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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
王都のみかじめ料編

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136 二度目の恩返し

 後日、俺たちはまたセルリアとメアリの三人で『田舎屋』を訪れた。ちなみにホワホワはお店で働いている側だ。

 建物の中はきれいに改装されている。『十字傷のロック鳥』がお金を出して、破壊した時の建物よりはるかにいいものにしてくれたらしい。


「すべては領主様のおかげです。なんとお礼を言っていいか……」

 マコリベさんはどこか思い詰めたような顔になって、何度も俺に頭を下げた。

「そんなにかしこまらなくていいですよ。俺はやれることをやっただけですから」


「ですが、領主様がここまで領民のためにやってくれるだなんて……。ちょっとこみ上げるものがあって……」

 弱ったなあ……。俺はあんまり上下関係は意識してないんだけど。


「また、みかじめ料がどうとか言う奴が来たら、俺を呼んでください。また、すぐに似たような連中が来ることはないと思いますけど」

「ああ、それなら『十字傷のロック鳥』の連中が謝罪に来て、もう金は取り立てないと言ってきました」


 ひとまず、自分が男爵をやっている土地の民を守ることはできたということかな。


「今日はもちろん、お店のおごりです。どうか、好きなだけ飲み食いしてください!」

 ここで遠慮するのも変か。じゃあ、好きなだけいただくことにしようかな。


「わかりました。それじゃ、まずはドブロンをお願いします!」

 ホワホワが人数分のドブロンをすぐに持ってきてくれた。もう、すっかり看板娘といった感じだ。


 三人でドブロンを乾杯して、ふぅと一息ついた。


「けど、今回も大変だったな……」

 ある意味、これまでで一番悩んだかもしれない。

「なんで? 敵をやっつけて一件落着したでしょ?」


 メアリはそのあたり、ドライなのかもう気にしてないらしい。

「マコリベさんがひどい目に遭ったことはもちろん許せない。それをあのままにはしておけなかった。でもさ、俺たちがやったことも、いわば非合法活動ではあるんだよな。警察がちゃんと動いてくれれば、俺たちがギャングの真似事をしなくてもよかった」


 セルリアも俺の気持ちがわかったのか、少し顔を曇らせた。

「この社会がきれいごとだけで成り立っていないということを見せつけられてしまいましたわね……」


 俺だってギャングみたいなのが裏社会を牛耳っているとなんとなくは知っていた。

 でも、それは知識としてのことであって、そんなものと人生で関わる場面があるとは思っていなかった。実際、普通の白魔法の企業に就職が決まっていれば、出会うことすらまったくなかっただろう。


 そして、裏社会ではルール違反、いわば「犯罪」がまかり通っていた。警察が今回、まともに機能しなかったのは事実だ。


「まっ、フランツやわらわたちが目につく範囲のところをよくしていけばいいんじゃないかな? この世のすべての問題を抱えることなんてケルケル社長だってできないことだよ」

 メアリはドブロンの瓶で俺の杯についだ。


「それで、フランツは自分が守らなければならない立場の人をしっかりと守った。そこに誤りはないよ。今はしっかりと酔っぱらえばいいのさ」

 セルリアもメアリの言葉を受けるように、にっこりと俺のほうを見て微笑んでいる。

「そうですわ。ご主人様は果たすべきことを果たしていますもの。これですべてよかったんですわ」


 そっか。まずは自分が守れる範囲の人を守らないとな。

 あわよくば、その範囲が広がっていきますように。

 たとえばケルケル社長が俺をこうやって拾い上げてくれたように。


「よーし! 俺、もっともっと偉くなるぞ!」

 俺は立ち上がって叫んだ。

「おっ、年末も近付いてきたし、大きく出たね」

「それでこそ、ご主人様ですわ! 気宇壮大ですわね!」


 そこにホワホワが料理をじゃんじゃん持ってきた。

 今日のホワホワは化粧をしているからか、いつもより大人びて見える。

「はい、どんどん食べる、がうがう食べる。マコリベは張り切って、いろんな料理を試してる。ゆっくりしてるとテーブルがあふれちゃう」


「わかった。むしろ、ホワホワも一緒に食べて祝おうぜって言いたいところだけど、店員が客と盛り上がってたら、ほかの客からは変に映っちゃうよな」

 幸いというか、店が改装されてから客の入りも以前よりいいらしい。この様子ならドブロンが流行することだって、ないとは言えないかもしれない。


 ふっと、ホワホワが俺の横にやってきて、耳打ちした。

「フランツ、あとで二階に来て。がうがう」

 いったい何だろうと思って、俺は「うん」と答えた。


 最初は威勢よく食べていたペースも、途中からおなかがいっぱいになってくると、スローになってくる。

 まあ、今日はこのテーブルは貸し切りみたいなものだろうし、ゆっくりしていよう。


 店の中を見回すと、ホワホワがいない。

 そういや、二階に来てくれって言われていた。ちょっと二階に上がってみるか。


 俺はトイレに行ったついでに二階に向かった。二階は事務所なのかな。



 そこにはホワホワの姿があった。

 ただ、問題はその格好がやけにえっちな下着姿ということで……。


「ど、どういうことだ、これ……」

 ホワホワは床になまめかしく、横になっている。といっても、子供っぽさは否定できないんだけど。

「ホワホワ、前に話した……。次にフランツに助けられた時、キスよりもっといいことするって……」


「あ、そういえば……そんなこと言ってたような……」

 あの時はあんまり真に受けてなかったんだが、この様子だと冗談じゃないよな……。


「沼トロールのしきたり……。お世話になったら恩返しする……。恩返ししないのはダメ……。フランツ、こういうの好きだと思った」

「いや、好きって言っても、その……」

 いくら酔っているとはいえ、その酔いも吹き飛んだ。これはのっぴきならない事態だ。


「フランツ、ホワホワのこと嫌い? かわいいと思わない?」

 しゅんと悲しげな顔になるホワホワ。その顔がすごくいじらしかった。


「い、痛くなったり怖くなったりしたら言えよ……」

「大丈夫……。フランツ、来て……がうがう……」


 結局、ホワホワと一つになってしまった。


「ふふ、これでホワホワも大人の仲間入り。ちょっとうれしい……がうー」

 あっ、その表情がなんというか、あどけなかったものが、女に変わった感じがして……。こう言っていいのかわからないけど、えも言われぬ魅力があった……。


「よかった、フランツ? がう?」

「うん、あ、ありがとうな、ホワホワ……」


 そのあと、一階に降りたら、じぃっとセルリアとメアリに見つめられた。

「お楽しみでしたわね」

「だいたい何があったかわかるよ」


 その日は肩身の狭い思いで帰宅しました。



みかじめ料編はこれでおしまいです。次回から新展開です!

そして、ダッシュエックス文庫2巻発売になりました! よろしくお願いいたします! 店舗特典などは活動報告をご覧くださいませ! 10月からのコミカライズもご期待ください! セルリア本当にエロかわいいです!

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