149 とんでもない忘年会
コミカライズがマンガUP!さんにて開始されました! はっきり言ってえっちいです!
裸のサンソンスー先輩とファーフィスターニャ先輩が立っていた。
うん、脱衣場だもんね……。鉢合わせもあるよね……。
平常心、平常心……。
さっと、二人とも、その胸を隠した。そりゃ、そういう反応をされるだろう。
「お風呂場だと気持ちがおおらかになるのか、平気だったりするんだけど、脱衣場でいきなりというのはボクもびっくりするね……」
「不意打ちを喰らった……。タイミングを誤ったかも……」
脱衣カゴには俺の服が入ってるのが明らかに見えてるから俺に罪はないと思うのだけど、かといって謝らないわけにもいかないよな。
「あの、その……すいません……」
「うん、いいよ。許す。後輩君が出るのを待たずに入ろうとしたこちらにも非がある」
そこはすぐに理解してもらった。ファーフィスターニャ先輩はいい人だ。
「それに後輩君に見られまくって、マヒしてきた。もう、後輩君に見られてもいいような気がしてきている……」
なんか、無理が通って道理が引っこむようなことになってきてる!
「そうだよね……。見られても減るものじゃないし……」
サンソンスー先輩、それはどっちかというと男が言い訳で使う表現です!
「むしろ、ここは男子代表としてこの体つきに対して、意見を求めたい」
ファーフィスターニャ先輩が俺の真ん前に立って、隠していたバスタオルをちょとずつ取っていく。
「どうかな? 私って色っぽい? アンチエイジング、上手くいってる……?」
おどおどと照れたように先輩は言った。そうか、ファーフィスターニャ先輩は見た目にコンプレックスがあるのか。
「いえ、文句なく、かわいいと思いますけど……」
「後輩君、私は色っぽいかって聞いたの」
俺の答えが気にいらなかったのか、先輩は少し頬をふくらませた。
「私の使い魔、人間に姿を変える時があるけど……すごく色っぽいから……」
なるほど。モートリ・オルクエンテ五世はたしかに大人の色香がむんむんの体をしている。それと比べると、ファーフィスターニャ先輩は平板な体つきだ。
ここは中途半端に誤魔化すと、かえって信用を失うよな。
「その……色っぽいかどうかというと、使い魔のほうが上かもしれません」
「やっぱり……」
がっかりした顔になる先輩。
「あと、モートリ・オルクエンテ五世の人間の姿、見たんだね」
はい、お風呂場で鉢合わせました……。そこは論点がずれるので、スルーしたい。
「だけど、先輩がものすごくかわいいのは真実です! こんなかわいい先輩がいて、俺は果報者です! ここには一片もウソはありません!」
色気というのは、女子のステータスの一つに過ぎない。
足が速い動物もいれば、空を飛べる動物も、泳ぎが得意な動物もいるようなもので、一点だけで優劣を決めたってしょうがないのだ。
この言葉はファーフィスターニャ先輩に届いただろうか。
少なくとも、サンソンスー先輩は感心した顔をしてくれているから大丈夫と思いたいけど、ファーフィスターニャ先輩はあまり表情に出ないタイプなので、わかりづらい。
「じゃあ……」
ファーフィスターニャ先輩は胸に手を置いて、少し上目づかいになって、
「後輩君は、私とサキュバスの子としてるようなこと、したいと思う?」
意図はわかる。色気にかわいさが匹敵するのか、そう先輩は言いたいのだ。
でも、これって、俺からしたら、誘われてるのと大差ないんだよな……。
だいたい、したいって答えたら、どうなってしまうんだ……?
ファーフィスターニャ先輩は目がうるんでいる。
くそっ、かわいい!
どうして、こんなにみんなして俺を挑発するようなことをするんだ!
俺は答えに窮して、その場にへたりこんだ。
「すいません……みんな、男の理性に戦いを仕掛けすぎです……。そろそろ砦が陥落しそうなんです……。勘弁してください! したくても、みんなで泊まってるのにできるわけないじゃないですか!」
それは俺の心の声だった。
「みんな、みんな、かわいかったりきれいだったりするのに、セルリアのバナナの食べ方が卑猥だったり、秘宝館に変なものが置いてあったり、女性陣と相部屋だったり、夕飯も精力つく料理だったりで、正直きついんですよ! 全力でサキュバス的なことしたくなってるんですよ! それをこらえてるんです! 理解はしてくれなくてもいいから察してください!」
言った。言ってしまった。
どう思われようといい。三大欲求なのだ。存在しないことにするほうがおかしいのだ。あるものはあるものとして、受け入れて、向き合うしかない。俺のしたことは間違いじゃない……はず。ほかの人にどう思われるかは別として……。
無論、俺は目の前の二人に言ったつもりだった。
しかし、効果はもっと広範囲に及んでいたらしい。
「――話は聞かせてもらいました」
脱衣場の前に社長が立っていた。ちょうどお風呂に入ろうとしてきていたんだろう。
「ごめんなさいね、無意識のうちにフランツさんを刺激しすぎていたかもしれません」
苦笑を浮かべながら、社長が言う。
「はい……。なので、今日は俺は一人部屋で寝ることにしま――」
「サキュバス的なこと、してもいいですよ」
へっ?
「少なくとも私となら。あと、セルリアさんも拒否することはないと思いますが、私が聞いておきます。許可が出てる人が誰と誰かお伝えしますので。まっ、忘年会ですし、盛り上がるのもいいんじゃないでしょうか」
え、え、え……。話が変な方向に高速で転がっている気が……。
「社長、ボクなら、別にいいです……。あまり得意でもないですけど……」
おずおずとサンソンスー先輩が手を挙げた。
それから無言でファーフィスターニャ先輩も赤ら顔で。
「こ、こういう機会だし、隣の部屋で何か行われてると考えるのも落ち着かないだろうし、私も軽くなら……」
なんか、急展開になってきたぞ……。
「ふふふ。皆さん、仲がいいですねえ。それじゃあ、ほかの方にも聞いてきますね」
そのあと、トトト先輩は「ああ、いいわよ、いいわよ」とあっさりOKをした。セルリアは言わずもがなで、「多人数もまたいいですわ!」と盛り上がっていたらしい。
こうなると、メアリも退くに退けなくなった。
「わらわだけ仲間はずれみたいなの、変だし……。しょ、しょうがないな……」
つまり、全員から許可が出てしまった。
「あの、社長、男は俺だけなんですけど、この場合、どうなるんですかね……?」
「一言で言うと、ハーレムというものですね。黒魔法の会社ですし、一年に一回ぐらいはいいんじゃないですか?」
ここから先のことは、とても具体的には書けないのだが、おそらく一生忘れられない一夜になってしまったのは間違いない。
まず、社長に「リードしてあげますね」と言われて、社長と。
それから、社長によるアドバイスももらいつつ、ファーフィスターニャ先輩と。
サンソンスー先輩は思った以上に積極的だった。
……このあたりで休憩をもらいました。
相当、体力を使う。でも、うれしい悲鳴なんだろうな。男だったらどれだけくたくたになっても、参加したいよな。
「ったく、フランツってどうしようもないなあ」
メアリにあきれられながら、メアリと。
「じゃあ、次は私ね」
トトト先輩には終始、主導権をとってもらった。
それで最後はセルリアだ。
「ご主人様、大変でしょうけど、リラックスしてくれていいですからね」
セルリアとサキュバス的なことをして、俺はそのまま眠りについた。
翌日、俺はぼうっと抜け殻のようになっていた。
チェックアウト直前まで、ぼうっとしていた。
「フランツさん、大丈夫ですか? さすがに限界だったでしょうか?」
社長に心配された。それぐらい、気が抜けていたんだろう。
「年末にとんでもないものが待っていましたね……」
今日が休日でよかったと思う。
コミカライズ開始記念として、活動報告にちょっとしたSSをアップいたしました! よろしければそちらもご覧ください! 今後とも書籍化されている1・2巻とコミカライズともども、「若者の黒魔法離れ」をよろしくお願いいたします!




