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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
社長の風邪編

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128 新たな継承式

「あの……黒魔法継承式って、前回みたいなやつでしょうか……?」

 聞くのもどうかと思ったが、聞かないわけにもいかないだろう。


「一言で言うと、そうです。ちょっとだけ、いやらしいやつです」

 社長はくすりと笑って言った。やっぱり!

 こんなことを微笑を含んで言われたら、こっちとしては頭がどうにかなってしまいそうになる。なんだか、どっちが熱があったのか、わからなくなってきた。


「とはいえ、前回みたいに大量の未習得魔法が手に入るというわけではありません。簡単に言うと、黒魔法の質自体をワンランク上げるものになります。ちなみにそれを使った主な効果としては……」


「効果としては?」

「美容があります」

 俺はこけそうになった。


「いえ、女性の黒魔法使いにとっては死活問題ですよ? よぼよぼにはなりたくないですからね。どうせなら美少女黒魔法使いでいたいじゃないですか」

 言ってることはわかるけど、かなり副次的なことに聞こえる。

 でも、たしかにこの会社、やたらと若く見える社員が多いので、そういうことにも気をつかってるんだろうな。


「ほかにも魔力が体を上手に循環して、疲れづらくなります。魔力により体が適応すると言いますか」

「あっ、それはありがたいです!」

「本来なら、十年は黒魔法で生計を立てているような人が挑戦することなのですが――」


 そこで、社長はやさしく人差し指で俺の俺の胸をぽんと突いた。


「白魔法における高度な魔法まで使える今のフランツさんの実力なら、もう挑戦してもいいかもしれません」


 魔法使いとして成長できることなら、ぜひ試してみたい。


「わかりました! やります!」

「はい、じゃあ、服を脱いでいただけますか」

 あっ、本当にそういう展開になるんだ……。


 そのあとはサキュバス的なことをしたわけだけど、どうも魔力の回路を調整することが今回の目的のようで――


 具体的な言及は避けるが、特定の箇所を重点的に社長に扱われた。


 俺は邪念があまり大きくならないように、詠唱を行っていたりしたが、焼け石に水で基本的に邪念に染まっていた。ある意味、黒魔法使いだからいいんだろうか……。


 一時間ほどで儀式はすべて終わった。


「はい、これでフランツさんは魔法使いとして、また一皮むけたかと思います」

 その表現で、俺はつい、とある箇所に視線がいってしまった……。


「あっ、そういう意味じゃないですよ、フランツさん!?」

「わかってます! 本当にわかってますから!」


「これが、私なりの恩返しだと思ってください」

 最後に社長にぎゅっと抱きしめられた。

 社長のあたたかさを全身に感じた。


「こんなかわいい社長に大切にされるなら、いくらでも頑張っちゃいますけどね」

 これはお世辞とかじゃなくて、男としての率直な感想だ。


「ふふ、年甲斐もなく照れちゃいますね」

 社長の声はどこか上ずっていた。

「実を言うと、男の方にこんなふうに心配されたのって、ものすごく久しぶりでうれしかったりもしたんですよね。最近、ヴァニタザール……ヴァニーとよろしくやっているようですし……」

 え、これって、妬かれてる……?

 いや、考えすぎだよな、いくらなんでも……。自意識過剰ってやつだ。気をつけろ、気をつけろ……。


 社長の看病はそうやって幕を閉じた。



 ちなみに、それから先、社長に使った高度な白魔法は、空き時間に何度か挑戦してみたりはしたけど、全然成功しなかった。


 あの時、社長にしたような流れるような魔法陣のダンスができないのだ。どこか、ぎこちなくなるというか……。今の俺の力はあくまでも、白魔法を勉強した学生といった程度のものだ。


 学生としてはこの次元で問題ないだろうけど、プロの白魔法の魔法使いとしては失格と言われてもしょうがないだろう。


 家の裏でぎくしゃくした魔法陣を作っている様子を見ていたセルリアに笑われた。といっても、あくまでもやさしい笑いであって、嘲弄されたわけじゃない。当たり前だけど。


「ご主人様は、きっと社長のために必死になっていたんでしょうね。だから、その時は魔法と一体化できたんですわ。そういう奇跡が起きることがたまにあると言いますわ」

「そうかもな。まあ、奇跡でもなんでも成功してよかったよ」


 俺は自分の手のひらを見つめた。

 最低でも、あれ以来、黒魔法を使う時、しっくり来ている気がするのだ。

 おそらく、黒魔法継承式のせいだろう。


 今までは魔法という赤の他人をその都度、使役している感じだったけど、今は魔法が常に身近にあるように感じる。

 まだ社員一年目だけど、新人から中堅になったような、そんな気持ちだ。


「きっと神様が見ていてくれたんですわ」

「白魔法的にはしっくりくる表現だけど、魔族のセルリアは神様とか信仰してるのか?」「神様が素晴らしいのなら、わたくしたち魔族にも手を差し伸べてくれるんじゃありません? 白魔法が使えるフランツさんならなおのことですわ」

 もう、セルリアはサキュバスじゃなくて天使ってことでいいんじゃないだろうか。


「セルリア、もうちょっとだけ練習してから朝ごはんにするよ」

「わかりましたわ。ファイトですわよ!」


 セルリアが戻っていった家の裏で、俺はもう一度白魔法の魔法陣を描く。

 いつか、黒魔法も白魔法も自在に使える魔法使いになれたらいいな。

社長の風邪編はこれにておしまいです。次回から新展開です! 9月21日にダッシュエックス文庫2巻が出ます! よろしくお願いします!

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