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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
先輩が引き抜かれそう問題編

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200/337

200 ホテルが拠点

200話まで来れました! これも皆さんのおかげです! 本当にありがとうございます! 数日前にコミカライズ最新話も更新されましたのでそちらもよろしくお願いします!

「先輩を預けていい奴らか心を読んで確認するってことか。なんだか、あなた、その先輩の父親みたいね。娘をやっていいかどうか確かめようとしてるみたい」


 ヴァニタザールにからかわれた。

「うっ……言われてみればそういう要素もなくもないかも……」

 これ、娘が婚約相手を連れてくる時の親父みたいな発想だ。


 しかし、俺もいつか、「娘さんと結婚させてください!」と言いに行って、その父親に見極められる日が来るのかな?

 だとしたら、女性関係がただれてるとみなされて怒鳴られるのでは……。

 いや、別に不倫とかはしてないから問題はないはず……。


「でも、あながち間違いでもないわ。組織っていうのは、結局、上の人間の考えでいろんなものが決まっちゃうからね。軍隊が司令官の判断で攻め込んだり、撤退したりするのを決めるのと同じよ」

「そりゃ、そうですよね。全社員の投票で何かを決めるわけじゃないから」

 会社は組織である以上、偉い立場にいる人間が大きな方針は決めていく。


「それで、聞いたかぎりだと、ファーフィスターニャって子は黒魔法使いとしては文句なく天才だわ。そこは否定するのもバカらしいぐらい」

「はい。編み物で立体的に魔法陣を作っちゃう人ですからね……」

 一人で圧倒的な技術革新を進めてしまっている、とんでもない人だ。


「けど……天才にありがちなことではあるんだけど、大きな組織で立ち回れる能力はなさそうなのよね」


 俺もうなずいて認めるしかなかった。

 そんな能力まで持っていたら、有名企業に勤めて、今頃名を馳せていただろう。


「ならば、彼女が『第一魔法』でどんなふうに使われそうか確認するのは悪くはないわ。手を貸しましょう」

「ありがとうございます!」

 しかし、すぐにヴァニタザールがものほしそうな目つきになったので、びくっとした。


「その前に、たっぷりと私を調教してもらうからね。そこは忘れないでね」

「はい……そこは俺も腹を決めます……」

 せっかく高級な店を使ってるのに、心が浮ついてあまり味に集中できなくなった。



 そのあと、やけに桃色の外観をした宿泊施設に入った。

 もちろん、桃色なことをやるのが主目的の宿泊施設だ。冒険者パーティーが使うようなところではない。もっとも、「冒険者の方も歓迎!」と入口に書いてあったけど。


 部屋に入ったのち、様々なことをやったが、ちょっとヤバすぎて脳内でも言語化したくない。

 とりあえず、人間ってエロのためだけに本当に数えきれないほどのアイテムを作るんだなということだけはわかった。


「ていうか、どこで売ってるんですか、こんなもの……? 商売として成り立つほど需要もないような……」

 俺は服の意味が何もない服を見ながら言った。さっきまでヴァニタザールが着ていたものだ。隠さないといけないところがすべて見える。


「ああ、それはね、『ヴァニタザール開発』で作ってるの」

「自社製品かよ!」

 とんでもない方向に業態をチェンジしたな……。


「その首輪もうちで作ってるものね。そっちは魔力を注ぎ込むと、一定時間振動するの」

「その振動をどうするかは聞かないですからね……」

「じゃあ、休憩も終わったし、五回戦ね」


 そんなチェスをやる感覚で言わないでほしい。

 マジでこれ、過労死する危険もあるのではなかろうか……。ある意味、男の本懐――ではないな。後悔するよな、それはそれで……。


 ようやく俺はヴァニタザールから解放されて、ベッドに座って他愛もない話をした。


「こういうアイテム、買う人は高くても買ってくれるからね。原価もたいしたことないから、儲かるのよ。アンデッドにもしっかり休暇も給料も出せるわ」

 一度死んで、この世に戻って恥ずかしいアイテムを作るって、どんなごうなんだ……。


「こんな恥ずかしいものは作りたくないって言って退職した子もいるけど、退職金はちゃんと出してるからね」

 そりゃ、あまり知られたくないよな……。生きてる親族とかいるかもしれないし。

「ちなみに社員は社割で定価の三割引で買えるわ」

「仮にほしくても、買うって言いづらすぎませんか!」


「それはそうだけど、性的なアイテムを作ってるからこそ、おおっぴらにやりたいのよね。人が求めるものを作ってるんだから、そこは胸を張るべきだと思うの。実際、うちの会社では使用者が安全で清潔なものしか作ってないわ」

「なるほど。そう考えると、社会貢献なんですね」


「この服も従来のものは締め付けがきつくて、お店の女の子が疲れたらしいわ。弊社のは全然疲れないって大人気よ」

 お店って、つまり、えっちいことをする専門店だろうな。

 そういうところで大口需要があるとすれば、経営も安定して成り立つのかもしれない。


 今更だけど、ありとあらゆる場所にありとあらゆる会社が関わっていて、社会を作って、経済を動かしているのだ。

「ひとまず、私は満足したから、作戦のほう、手伝ってあげるわ」

「はい。お願いします」

 やっと本題のほうに入れる。


「せっかくだし、魔法もこの部屋で使っちゃうわね。ここを拠点にするわ」

「え! こんなところでですか! モロにそういうことをするための宿泊施設ですよ……」

 気恥ずかしいので、とっとと出たい。内装もやたらとピンクで落ち着かないし。


「だからよ。ここは見事な密室でしょ。『第一魔法』の社屋近くや、ネクログラント黒魔法社の中で何かやるよりははるかに足がつきづらいわ」

 言われてみれば、筋は通っている。


「善は急げ。やるわよ」

 ヴァニタザールは部屋の絨毯にペンで魔法陣を描いていく。


「弁償させられませんか、そんなの描いたら……」

「これはあとで拭けばすぐ消せる素材を使ってるの。本来は人間の体に描くグッズだから」

 人間の性への探求心ってすごいな……。


「はい、魔法陣の中心に入って」

 俺は言われたとおりに従う。

 それから、ヴァニタザールは何かを起動するような短い古代語を発した。


 途端――俺の体に強い疲労感が襲った。

 思わず、「うっ……」と声が出たほどだ。

 でも、耐えられないほどじゃない。


「すごく眠いと思うけど、ここはベッドもあるし、ちょうどいいでしょ。あとで寝ればいいから」

 本当にこの宿が適した場所だったのか……。

ニコニコ静画でもマンガUP!でもそれぞれ最新話にあたる話が更新されております。よろしくお願いします! 次は300話を目指せるように精進いたします!

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