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姉(←大魔王)、妹(←超魔王)、長男(←オカン)  作者: くまのき
第三章 セクハラ、日常、部活動、
21/200

9話 『弟は姉の抱き枕』

 重い。

 そして腹の辺りに、なにやら柔らかい感触。



 清々しい朝。

 真奥(まおく)輝実(てるみ)が目を覚ますと、身体の上で、全裸の姉が眠っていた。



 弟の胸を枕にし、その長い手で背中をガッチリとホールドしている。

 すやすやと、寝息が肌に当たる。


 そしてテルミは更に気付く。自分の上半身も、裸だ。

 昨晩は着ていたはずなのだが。

 おそらくは、この幸せそうに眠っている姉に脱がされてしまったのだろう。

 下半身は……なんとか無事のようだ。


「……姉さん、起きてください」


 テルミは桜の背中を軽く叩き、起こそうとする。

 肌に感じる吐息がピタリと止んだ。目覚めたようだ……が、


「うーん……もうちょっとー寝かせてよー」

「ぐっ……ね、姉さん……!」

「なーあにー、テルちゃん? むにゃ」


 テルミの背骨が、みしりと音を立てた。

 武術家として自分より遥かな高みにいる姉。

 その抱き付きは官能的であるより前に、ただただ痛い。


「起きてください……ッ」

「ヤダー」

「……起きてますよね?」

「起きてなーい。おはようのちゅーしてくれるまで起きなーい」


 桜は目をバッチリ開け、上目遣いで唇を突き出した。

 その後、テルミに怒られた。


 そしてその『弟に説教される』という状況に、非常に満足した。




 ◇




「今朝は……おたのしみ、でしたね……」


 と、莉羅りらは不機嫌そうに言い、台所に並んで立つテルミと桜の間に割り込んだ。


 迂闊だった。

 桜が特殊技能ピッキングによりテルミの部屋に侵入。衣服を脱ぎ同衾どうきん

 その間、莉羅は完全に眠っていた。

 千里眼で気付く事も出来ず、当然邪魔する事も出来なかった。

 目覚めた時には、裸でくっ付いたまま兄が姉を説教しているという、異常な状況だったのだ。


 確かに桜は昨日、


「柊木ちゃんに先越される前に、夜這いしちゃおうかしら」


 なんて事を言ってたが。

 まさか本当にやってしまうとは思わなかった。冗談が過ぎる。

 まあさすがに一線を越える事は無かったようだが。



 その桜は罰として、朝ごはん作りを手伝わされている。

 いつもテルミ一人で用意しているのだが、おかげで今日は時間に余裕が出来そうだ。

 テルミは朝食のメニューに一品追加する事を決めた。ほうれん草のお浸しにしよう。


「料理するのも久しぶりねー。二年生であった家庭科の授業以来だわ」


 桜はそつなくネギや豆腐、キュウリ等を切っている。

 剣術の心得もあるため、切り口が異常な程になめらかだ。


「……姉さん。やれば上手なんだから、毎日手伝ってください」

「えー。やだー。あたしはテルちゃんの手料理が食べたいのっ!」


 そう言いながらキュウリを一切れ掴み、莉羅の頭上越しに、テルミの口にねじ込んだ。

 莉羅はますます不機嫌になりながらも、


「りらも……お料理、手伝う……もん」


 と、野菜を洗い始めた。



「そー言えば、にーちゃん、ねーちゃん……質問が、ある……んだけど」


 レタスを皿に盛りつけながら、莉羅が言った。


「質問ですか? はい、どうぞ」

「なになに莉羅ちゃん。あたしとテルちゃんの熱く淫らな夜についての質問?」


 姉の言葉は無視し、莉羅は言葉を続ける。


「じーちゃんが……チャンネルを、『回す』って、言ってたんだけど……どうして、『回す』って表現……なの? 言葉のチョイスが、おかしい……気が、する……」


 姉兄の予想以上に、日常的な疑問であった。


「……りらの、考察では……テレビの、チャンネルを、順に変えていくと……ループ、するので……輪になっている、イメージ。なので、その輪を、回す……という意味……かなあ?」


 超魔王の力を有す少女にしては、可愛い質問。

 桜はクスリと笑う。


「あら、莉羅ちゃんったら偉い偉い。何にでも疑問を持つことは大事よ! で、答え知ってるテルちゃん?」

「ええと、そうですね。亡くなったお婆さんも『回す』と言っていましたが」


 テルミは茹でたほうれん草を冷水に潜らせながら、考える。

 どこかで理由を聞いた気もする。


「そうだ、確か昔のテレビ操作は回転ダイヤル式で、本当に物理的に回していたんですよ」

「ピンポーン、正解せいかーい。よしよしテルちゃんも偉い偉い」


 桜は正解を知っていたようだ。からかうようにテルミの頭を撫でる

 そして莉羅は、


「ほー……なるほ、ど……」


 と言いながら、何度も頷いた。


「でも莉羅ちゃん、何でも見てた超魔王の記憶があるわりに、些細な事に疑問持ったわね?」


 と、桜が言った。

 莉羅の前世である超魔王ライアクは、次元を超え、時空を超え、世界の全てを見渡す事が出来た。

 その記憶を受け継いだ莉羅も、宇宙中の知識を有している……はずなのだが。


「……ライアクが、死んだのは……地球が、生まれるより、ずっと前……だったから。地球独自の、知識は……知らない」

「まあ、そうだったの?」

「うん……そーだった、の……だから、忍者も……昨日、初めて見た、し……」

「忍者?」


 テルミは、莉羅の言葉に一瞬引っ掛かった後、そう言えば昨日妹がそのような事を言っていた、と思い出す。

 姉に連れられてヒーローショーにでも行ったのだろうか。などと勝手に納得し、あまり深くは考えなかった。


「じゃあこれからも莉羅ちゃんには、お姉様がたくさん教えてあげなくちゃね!」

「うん……よろしく……」

「特に保健体育の知識を! 手始めに昨夜スマホで撮った、寝ているテルちゃんの裸の写真を」


 桜は再びテルミに怒られた。

 そしてその『弟に説教される』という状況に、非常に満足した。


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