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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
男爵になってたので領地行ってみた編

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54 男爵の土地に行ってみる

今回から新展開です。よろしくお願いします!

 そうだった、そうだった。俺は魔法学校で、ドルクという貴族の五男から男爵の位と土地を譲られていたのだ。

 男爵の位は貴族階級で一番下で、世襲する権限がない。一方で他人に譲渡することはできるので、金持ちの商人が自分の名誉のためにその地位を買ったりすることが多い。


 その男爵に俺はなっていたんだった。

 これまで男爵に関連する書類も何も送られてきていなかったし、どこの土地かすら確認もしていなかったので、ずっと忘れていた。


「とりあえず、開けてみたら? それなりに重要な書類の可能性も高いし」

 たしかに書類はずっしりとしている。しょうもない通知というわけではなさそうだ。


 中身は男爵としてサインをしてくださいといったものが多数。権利がドルクから俺に移る関係で必要なものもあれば、現地のことでなんらかの許可を俺が出さないといけないものも混じっている。許可といっても、サインさえすれば、あとはこれまでどおり、続いてたことが行われるだけのものだけど。


「たしかに、これは放置していていいものじゃないな」

 中身自体は、サインをして関係各所に送ればいいだけのことではある。ちなみにその書類はファントランドという土地がある郡の役所から送られてきている。


「せっかくだから、そのファントランドってところにも行って様子を見てきたら? 休日に旅行感覚で行ってもいいと思うよ。腐っても男爵なんだし、元の所有者の別荘みたいなのぐらいはあるんじゃない?」

 そのメアリの案は悪くないかもしれない。


「じゃあ、早速、調べてみるか。でも、全然聞いたこともない名前だな」

 郡は全国に五百ぐらいあるので、メジャーな地名でなければ、ぱっと位置が確定できないことも多い。


 地図帳を持ってきて、郡の場所をチェックする。


 王都の北西にある、とんでもなく田舎の郡だった。

 しかも、そこの拡大図を見てみたら、ファントランドという土地はさらに山が迫っている斜面みたいな土地で、間違いなく地価も激安だろうということが想像できた。


「これは……正直あんまりうれしくない土地だな……」


 そりゃ、ドルクも男爵の権利を譲ろうとするぐらいだ。



 二週間後。

 俺はドラゴンスケルトンの天翔号に乗って、ファントランドを目指していた。


「うん、なかなかの安全運転ね。その調子、その調子」

 隣では天翔号の持ち主であるトトト先輩が腕組みして座っている。


「ご迷惑言ってすみませんでした。しかもせっかくの休みなのに」

「嫌だったら理由つけて断ってるわよ。ワタシにとってもお酒飲んで二日酔いで寝てるよりは、知らない土地に遊びに行くほうが有意義だし」


 たしかにダークエルフのトトト先輩は見た目は活動的に見える。たんに服装の露出度が高いからかもしれないけど……。トトト先輩は薄着なうえに、自宅だと裸になる習慣があるのだ。


 そんなトトト先輩に天翔号をお借りしたい旨を話していたのだ。話したといっても、トトト先輩の現住所は無茶苦茶離れているので、魔法による通信で連絡したわけだが。


 条件は「土日の二連休にドラゴンスケルトンを貸してほしい、食事はこっちが持つ、宿は男爵の資産である建物があるのでそこを使います」というもの。無事にOKが出た。


 狭い峠はドラゴンスケルトンが通れないので、大周りになったりしたけど、五時間ほどでファントランドに到着した。


 ここが俺が男爵として支配している土地だ!


 超が三つつくぐらいにはド田舎だった。


 山がちな土地のすり鉢の底みたいな盆地がその郡(バナバナ郡という弱そうな名前)なのだが、その中にまた小さな盆地や丘がいくつかある。ファントランドはその中でもとくに人口もなく、さびれている土地だ。


 男爵の建物は斜面に立っているので、ファントランドの全景がよく見えた。建物はほぼない。


「資料によると、戸数六、人口二十一人、うち十五歳以下の人は十歳の男の子一人だけですわね」

 セルリアが資料を読み上げる。


「超限界集落じゃないか!」

「むしろ、限界集落というか滅亡集落じゃないの?」

 メアリはのどかというか、人の生活がほぼ見えない景色を見て、あきれていた。


「男爵の持ってる建物もボロいというか、これ、元公民館の廃屋よね……。建物は頑丈そうだから、掃除すれば使えはするでしょうけど、これ、掃除しないとほこりっぽくて寝られないわよ……」

 トトト先輩もげんなりしていた。連れてきた手前、責任を感じるな……。

 けど、そこでトトト先輩はにこっと元気な笑顔になった。


「でも、いいわ。こういう休日もいいじゃない! せっかくだし、立派な別荘地にしてあげましょ! 掃除なら天翔号で慣れてるしね!」

「ありがとうございます、先輩!」


「ここでワタシがテンション下げると、ほかのみんなが全員気まずくなるでしょ。こっちは社会人なんだから、それぐらいのことはわかるわ。この状況を楽しんであげるわよ」

 わざとドヤ顔をして微笑む先輩。ほんとによくできた先輩だ。うちの会社、人間力高い人が多いよな!


 そして、トトト先輩は元公民館から掃除用具を引っ張ってくると、

「よーし、掃除するわよ!」と服をポンポン脱いで、全裸になった。


「ちょっと! どうして、全裸になってるんですか!」

「えっ? だって、ここ、フランツ君の別荘って言っていい場所でしょ? そこに招かれてるんだから、ワタシの家であるかのように振る舞っても問題ないわよね?」


「ああ、だから先輩が自分の家で全裸で過ごすみたいにしても問題ないと――ってそんなわけあるか! そこは社会人なんだから、ちゃんとしてください!」

 さっき社会人だからってドヤ顔したのはなんだったんだ!


「いいじゃん! 服だって汚れるんだから! これはワタシのポリシーなの! 認めないと帰りの天翔号は貸さないからね!」

「ずるい! 本当にずるい!」

 こんなところ、徒歩で帰ったら何日分の無断欠勤になるか……。


 結局、トトト先輩のポリシーに屈して、全裸で掃除してもらうことになった。


 メアリが「ぐぬぬ……いい体してて腹が立つな……」と謎の敗北感を抱いている以外はとくに大きな問題はなかった。

 俺はやましい心は起こさないぞ、起こさないぞ、起こさないぞ……。


 こんなところ、集落の人間に見られたら、絶対に誤解されるのでとっとと終わらせて、服を着てほしい。

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