16 きれいな先輩は好きですか
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「……ねえ、後輩君」
椅子に座ってぼうっとする仕事をしていたら、ファーフィスターニャ先輩が話しかけてきた。
「はい、いったい何でしょうか?」
「暇すぎる。雑談相手を付き合って」
「あ、はい……」
私語禁止どころか、上司から持ちかけられた。
あまりにも夢のような仕事だから、逆にまともに働いてる奴に対して罪悪感出てきたな……。
けど、座ったままでやることもないし、ありがたくはある。暇過ぎるのも困るよな。
「後輩君は、魔法学校の王都国際魔法学校の卒業生?」
「はい、まさにそうです。先輩もそうですか?」
「……学校にいい思い出はないけど……そういうことになる」
もしかして地雷を踏んだりしただろうか? でも向こうから聞いてきたら聞き返すよな。これが地雷だとしたらトラップもいいところだよな……。
「何か嫌なこと思い出させちゃったらすいません……」
「大丈夫。先生も生徒もいい人ばかりだった。お誕生日も開いてもらった」
「しっかり学生生活、満喫してるし!」
むしろ、だったらどんな嫌な思い出があるんだ。
「ヒント、私を見てればわかる」
それ、うかつに回答すると失礼に当たるからすごく言いづらい。
「私…………就活に失敗した……」
「あ、なるほど……」
昔のことを思い出したからか、先輩はちょっと寂しそうだった。
「成績は悪くなかったけど……内気でのんびりした性格だから……全然採用されなかった……」
「俺もどっちかというとそうだったんで、わかります……」
会社はやたらと面接してコミュニケーション強者を採用するのだ。それはそれで問題あるぞ。そういう性格であることと、仕事ができることとは厳密には違うしな。
先輩の性格だと、熱意がないと判断されただろう。俺でも面接官ならそうしそうだし……。
「五十箇所受けて全敗した……。もっと、はきはきしゃべれとか言われても、こういう性格でしゃべり方だし……」
たしかに、もう、これはキャラの一つだもんな。それを否定されても困る。
「それで、カフェでたそがれてたら……ケルケル社長が向かいに座った」
先輩の話によると、その時、社長はこう言ったらしい。
――もしかして、就活上手くいってない学生さんですか? 私、魔法業界の社長なんですけど、話聞きます?
社長は黒魔法業界のことを包み隠さず、何もかも話したらしい。その社長の人柄に惹かれたファーフィスターニャ先輩は、ここならきっとやっていけると思い、就職を決めたという。
「その時……社長に出会わなかったらどうなっていただろうと思うと、今でもぞっとする……」
「人生って、そういうちょっとしたことで変わりますよね」
「だから、社長のために尽くすって、私は決意してる」
いい話だ。本当にケルケル社長は人格者だな。
きっと悲嘆に暮れてる先輩を放っておけなかったんだろう。
「俺も、今の話聞いて、この会社に入ってよかったと思いました」
社長が嫌な奴だったら、やっぱりそのカラーに会社全体が染まるからな。
「うん、ありがたい。今でも声かけてくれた社長の顔、今日のことのように思い出せる。五十七年前だけど」
うん……?
なんか妙なことを言われた気がしたぞ。
「あの、五十七年前っておっしゃってませんでした?」
「だって五十七年前だから」
この人、かなりいい歳だぞ! というか、俺が孫で何も違和感ない年齢だぞ!
「…………黒魔法でアンチエイジング」
「アンチエイジングってレベルの話ですか!?」
「……女の子は美容に気を付ける。これぐらいは朝飯前……」
年齢のことを聞かれたくなかったのか、わずかに先輩を顔を朱に染めた。
「美容って次元ではありませんよ、それ……」
この会社、まだまだ謎と闇が多いな。
「十年前、同窓会に出たら美魔女と呼ばれた」
「たしかに美しい黒魔法使いだけど、意味が違う気がする!」
「後輩君、美しいって言ってくれた」
あっ、勢いでそう言ってしまった。
でも、ファーフィスターニャ先輩は文句なく美女だ。ミステリアスなところのあるお姉さん。
※実年齢だと七十五歳ぐらいだと思うけど、そこは考えないことにします。
「ありがと、後輩君」
にこっ。俺に向かって、先輩は微笑みかけてくれた。
どきっとした。
普段、無表情なのに、だからこそ笑みの破壊力がすごい。
「ご主人様、今、先輩に惚れそうになりましたわね」
すぐにセルリアにばれた。
「わたくしはサキュバスですからすぐにわかりますわ」
なるほど、隠し事できないのか……。
「惚れてくれてうれしくはあるけど…………私、その使い魔さんほど胸ない」
じぃっとファーフィスターニャ先輩はセルリアの胸に視線をやっていた。
「あっ、言っておきますけど巨乳好きだから、おっぱい大きなセルリアを召喚したとかじゃないですからね!?」
「そういうことだと受け取っておく」
口ではそう言ってるけど、全然信用できなかった。
これ、社内に俺が巨乳フェチだとか噂、広まったりしないだろうな……。
「やはり……胸のサイズを生贄に捧げて、アンチエイジングするべきじゃなかったかも……」
なんか、衝撃的な発言が聞こえてきたけど、あまり追及しないことにしよう。
胸の大きさなんて生贄にできるのか? 生物ですらないぞ。
「ご主人様、おっぱいのサイズは女子にとって、なかなか無視できないものですわ。男性の目線を抜きにしても、女子同士でも大きいほうが自然と大きな顔ができたりしますし」
ああ、そういうのってやっぱりけっこうあるんだな……。
「なので胸のサイズを生贄にすることもできますわ。ちなみに男性であれば身長を生贄に捧げるというのは、たまに行われますわね。背がやけに低い男性の黒魔法使いがいたら、身長を生贄にしてる可能性が高いですわ」
「なるほど……。一つ賢くなったよ……」
それぐらいだったら、たしかに生贄にしてもいいな。別に生贄といっても、致命的なものとは限らないらしい。
その後は、時折戻ってくるインプのゴミの確認などをしつつ、ぼうっとしていた。
サボってるのではなく、そういう仕事なのだ。
しかし、二時間ほど経ったある時、やけにインプがばたばた飛んでいるのが見えた。
「……これは大きな仕事」
すぐに先輩が立ち上がった。
いったい、何だ……?
自分の上司も見た目より相当若い人でした。
さて、先輩の反応は何か? 次回に続きます!




