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第4話 都で商会を立ち上げる

「さて……ついに都に戻るわね」

綾乃は馬車の窓から、王都の高い城壁と賑やかな街並みを眺めた。

「農村も鉱山も信用を得た……次はこの信用を形にする段階よ」


カナが帳面を手に、準備物を確認する。

「お嬢様、商会設立の手続きは大丈夫でしょうか?」

「ええ、都の商業組合と交渉して許可を取るだけ。私たちの信用を見せれば問題ないはず」


馬車が都の広場に着くと、人々の喧騒が耳に飛び込む。

「……久しぶりの人混みだわ」

ミサが肩越しに呟く。

「でも、ここで力を見せれば商会は確立できるな」


まずは商業組合の事務所へ向かう。

組合の長老が帳面を覗き込み、眉をひそめる。

「……お嬢様、この計画は興味深いが、都の既存商人たちは黙っていないぞ」

綾乃はにっこりと笑う。

「分かっています。でも、互いに利益が出る方法であれば争う必要はありません」


長老はしばらく考えた後、うなずく。

「よろしい。小さな商会として、まずは認可しよう」

綾乃は喜びながらも、心の中で次の問題を思案する。

「既存の利権を持つ貴族や教会……こちらも慎重に動かさないと」


認可を受けた綾乃は、商会の拠点となる建物を手配する。

「ここを商会本部にするわ」

小さな倉庫を改装した場所に、帳面や銀貨、取引ルートの資料を並べる。

「さあ、私たちの商会、始動よ」


その夜、初めての会議が開かれる。

ミサは作戦担当、カナは交渉補助として席につく。

「今日から私たちは、ただの令嬢じゃない。商才を使い、信用を武器に動く」

ミサが笑いながら答える。

「戦わずして動かす……面白いな」


翌日、王都の既存商人や貴族たちが動きを察知し、会議室に訪れる。

「お嬢様、都の利権者が来ています」

綾乃は帳面を手に微笑む。

「歓迎します。私たちの方法で、皆が利益を得られると思うのですが」


貴族の一人が眉をひそめる。

「若造が商会を立ち上げる……都の利権を乱すつもりか?」

綾乃は冷静に答える。

「乱すつもりはありません。ただ、合理的な取引を行うだけです」


教会の代表も口を挟む。

「教会の市場権益もある……利益を守るため、取引条件を提示してもらおう」

綾乃は帳面を開き、都内の価格・供給量・需要予測を示す。

「公平な条件であれば、争う必要はありません」

数字を見た貴族と教会の代表は、やや驚いた様子で頷く。


ミサが傍らで荷物を整理しつつ小声で呟く。

「……やっぱり、この子はただの令嬢じゃないな」

カナも帳面を覗き込み、微笑む。

「信用と数字で、戦わずに相手を動かす……すごいです」


数日後、商会は正式に認可され、都内での取引を開始。

「小麦と鉄鉱石の流通ルートを確保。次は魔具や希少鉱石を扱う段階ね」

綾乃は帳面を見つめ、将来の計画を整理する。


その夜、商会本部に一通の手紙が届く。

封筒には見慣れない紋章が押されていた。

「……王家から?」

開封すると、中には警告と共に交易の拡大に注意する文面が書かれていた。

「どうやら、私たちの動きは王都でも注目され始めたみたいね」

ミサが肩をすくめる。

「面倒なことになりそうだな」

綾乃は微笑み、帳面にペンを走らせる。

「でも、私たちは戦わずして勝つ……信用と取引で、この世界を動かすのよ」


馬車の外、王都の夜景がきらめく。

銀貨一枚から始まった挑戦は、商会設立という形となり、都の既得権益を揺さぶり始める──。

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