133 ギャングにはギャング作戦
「さて、フランツ、どうやって報復をしてやろうか?」
「メアリなら、絶対にそう言うと思った」
ある意味、安心した。俺もこのままで終わりにするつもりはなかった。
「間違いなく、悪いのは相手なんだからね。罰を受けてもらわなきゃね」
「だよな。俺も今回は引けない。だって、男爵の領民が痛めつけられたんだから」
ここはファントランドの領主として戦わせてもらう。
「とはいえ、相手は個人じゃなくて組織だ。壊滅させるには、無理がある気がするし、ちょっと作戦を考えないとな」
「そうだね。もっと手前の落としどころでわらわも矛を収めるつもりだよ」
ちなみに、壊された店のほうは一日かけて修理してからまた開くことになった。
怖い思いをしたホワホワは俺の家でひとまず暮らしてもらうことにした。安心感なら、王都でここに勝てる場所はない。部屋もメアリの奥のやつが余ってるし。アリエノールが使っていた部屋だ。
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翌日、俺は一部始終をケルケル社長に話した。
「ほほう……。また、それは難儀なことになりましたねえ……」
社長も難しい顔になった。
「やっぱり、ケルケル社長でも厄介な案件ですか?」
「ギャングっていうのは、ただの悪い連中とはわけが違いますからねえ。合法的にも数えられないほどの会社を経営しています。それこそ、そのお店の物件を契約した不動産会社だって、ギャングの息がかかってると思いますよ」
それはありそうだな……。
「ギャングというのは巨悪も巨悪ですからねえ。ネクログラント黒魔法社の規模では彼らを根絶するといったことは、さすがにできませんよう。それは蚊が不愉快だから絶滅させるというようなものです。そして蚊がいなくなったら多分生態系が崩れるように、またおかしなことになります」
そうなのだ。ギャングというのは社会の生態系とでもいうべきところに入ってしまっている。これを取り除けるかというと、それは神様でもないかぎり無理だ。
「俺としても、そんなおおがかりなことをやるつもりはないです。ただ、相手が組織なら話し合う余地はあるのかなと。簡単に言うと、こっちに手を出すと、そちらも痛い目を見ますよと教えることができれば、交渉はできるかなと思ってます」
ギャングも商売でやっているはずだ。それが商売として割に合わないなら、面子をつぶされたとかでなければ、手を退く可能性は高い。
「今回は店を守ることで勝利条件にしたいと考えてます」
「なるほど。それなら、方法はいろいろとありそうですねえ」
ぽんとケルケル社長が手を叩いた。
「本音を言うと、もっとひどい目に遭わせてやりたいんですが、規模が大きくなりすぎると、ファントランドの人たちにも迷惑がかかるかもしれないんで、ほどほどにしておきます」
さて、それではどういう手を使ったものか。
ここは毒をもって毒を制する策でいこうかな。
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俺はマコリベさんを含めて、対策を話し合った。
その時にメアリの正体なども、きっちりと話した。
「え……。この子、『名状しがたき悪夢の祖』という、そんな恐ろしい存在なんですか……?」
「うん、そうだよ。ギャングなんかより、わらわのほうが一億倍恐ろしいよ」
この一億倍は比喩ではない。メアリは国を滅ぼそうと思えば滅ぼせるからな……。
「それで、今回のリベンジの方法なんですけど、ずばり『ギャングにはギャングをぶつける作戦』でいきたいと思います」
「なんですか、それ? 領主様の味方になってくれるギャングがいるって言うんですかい?」
まだ、マコリベさんは状況を把握できてない。
「一言で言うと、マコリベさんにはとあるギャングの構成員になってもらいます」
「えええっ! そんなの嫌ですよ! リベンジはしたくても、そんなことはできません! それに田舎で俺がギャングに入ったなんて知られたら、ほかの家全部から白い目で見られます!」
マコリベさんは強硬に反対した。その反応もよくわかる。そんなの、気楽に加入できるものじゃないよな。
メアリは少し笑っていた。もう、俺とメアリの間では話が通っている。
「そこは問題ないよ。実在しないギャングだから。ペーパーギャングとでも言えばいいかな?」
「え? どういうことですか……?」
俺はまだよくわかってない顔のマコリベさんに作戦を説明した。
「なるほど……。ですが、そんなに上手くいくんですかね……?」
「上手くいかせます。そこは領主である俺を信じてください」
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後日、俺とメアリ、それからメアリがエキストラで呼んできた魔族の男二人はギャング『十字傷のロック鳥』の本部に来ていた。
顔にやたらと傷のある男たちに案内されて、俺たちは応接室に入った。調度品は高級なものが多い。やっぱり、金は持ってるな。
しばらくすると、向こうの重役らしき男が来た。
四十代なかばといったところか。出てきただけで風格があるのがわかる。
「いやいや、わざわざお越しいただいてすいません。魔界のギャングの方からお会いしたいと言われるとは思っていませんでした」
表面上は向こうの重役も丁寧だ。まだ、細かい事情は話してないからな。
「ありがとうございます。俺は魔界ギャング『五つ目山羊の雄叫び』の人間の世界側の担当者、フランツです」
俺も顔は笑っているが、目のほうは笑ってない。
「それで、用件というのは?」
「実はですね、うちの『五つ目山羊の雄叫び』の構成員が、あなたの組織の者に傷つけられてしまいまして……その交渉をしたいなと思ってまいったんです」
重役の表情が変わった。
「ま、まさか、そんなことが……」
「こちらもまだまだ人間の世界では無名なので、ご存じではなかったのだと思います。泥棒橋通りでちょっと前に居酒屋を開いたマコリベという男なんですが。みかじめ料を払えと閉店後に来た男三人に殴られて、店を壊されたということです」
重役が下っ端の人間に「すぐに調べろ!」と命令した。
これで話は動きそうだな。
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すでにネームを見ていますが、はっきり言って、えっちい部分はきっちりえっちくなっています……。むしろ、そのまま載せられるのか怖いぐらいです(多分多少マイルドになりそうです)。純粋に漫画としても超面白いので、ご期待ください!




