バレンタイン短編 part.2
短いです
………酷い。
「ダメよ、女の子なんだからお菓子くらい作れないと!」
おばさんさっきと言ってることなんか違う。
私だって作れたら嬉しい。楽しい。食べたい。でも料理は本当に駄目。作れない。いつもこんな感じになる。だからルーナフェルト様に作ったら駄目、って言われるわけだし。
「時間ある?今からおばさんと作りましょうか。大丈夫よ、適切な分量と材料さえ守れば誰だってできるんだから」
「ルーナフェルト様も同じこと言ってました」
誰だってできることを私はできないということか。悲しい。
「ダメよ!ちゃんと計って!きっちり、よ!お菓子は分量命なんだから!」
何度目かのその言葉に私は返事をする。
これも美味しいお菓子をちゃんと作るため。私にだってできるんだ、ってルーナフェルト様に認めてもらうため。
「まったく。ちょっと目を離したら何か足そうとするんだから。そんなんじゃできないじゃないの」
「いいと思ってやったことが全てダメ……おかしいです」
「お嬢ちゃんがおかしいの。なんでお菓子に肉が必要なの?」
だってお肉美味しいし……。刻んで混ぜたらいいんじゃないかな、って。甘いタレかけたお肉料理あるんだから不味いってことはないはず。
「……お肉の砂糖漬け、みたいな」
「それはお菓子じゃない。全く。変なことはしなくていいの。普通のものができるようになってから何か足すようにしなさい」
お菓子作りは難しいみたい。
「いい匂いです。もう少しでできますね」
「ええ。お嬢ちゃんが変なことするからちょっと時間かかったけどねぇ。最初のよりは全然マシよ」
最初のと比べたら駄目。あれは不味かった。
焼きあがったら、後は出すだけ。飾りは無し、絶対駄目、って言われた。
おばさんに見てもらいながらやったけど、おばさんが全部やったわけじゃないからこれは私が作ったって言っていいよね。ルーナフェルト様に食べてもらおう。
「さ、出していいよ。いい感じに出来たわね!」
なかなか美味しそうだと思う。匂いからして。早く食べたい。
「こんなにまともに出来たのは初めてです。すごい、私でもできた」
「当前よ!ちゃんとやれば誰でもできる、っておばさん言ったもの」
本当だった。ちゃんと守ってやれば誰でもできた。私でも。
美味しいからってお菓子に変なもの入れたら駄目。当たり前か。見たことないもんね、お肉入りのお菓子。でも私が新しく広めればいいんじゃないかな。いけるかも。
「ありがとうございました。おばさんにもあげます」
「ありがとう」
出来たお菓子の残りとルーナフェルト様の作ったお菓子を持って、台所を後にする。おばさんはこれから夕飯準備って言ってた。今日は昨日からタレに漬けてるお肉だって。
手元からいい匂いがする。部屋に戻って早く食べよう。今食べたら夜ご飯食べられなくなるかな?
あ、そうだ。ルーナフェルト様が戻ってきたら、一緒に食べることにしよう。
ルーナフェルト様、驚いてくれるかな?美味しい、って言ってくれるかな?楽しみだな。
「待ってシュティル、今食べてるそれ僕が作ったのじゃないよね、食べて大丈夫なやつだよね?」
「私が作りまし──ちょっと何するんですか返してください」
「捨てて!お腹空いたなら何か買ってくるから!吐き出して!!」




