでもです」
「どうせならもっと奥へ行きますか?」
「キリングドールの魔石も欲しいし、進もうか」
「では、行きましょう」
ヴェロニカさんを先頭に進んでいく。奥に行くほどキリングドールの数は増えていく。それにゴーレム……アイアンゴーレムもより機械っぽくなってロボットみたいな感じになってきた。
そして、一際大きい場所にやって来た。そこには多数のキリングドールにゴーレムに加えて今まで見た事がなかったものが居た。
「あ、何か変なのが出てきましたね」
「あれは……」
「ティガー戦車、ですね」
「ん」
目の前には戦車が居たのだ。まあ、大丈夫だろう。
「行け」
ひなたが言うと大量に支配下に置いたキリングドール達が一斉に進んでいく。キリングドール対キリングドールの戦いだ。
「とりあえず、私はあの大きいのを黙らせましょうか」
飛んでくる戦車の魔法の砲撃を撃ち落としながら、ヴェロニカさんはなんでもないかのように言う。
「飽和状態で焦りましたが、まだ初級の域を出ていませんね。よかったよかった」
降り注ぐ大量の炎弾に戦車も強制的に沈黙させられる。僕のやる事、全然ないね。
「終わった。お兄ちゃん、アイテムボックス」
「わかったよ」
うん、僕にもあった。荷物運びというやる事が。
「まだ奥がありますが、帰りましょうか」
「了解」
「そうですね」
「ん、帰る」
疲れた事もあるのでさっさと帰る事にした。あんまりレベルは上がらなかったけど、頑強とかは手に入れたしよしとしよう。
ダンジョンから出ると外の景色は一変していた。まず、目に入ったのは草原の真ん中に鎮座する大樹。その横に融合するように存在するドイツの有名なお城が出来ていた。
「なんですかこれぇえええぇぇぇっ!!」
「やり過ぎでしょ……」
「お城、お城♪」
「あははは、凄いですね」
近付いていくと倒れている2人が居た。
「ちょっ、お母さん、お父さん!?」
「あー戻ったか」
「ごめん、魔力切れなのよ。未完成だから……」
「後は任せたぞ、息子よ」
「いやいやいやいや」
「何、魔力を与えれば勝手にやってくれる」
「アルちゃんに設計図も渡してあるからね」
「ちょっと!?」
「「後よろしく」」
そう言って眠ってしまった2人。僕は大きなお城と木を見上げ、ひなた達を見る。ヴェロニカさんは固まってしまっている。ユエはお城と大樹を見て瞳を輝かせている。ひなたは――既に魔力を送っていた。
「もう、やるしかないか」
僕もひなたと一緒に大量の魔力を入れて完成を目指している精霊さん達を応援する。最終的に片方が半径1km、合わせて直径2Kmの大樹と融合したお城が作られた。もちろん、材料が足りなかったのでアイテムボックスから今日手に入れた物を精霊さんに提供した。木と鉄で出来た城は立派であり、沢山の精霊さんで溢れていた。




