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若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!  作者: 森田季節
黒魔法運動会編

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112 体育の秋!

今回から新展開です!

「あ~、体がダルいな……」

 朝起きると、俺は腕をぐるぐるまわしながら、ダイニングにやってきた。


「やっぱり出張帰りって疲労が蓄積するんだよな……。人間って移動するだけでくたびれるっていうか……」

「あらあら、ヴァニタザールさんのところへ行くたびに消耗されてらっしゃいますわね」

 キッチンにいたセルリアがやってきて、俺の肩をマッサージしてくれる。セルリアの白く細い指からは想像できないぐらい、しっかり力が入って、気持ちいい。有力な魔族のパワーはかなり大きい。


「昨日も帰宅するなり、すぐに眠ってしまいましたものね。そんなに視察って激務ですの?」

「ええと……激務かどうかと言われると、視察はものすごく楽なんだけど……」

 あのヴァニタザールも社員のアンデッドにまともな給料と休暇を提供するようになって、会社もまた軌道に乗り出している。同じ郡の人間も雇いはじめて、地域の雇用を増やすことにも一役買っている。


「ただ、社長との……コミュニケーションが疲れるんだよね……」

 つまり、サキュバス的なことをたくさんしているのだ。

 おそらくヴァニタザールの体で俺が触っていないところはどこもないと思う。

 根が真面目そうな人ほど、性的な部分がマニアックだっていう話を聞いたことがあるけど、あながち間違いじゃない。


「なるほど、なるほど。もしかすると、わたくしも責任の一端があるかもしれませんわね」

 今度は背中を指圧しながら、セルリアが言う。


「えっ? セルリアのせいである部分なんてどこにもないだろ?」

「ほら、ご主人様、使い魔のわたくしといろいろなさっているでしょう?」

「……うん、いろいろとな」

 セルリアはサキュバスなので、当然夜はサキュバスの仕事をしてもらっている。それを徹底して拒むのは侮辱に当たるので、俺も疲れすぎて無理という日以外は受け入れている。


「自慢ではありませんが、サキュバスというのは、夜の遊戯のスペシャリストですわ。ですから、そのサキュバスと経験を積んでいるご主人様は、おそらく知らず知らずにほかの女性にもその技術を行使しているのですわ」

「修行を続けた成果みたいなことになってたのか!?」


 とんでもない話で唖然としかかったけど、よくよく考えると、ありえないことではない。体を動かすからある意味、スポーツとも言える。


「だとしても、俺の疲れが残るのはきついし、少しずつ減らしてもらうことにする……」

 実は幹部候補生の社員に向けたような話もヴァニタザールはしてくれるので悪い面だけじゃない。他社とはいえ、社長の言葉にはそれなりの価値がある。が、疲労という問題はやはり大きい。


 そこにメアリが起きてきた。

 それから、俺の顔を見て、「また出張で疲れた顔してる」と白い目を向けてきた。

 メアリとしては明確に文句を言ったりはしないけど、内心でこころよく思ってないことは確実だ。どんなことをしてるかバレてるだろうし、それもしょうがない。絶対に不潔なことだろうし。


「ごめん、メアリ」

「わらわは何も言ってないけど、なんで謝ってるの?」


 あっ、その反応が来たか。


 セルリアが俺にぼそぼそと耳打ちする。

「メアリさんはやきもちを焼いてらっしゃいますわね。ほんとはもっとご主人様にいちゃいちゃしたいのに、そういうきっかけがなくて、その間にいちゃつく相手が増えて寂しく思ってるんですわ」

「俺が認めづらい話題だけど、そうなんだろうな」


 メアリの好意は俺も気づいている。でも、メアリって、どことなく猫っぽいというか、気まぐれなところやプライドが高いところがあって、自分のほうから積極的に距離を詰めるようなことはしてこない。


 結果として、ここしばらく十分にメアリを構えてやれてなかった部分はある。アリエノールの時もそうだったけど、もっと危急の案件がいくつもあったせいだ。


「よし、できるだけメアリとスキンシップがとれるように意識してみるよ」

「それでこそご主人様ですわ」

 ぎゅっとセルリアが俺の胸の前に腕を伸ばす。

「心根がやさしい人でないと、使い魔も仕えるのは大変ですから。セルリアはご主人様に出会えて、本当にうれしいですわ!」

 セルリアみたいな子にこんなこと言われるのは、男冥利に尽きるな。



 出勤する途中、俺は次の休日にアウトドアなことをしようと考えていた。

 それでメアリを軽く接待するぐらいの感じで楽しませるのだ。そしたらメアリの機嫌も直るかもしれないし、夏が終わって秋もだんだん深まってきたし、体を動かすのに悪い時期じゃないのだ。


 そんなことを考えて出社したら、社長室に呼び出された。

「今度の金曜日、こういうイベントがありますので、覚えておいてくださいね」

 ケルケル社長が渡してきた紙にはこんなことが書いてあった。


===

黒魔法企業合同大運動会!

11月13日はちょうど金曜日、13日の金曜日です。体育の秋ともかぶって、黒魔法業界が運動会をするには最高の日です。今時のことですからデスクワークが多い黒魔法使いもいらっしゃるかと思いますが、この日はローブをかいた汗でしぼれるぐらい汗を流しましょう!

もちろん、運動が苦手な人でも楽しめるような内容になっています。ぜひ、ご参加ください!

===


「ピンポイントで体を動かすイベントが来たっ!」

 ついついツッコミを入れてしまった。

 たしかに体育の秋とは言うけど、運動会と黒魔法って絶望的なぐらい食い合わせ悪くないか?


「わたくしもこういうのはあまり耳にしたことがございませんわ。運動会というのが学校ぐらいでしかないものだと思っていました……」

「わらわは学校のもサボってた。だって、ダルいし」

 セルリアも意外な顔をしていた。メアリは論外。いや、メアリが運動を嫌いだったら俺の作戦自体が崩壊するんで、大問題なんだけど。


「不思議に思うのもしょうがないかもしれませんねえ。ほら、近頃メタボ腹の黒魔法使いも増えてきたじゃないですか。社員の健康意識を高めるためにも、運動会を開催するようになったんです」


 たしかにおなかぶよぶよの黒魔法使いっていまいちそぐわないよな。むしろ、ガリガリのほうがマシには思える。

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