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姉(←大魔王)、妹(←超魔王)、長男(←オカン)  作者: くまのき
第六章 オカマ、ウサギ、宇宙、
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34話 『妹とウサギの呪い』と-110話

「大魔王……!?」


 テルミは眉をひそめた。



 莉羅からテレパシーで送られて来た、ロンギゼタの記()映像。

 そこには見知った顔が二つも出てきた。


 まず一人目は、ロンギゼタを作った博士。

 彼は、幸運の女神イディア・オルト・ハミの記憶映像でも観た。

 イディアの宇宙が滅亡するきっかけを、知らず知らずのうちに作った男。



 そして二人目。


 大魔王。


 あの大男も観たことがある。

 桜が持つ強大な超能力……その、元々の主。




「ウサちゃんがロボットぉん? 別の宇宙ぅん? 大魔王ぉん!? もう、いきなり過ぎて意味が分かんないわよぁおん、リラリラぁん!」


 昏い意識の闇の中。

 ロンギゼタ601は、自分とウサギの過去を見せられ混乱している。

 その間も草一の魂は『燃料』として、ゆっくり吸収されている。


「大魔王の、プレゼント……つまり、ロンギゼタにかけた呪いは……二つ」


 莉羅は、ロンギゼタの意識に介入するため両目を閉じたまま、補足説明を始めた。



「一つ目の呪い。摂取エネルギーの、タイプ変更……」


 本来ロンギゼタの燃料とは、『生物の(エネルギー)』だった。

 だが呪いにより、純粋な魂を補給出来なくなる。


「……『魂』と『大魔王の力』を馴染ませた、混合燃料……それしか、受け付けなくなった……。それに伴い、ロンに、新たな能力も植え付けられた……寄生主に、『大魔王の力』を供給する能力……大幅に劣化した力だけど……」


 その説明を聞きテルミは得心した。

 草一の能力を見た時に「姉に似ている」と感じたが、似ているどころかまさに同じ物だったのだ。


 寄生主に強大な力を与え暴れさせ、魂と力が馴染んだ所で、やっと『燃料補給』が可能になる。


 このような回りくどい方法を取る理由は、大魔王の奴隷人形が「その方が楽しい」と思ったから。ただそれだけ。



「そして、二つ目の呪い……寄生方法の、制限……」


 本来ロンギゼタは寄生主と友情や信頼をはぐくみ、同意の上で魂の『一部』を貰っていた。

 だが呪いにより、そのプロセスは取れなくなった。


「一度寄生したら、魂を『全て』食べるまで、離れられなくなる……そして……食べ終わる前に、寄生主が死ぬと……ロンギゼタも一緒に、死ぬ」

「し、死んじゃうのぉん!? ワタシ……いや、ワタシとウサちゃんがぁん!?」

「うん……」


 莉羅は、白ウサギを撫でながら頷いた。

 ロンギゼタ601は驚いているが、死ぬ事には薄々気付いていた。

 誰に教えられたわけでも無いが、「草一の魂を全て喰らわないといけない」と感じていたのだ。


「このせいで、ロンは……寄生主を、殺さざる得なくなった……の」


 当然、そこに友情や信頼、同意などが介入する余地は無くなった。

 寄生したら最後、無理矢理にでも魂を喰らい尽くさないといけない。


「……でもぉん。それじゃあ……でもぉ……」


 ロンギゼタ601はショックを隠し切れないようだ。

 莉羅は構わず、説明を続けた。



「更に……大魔王の想定外である、副作用が……二つ」


 莉羅は二本の指を立てた。

 内一本を、すぐに折りたたむ。


「一つ目の副作用。人格変更の際……過去の記憶が、消える……」


 ロンギゼタ109までは、生まれた時からの記憶をずっと持ち続けていたのだ。

 しかし大魔王と遭い、その全てを失った。


 それだけでは無い。

 記憶消去を何百回も繰り返すうちに、いまや、別宇宙へ移動する方法まで忘れてしまっている。



「そして……二つ目の副作用。それは……」


 莉羅は白ウサギからロンギゼタ601に目線を移し、指を差した。


「あなた自身の……存在」

「ワタシぃん!?」


 驚く大柄なオカマに対し、莉羅は淡々と言葉を続ける。


「ロンにとって、一個丸ごとの魂は過剰……。余分なエネルギーは、行き場を求め……ロンの傍で、人格を形成した……それが、ロンギゼタ110以降の、あなた」

「わ、ワタシが余りモノだって言うのぉん……!?」

「……残念ながら……そうとも、言える……ね」


 そう言って莉羅は、再び白ウサギに顔を向ける。


「そして代わりに……ロンが、無個性になってしまった……」


 ウサギのロンは、黙って莉羅を見つめている。

 ロンギゼタ601も絶句し、同様に莉羅を見ている。


「記憶も消え、人格も消え、宇宙間転移能力も消え……ロンは、目的を見失った……」


 莉羅は話を元に戻す。

 元々は、ロンギゼタの『生きる目的』について語っていたのだ。


「……ロンの本来の目的……それは……別宇宙を漂い、博士のおじさんに観測され続ける事……。あのおじさんが、別宇宙に転移する研究を……終わらせるまで……」



 その妹の言葉を聞き、テルミは考えた。


「終わらせるまで……? でも確かそれは……」


 そして、以前莉羅が言った台詞を思い出す。


『ついには他の宇宙にまで辿り付く、桁外れの天才博士』


 ――が存在して()()、と。

 その言葉が意味する所は、つまり……




「ロン……あなたの役目は……もう、終わっている……の」




 ◇




「ついに成功したっスよ所長……いや、今は自分が所長なんだから、前所長と呼ぶべきスかね」


 初老の男が、若い頃の自身の口調を真似ながら、老人の遺影に向かって言った。



 この男は、この宇宙で一番頭が良い博士。

 その天才的な頭脳により、ついに別宇宙への移動を実現した。

 今や自国の英雄である。



「所長、ここにいたんですか。パーティーが始まっちゃいますよ。主役が遅れちゃダメでしょう」

「ギゼットくん。もうそんな時間かい」


 博士を探しに、若き研究員がやってきた。

 彼はその腕に、白いウサギ型のロボットを抱いている。


「おや、そのウサギは……」

「ええ。僕が赤ん坊の頃に所長から貰った、ロンですよ。博士の若い頃の発明品として、今日のパーティーに連れて来いってお偉いさんに命令されちゃって」


 この青年は博士の隣人。

 ロンの飼い主にして、ロンギゼタの最初の人格。

 そして今は、博士の部下でもある。


 抱いているウサギのロンは、新たなエネルギーを生成しないように改造済みだ。


「ロン……そうか、ロン……すまないギゼットくん。ワシもすぐ向かうので、先に会場へ行っててくれ」

「はい、分かりました。だけど早く来てくださいね」


 青年は早足で去って行った。


 博士は窓から外を眺めた。

 大勢の人々が笑い合っている。


「あの頃の自分はまだ若かった。悠久の時を漂い続ける……その意味を、深く考えずにいた」


 懺悔ざんげするように呟く。


「ロンギゼタ。あの子はまだ、どこかの宇宙を彷徨っているのだろうか」


 空を見上げる。

 博士の目に、星々の輝きが映った。


「虚空の賢者よ……もし()()自分を見ているのならば、どうか代わりに、ロンの魂へ伝えて欲しい」


 まぶたを閉じ、亜空間に願う。


「もう、休んで良いのだと……」




 ◇




「……確かに、今……伝えた……」


 莉羅からテレパシーで送られてきた、博士の映像。

 それを観たウサギのロンは、耳を少しだけ動かし、真っ赤な目をまばたきした。


「ウサちゃぁん……」


 ロンギゼタ601は、その屈強な体をくねらせ、泣きそうな顔でロンを見た。

 しかしロンは、何も喋らない。

 


「う……あ、ああ…………い、痛え……?」



 突如、それまで意識を失っていた草一が唸った。

 テルミは警戒する……が、草一は動けない。


 桜に蹴られた直後、ロンから死なない程度の治癒能力を与えられたが、それでも満身創痍のままだ。

 その治癒能力も、既にロンは供給を断ってしまった。

 草一は目覚めても何も出来ない。


「ウサちゃん、あなたぁん……それで、良いのぉん?」


 ロンギゼタ601は、深刻な表情で白ウサギに問う。

 それに返事をするように、ロンは莉羅の手から離れ、ぴょこんと一回飛び跳ねた。



 ロンの魂は、『燃料補給』をやめてしまったのだ。



「魂を食べないと、大魔王の呪いってヤツで、ワタシ達死んじゃうのよぉん?」


 ロンギゼタ601の言葉に、ロンはただ静かに目を閉じた。

 構わない、と言いたげな態度。


 今のロンには、博士や元飼い主についての記憶は残っていない。

 しかし、自分の役目が終わった事を、心で理解した。


 これ以上働く必要は無い。

 もう、ゆっくり休みたい。


 今の寄生主である犬舘いぬだて草一の寿命が尽きる時。

 果てしない時を生きてきたロンの命も、共に尽きるのだ。


「そうねぇん……分かったわぁん。ワタシも付き合ってあげるぅん。元々ワタシは、ウサちゃんのオマケみたいなモンらしいしねぇん。でもソーっぴってば馬鹿なヤクザだしぃ、若頭まで殺しちゃってるしぃ、両手両足折れてるしぃん。きっと明日にでも報復されて死んじゃうわよぉん?」


 ロンギゼタ601はそう言って、笑いながらロンを抱え上げた。



「莉羅」


 今まで成り行きを見守っていたテルミが、ここで初めて口を出した。


「彼らの呪いを解いてあげられないのですか? 同じ大魔王の呪いだと言うのなら、姉さんに頼めば」

「ううん……同じ、力だからこそ……ねーちゃんじゃ、無理……反発して、危険……でも」


 莉羅は両目を開け、兄に近づきながら言う。


「……りらが、解呪……出来ない事も、無い……」


「えぇ~ん!? それ本当、リラリラぁん!?」


 莉羅の言葉に、ロンギゼタ601が食いつく。


「お願いお願いお願いぃ~ん! ウサちゃんの呪い、解いてあげてぇ~ん!」

「莉羅、僕からも頼みます」

「うん……おっけー……」


 深刻な二人に対し、莉羅は気軽に頷いた。


「じゃあ……にーちゃん、だっこ……お姫様のヤツ……」

「お、お姫様抱っこですか?」

「うん……解呪には、気合いが必要……なの……。気合い入れるため、だっこ……」

「そういうものですか……?」


 テルミは半信半疑で妹を抱え上げる。


「わーい……くふふ」


 莉羅は両手を兄の首に回し、嬉しそうに頬と頬をすり合わせた。

 妹の甘えた仕草に、テルミもつい笑みを浮かべる。


「ってちょっとちょっとぉん! 兄妹でイチャイチャするのは良いけどぉん、ワタシ達はぁん?」

「……もう、呪い、解けてるよ……」



「あ、あらぁん!?」



 莉羅に言われやっと気付く。

 ロンギゼタ601とロンは、草一の意識から抜け出し、今は莉羅の意識の中にいるのであった。


「ホントだわぁ~ん! なにこれすんごい開放(かぁ~ん)!」


 莉羅の意識内を喜び駆け回るロンギゼタ601。

 その近くでロンは、静かに座っている。


 テレパシーでロン達を確認した後、テルミは再度莉羅を見た。

 抱きかかえているため、鼻先が触れる程近くで対面する。


「もう呪いが解けたのですか……凄いですね莉羅」

「うん……褒めてー……」

「はい。とても偉いですよ」

「くふふ……」


 褒められながらも莉羅は再び目を閉じ、自分の中にいるロンの魂と会う。

 ロンは莉羅の足元に近づき、甘えるように鼻をこすりつけた。


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