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姉(←大魔王)、妹(←超魔王)、長男(←オカン)  作者: くまのき
第十章 ヒーロー、星屑、詩、
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72話 『妹がカカシの真意を知る事は無い』

「カカシ、ですか」

「かかしー」

「か、案山子カカシだって……!?」


 莉羅からテレパシーで送られた映像を観て、テルミ、鈴、根元は三者三様の表情を浮かべた。


 まず三人は、植物栽培という意外さに驚いた。

 次に鈴と根元の二人は、少女がテレパシーを使ってきた事に驚いた。

 更に三人は、映像の主役がまさかの無機物、カカシである事に驚いた。

 そして最後にテルミは一人、カカシが超魔王ライアクの名付け親であった事に驚いた。


「カカシさんが……何を、言いたかったのか……おじさんに、直接会えば……何か分かる、かも……って、思ったんだ……けど」


 莉羅は兄と手を繋いだまま、根元の顔を見上げて言った。

 超魔王は詩人のカカシを見て(・・)いたが、会話は出来なかった。

 カカシの『力』と実際に触れ合うのも、これが初めて。

 もしかすると『力』の中に、カカシの意思が残留している可能性もあると考えていたのだが……


「……やっぱり、分からない……ね」


 もの悲しげな表情で、そう小さく呟いた。

 テルミは妹の心情について詳しく分からないながらも、おそらく落胆しているのだろうと察し、慰めるように髪を撫でる。


「じゃあ、帰る……ね」

「えっ、帰るのですか莉羅?」

「うん……にーちゃんも、帰ろ……関わると、危ないっぽいし……りらはこの後、まだ……チャカ子ちゃんちで、やる事ある……し」


 莉羅はスターダスト・バトルには興味がないらしく、兄の手を引っ張り帰路につこうとした。

 鈴も慌てて「あーっ待ってー」とテルミの服を掴み、莉羅に睨まれる。

 しかし根元は、


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 と、莉羅の肩を掴み引き留めた。

 莉羅は露骨に嫌な顔をし、「なーにー……」との返事。


きみ、ええと……」

「りらは……莉羅……茉莉花(ジャスミン)の莉に……羅生門の羅……芥川……藪の中……」

「莉羅ちゃん、さっきの頭に浮かんだ映像は……君は一体……い、いやそれについて今はあえて聞かずにおこう」


 根元はまだ少々混乱しており、言葉が支離滅裂になりかけている。


「俺の能力……ルートと言うのか。その出自を不思議な力で教えてくれたので、俺は君を信じてみようと思う。ええと、それでだな。何が言いたいのかと言うと、つまりは、さっき君が言ってただろう」


 自身の眉間に指を当て、考えを纏めながら尋ねた。


「俺が他人に植え付けた超能力を、消すことが出来る……と」

「あーそうそう、それー。バリア消せるのー?」


 根元と鈴は、二人同時に莉羅の肩を掴んだ。

 莉羅は少しだけ鬱陶しそうな表情になりつつ、頷く。


「一番簡単な、方法は……おじさんが、死ぬ……ことだよ」

「死……な、なるほど……」


 根元は納得しながらも、顔が引きつった。


「もっと穏便な方法はないのですか莉羅」

「ある……よー」


 兄の問いに、莉羅は軽く答えた。


「おじさんを、通じて……超能力者達の体内に、溜まっている……エネルギーを……宇宙に、返す……」

「具体的に、どうやって返すのだい?」

「……それは、言語化が難しい……けど」


 莉羅は無表情のままだが、どことなく困った顔になった。


「そもそも……超能力を、消す必要……あるの?」


 そう少女が首を傾げ、三人は言葉に詰まった。


「それはー……えっとーなんでだっけー輝実さまー?」

「ええっ……蕪名かぶな先輩が私生活で困る……いえ、困りはしません……よね?」

「うーん。多分困んないねー」


 テルミと鈴は少々間の抜けた会話をする。

 隣で根元は目を閉じ、莉羅の言葉の意味、そして自分がやるべき事が何かを考えていた。


「……ルートは……生命力を、高める力……おじさんに、ルートをかけられた人達は……自分自身の、生命力を高め……ちょっとだけ、健康になって……ついでに、自分に都合の良い超能力を……得る」

「へー。私健康なんだねー」


 鈴は自分の体をぺたぺたと触って確認した。

 特に何を確認出来たわけでも無かったが、とりあえず大きな胸が波打つ。


「超能力はついでか。そうだな、カカシの目的はあくまでもキャベツ栽培だったから、そうなるか」

「それに……ルートで得た、超能力は……ハッキリ言って、弱い……から」


 莉羅の言葉に、根元はレンの件を思い出し「うん」と苦い顔で頷く。

 人工能力者達は『本物の能力』には敵わない。圧倒的にレベルが違ったのだ。


「例えば……そこの……」


 莉羅は、鈴の顔をじっと見た。


「……蕪名鈴……能力は、特殊防御フィールド発生……バリア……」

「おー正解でーす。見てたのー?」

「んーん。見て、ない……よ」


 見ていないが、鈴に宿る力を感じ取ったのである。


「……バリア強度、は……護身用のハンドガンなら、防げる……だけど、ちゃんとした銃や……プロレスラーが、金属バットで全力スイング、したら……すぐに、破れる……程度」

「えー。私プロレスラーには勝てないのかー」


 勝つつもりなど毛頭なかったのだが、なんとなくがっかりする鈴。


「……基本的に……人類の、英知より……弱い。悪用しようと、思えば……出来るレベル……だけど、ね」

「そ、それだよ。俺が超能力を無かった事にしたいのは、まさにその悪用を恐れてだ……と思う。今更俺がそんな事を思うのはおかしいかもしれんが」

「ふーん……」


 根元はもう一度目を閉じ、頭の中を整理する。

 自分がやるべき事、やりたい事。

 目の前の少女のおかげで、贖罪の方法が見えてきた気がする。


「特に……既に能力を悪用している二人。KKことカサバ・コナーと、チョコレートガールこと黒井千代(ちよ)。この二人に関しては、俺が責任をもって超能力を消すべきなのだろう……それで、多くの死んでいった者達への償いになるとは思わないが……」


 そう言って拳を握りしめ、空を見上げた。


 テルミはそんな根元を見て母性をくすぐられ、応援したい気持ちに駆られてしまった。

 それは少年の良い所でもあり、悪い所……というか同級生の芹沢が暴走した所以ゆえんでもある。


「莉羅、どうにか出来ないのでしょうか。僕も手伝いますので、アドバイスをください」


 お人好しな兄に頼まれ、妹は軽く溜息をつく。

 こうなるともう、断れないのである。


「……おじさんが、もう一度、超能力者に触って……その間に、りらが……高次元エネルギーのポンプ抽出および放出手法に基づく理論に沿った摘出……ええと、わかりやすく言うと……なんやかんややれば……超能力を、消せる……よ」


 根元は目を見開いた。

 自分の半分にも満たない年齢の小学生女子に、恥も外聞も無く、大きく深く頭を下げる。


「莉羅ちゃん頼む。カサバ・コナーと黒井千代の超能力を消」

「おっけー……」


 全て聞く前に承知する莉羅。早く終わらせたいのである。

 根元は再び頭を下げる。


「特に黒井千代……チョコレートガールは野放しに出来ない。彼女の能力は何かおかしいんだよ。他に比べて強すぎる。もしかしたらレンと同じく、最初から『本物』なのかもしれん……そうなら俺が行ってもどうしようもないが……」

「……元々、能力者じゃ……なかったと、しても……もし超能力の、素質があったら……ルートが、それを更に、高めて引き出す……かも、しれない……けど」

「なるほど……だがどちらにせよ、俺は彼女を止める責任があるのだ」


 面倒臭がりな根元の目に、人生で初めて信念の光が灯り始めた。

 一方、このやり取りを聞いていた鈴が、小声でテルミに尋ねる。


「妹さんはー、私や……いや私は違うかー……根元のおじさんやカラテガールみたいに、本物の特別な力を持ってるんですねー?」


 鈴の言葉が耳に届き、莉羅の体がビクリと震えた。

 そんな妹の小さな異変に、手を繋いでいた兄はすぐに気付く。


 テルミは、莉羅が超魔王の記憶を持つことを初めてカミングアウトした日を思い出した。

 その時妹は、「嫌われたくないから、今まで言い出せなかった」と言っていたが……


 テルミは妹の手を力強く握り、笑顔で鈴の問いかけに答える。


「ええ。僕の自慢の、そして大切な妹ですよ」

「そっかー。やーさすが桜さまの妹さまですねー」


 うんうんと首を振り納得した表情の鈴。

 莉羅は、片手で繋がっていた兄の手を、両手で握り直し、


「……くふふ」


 嬉しそうに笑ったのであった。




 ◇




「オ~ウ。ホントに……え~……そうダ、カチンコチン! ジャパニーズ、カチンコチンだヨ! キルボーイ!」


 カサバ・コナーがヒーローの体をノックするように叩くと、冷たい金属音がした。


「ふっ、そうだろう。僕は体を自在に固くする……フルメタルキルアーミー(ごう)(がい)ィィン!」


 そんな中二病を患っているヒーローかつテルミの同級生である芹沢参人(さんと)

 カサバと芹沢は、特に激しくはない戦いを繰り広げていた。


「僕を倒したいのならば……ふっ。例えば、気功で体内を攻撃する……そんな特殊な方法を取る以外にないだろうな。ちなみに僕が昔通っていた宇宙気功連合塾は、インチキだったよ」

「キコウ! オゥ、ニンジュツだね!」

「忍術では無いが?」


 芹沢は一見余裕そうな表情をキープしているが、本心は早く逃げ出したくて堪らなかった。

 今は硬質化によりダメージは無いが……今会話している外国人は、テロリストで死刑囚。怖い。

 他のヒーローが倒してくれるまで、接触しないようにしておこうと考えていた悪役(ヴィラン)である。


 だが逃げたくても、全身を完全に鋼鉄化している今は動く事さえ出来ない。

 かと言って足だけ能力解除したら、その瞬間にナイフで刺されてしまうだろう。


「ボクはカラーテは習ったケド、ニンジュツは習ってないんダヨ」

「ふん、それは残念だったな。忍術があっても意味ないけどな」


 芹沢は思った。「良いから諦めて早く帰ってくれよ!」と。

 しかしカサバは楽しそうに、鉄の体を殴ったりナイフを突き立てたりして遊んでいる。


「でもサ。ニンジュツを使えなくテモ、似たような事は出来るヨ」

「ふん、何を出来るんだ」


 そこで芹沢はふと思い出した。

 このカサバ・コナーという男の持つ超能力について、そう言えば何も知らない。


 カサバが戦っている場面を撮った動画は何度か見たが、能力が良く分からない……というか、使っているようには見えなかったのだ。


「忍術に似ているだと? お前は分身の術でも……」


 そしてその言葉を最後にして、芹沢は鼻や耳から血を噴き出し、喋らなくなった。


「キルボーイ、生きてるカイ?」

「…………」

「オッオ~ウ」


 生きてはいない。

 体の内部で、脳と心臓が潰れたのだから。

 テルミと鈴に啖呵を切っていた芹沢は、こうしてあっけなく死んでしまった。


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