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52.それぞれのやるべきこと(2)

 王城の門をくぐる前に、デーセオは身分証明書のような金の首飾りを見せる。これは、彼がこの国の騎士団の竜騎士部隊の部隊長である証。むしろ、この門番たちはデーセオとの顔見知りでもあるのだが、そうやった証明書を見せるのは儀式のようなものだ。


「デーセオ、様、でしたか」

 門番の男の一人が口にする。

「その、お変わりになられて、それが無ければ気付きませんでした」


「そうか? 今日は陛下に呼び出されてきたのだが」

 先日、不本意ながら届いた国王からの書簡も見せる。

「間違いなく、陛下からのものですね。いやはや、デーセオ様、一体何があったのですか?」


「何がだ」


「その、お顔です。竜騎士部隊が隣国とのいざこざでご活躍されたのはお聞きしておりましたし、まあ、そのときに私も近くにおりましたが。あれでデーセオ様は負傷されましたよね」


 負傷。つまり呪いにかけられた、ということ。この騎士団では有名な話。


「ああ、そうだ」

 それは事実であるため、否定するつもりはない。


「ですが、その、お怪我が治っているといいますか。っていうか、あれ。治るもんなんですか?」


「聖女様がいらっしゃるだろう。その話を教えてくれたのは、お前たち王都の騎士だろうがっ」


「そうでしたか。さすが聖女様でいらっしゃいます」


 あの隣国との一戦は、デーセオ率いる竜騎士部隊だけでなく、王都からも騎士を派遣してもらっていた。そのときに、デーセオの呪いについては幾人かの王都の騎士達にも目撃され、もしかしたらデーセオは竜騎士の部隊長を退くかもしれないという噂も駆け巡ったとか。


「どうぞどうぞ」

 顔見知りということもあったのだろう。門番を務める騎士に軽くそう流され、王城内へと足を踏み入れる。そこで国王陛下への謁見の件を伝えれば、別室へと案内される。デーセオが今日、王城に行くことは事前に伝えてあったはず。


「ですが、陛下もがっかりされるのでは?」

 と、口を開いたのはティメル。

「何が、だ」


「デーセオ様の結婚の報告にも関わらず、奥様であるレーニス様がいらっしゃらないからです」


「ふん。報告に来いとしか書いてないだろう。妻を連れてこいとは、どこにも書かれていなかっただろう」


「まあ、そうですが」

 だが相手はあの国王陛下だ。レーニスを連れてこなかったデーセオに対して、何かしら小言を言うはず。


「準備が整いましたので」

 と言う声に案内され、二人は謁見の間へと向かった。

 デーセオは国王とは顔馴染である。むしろ軽口を叩くくらいの仲である。だが、一応、形式はそれなりに守る。堅苦しい決まりきった文言が、国王就きの事務官から述べられ、「表をあげよ」という言葉を待って、二人は顔をあげた。


「久しいな、デーセオ。そなたとはこのような場所で堅苦しく語りたいわけではないからな。部屋を変える」

 という国王の一言によって、恭しい空気は終了した。

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