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降臨

「それでは失礼致します」


百代がそう言って教会の奥にある女神像に頭を下げる。


すると、彼女の身体が光を放ち、巫女衣装が大きく変わっていた。


「そ、その衣装は一体?」


「こちらは水干と呼ばれる白拍子の衣装です。

白拍子とは……舞を芸事に旅する歩き巫女の一種だと思ってくだされば良いかと」


「なるほど。

男装に見えるのは、女性の一人歩きの危険防止のためもあるのかな?」


「仰るとおりです。

私はこちらの服の方が舞に適しているので、神に舞を奉納する時に使わせてもらっています」


そうして百代は舞い始める。


酒場で踊るような激しいダンスでは無い。


しかし、ゆったりと動く所作には洗練されたものがあり、頭から足の先まで全く目が離せない。


こうして神父とカイト、更には何事かと集まって来たシスター達までもが目を奪われているうちに、神へと捧げる舞は終わりを告げた。


ぴたりと動きを止め、女神像へ。


そして、見物していた観客へと頭を下げる百代。


その瞬間に全員が拍手を行った。


パチパチと響く音……しかし、百代が起こした奇跡はここで終わらなかったのだ。


突然、女神像が光り始めたかと思うとその光が百代の中へと吸い込まれていく。


「ただいま、こちらの土地を見守っていらっしゃる神が降臨されました。

お言葉を伝えたいそうですが宜しいでしょうか?」


「え、それは本当なのでしょうか?」


「宜しいでしょうか?」


「は、はい!お願いします!」


新婦の疑問には答えず、念を押すように語る百代の迫力に気押されてしまう神父。


しかし、了承した彼の言葉をきっかけにして、普段は開いているのかも分からない程に細い百代の瞳が開けられた。


「この地で私を信仰する者達よ。

その行いに私は深く感謝しております」


そう語る百代の雰囲気は普段のおっとりとしたものでは無かった。


慈愛に満ち溢れ、神々しさを感じるオーラを身に纏っていた。


「は、あ、ありがたき幸せです!!」


そのオーラに思わず神父が平伏してしまったのも仕方のない事であろう。


神父だけではない……その隣にいたカイトも。


礼拝に来てから物珍しさで来ていた人達。


野次馬に来ていたシスター。


その全てがただ一人を除いて地に頭をつけて百代に平伏していたのだった。




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